りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治独演会 板橋区立文化会館

7/29(月)、板橋区立文化会館で行われた「柳家小三治独演会」に行ってきた。

・三之助「のめる」
小三治厩火事
~仲入り~
小三治ちはやふる

小三治師匠「厩火事
「昔は何かというとご縁と言われました。今も言うんですかね?」と小三治師匠。
若いころはそう言われると「そんなんじゃねぇや!」と反発を覚えました。俺たちのはご縁なんてもんじゃねぇんだ。縁じゃなくてなんだと言いたかったんでしょう?運命?はっ。
でも実際のところは、「おい、一緒になるか」「あいよ」
この程度のもんですよ。でもそれだって1年…2年、3年もするとなんでもなくなっちゃう。
結局のところは…「縁」ってことになるんでしょうかね。

おお?世間話なしのまくら。今日はこの噺をしようという強い意志を感じる…。
そんなまくらから「厩火事」。

お埼さんが相談すると旦那は最初から「ああ、別れちまいな」。
だから最初から言ってただろ、それをお前がはっつぁんと一緒になりたい!絶対一緒になる!って聞かないからこういうことになるんだ。
お前は一流の髪結で、ほんとだったら若いもんを何人も従えていたっておかしくないのに、うだつが上がらないのはあんなやつと一緒にいるからだ。
もともとお前のことは小さい時分から知ってるけど、あいつはそうじゃない。いったいどういうやつなのかよくわからない。何を考えてるかわからない。

この間だって、家を訪ねた時に昼間から刺身をとって酒を飲んでいた、と。
そう言われたお埼さんがだんだんむくれてきて「だけどねぇ。お酒って言ったって何本も飲んでへべれけになってたわけじゃなし。お刺身だって50人前も取ってご近所に配って歩いたわけじゃし。昼間暇なんですよ!なにもそこまで悪く言わなくたって」と言う、かわいらしさ。
手をもじもじさせてほんとに女らしい。
「どうすりゃいいんだ」と言う旦那に「もう旦那ったら…じれったい」も絶妙で笑ってしまう。

それから旦那が聞かせてくれる話をいちいちまぜっかえすお埼さん。亭主に何か言われても全くこたえずに言い返しているんだろうな、というのが伺えて楽しい。
「あらやだ!猿が旦那だとやっぱりお客はチンですか」。
絶妙の間だからわかっていても全部笑ってしまう。

「それじゃやってみます」と家に帰ってからは、亭主がなんともいえずかっこいい。
やっぱりこの噺って亭主がかっこよくないとだめなんだな。だからお埼さんはどうしようもなく亭主に惚れてるんだ。
「お前と飯が食いてぇや」と言われて「まぁ嬉しいじゃないか。お前さん、もろこしだね」と喜んだお埼さんが「それじゃ瀬戸物にとりかかるか」とつぶやきながら立ち上がるおかしさ。
そのあと亭主がヤイヤイ言うと「だからいやになっちゃうんだよ。さっきまでもろこしだと思ったら麹町の猿になっちゃうんだから」とお埼さん。
「お前なに瀬戸物持って踊りをおどってるんだ。その踊りをやめろ!」にも大笑い。
転んで壊してから、亭主は「あーーこなごなにしちまいやがった!」と結構きつい調子で言ってるんだけど、それからしばらく沈黙があって…「大丈夫か?指でも怪我してねぇか?」。
その言葉の優しさに聞いていて涙がこぼれてしまった…。
そしてそこからのサゲの言葉。

くーーーー。か、かっこいいーー。
結局この亭主の了見はわからないのだ。旦那の言ったように試しても。
最後のセリフが本音なのか照れ隠しなのかわからないところがこの亭主の魅力でもあるのだなぁ。
今まで聞いた「厩火事」の中で一番好きだったかもしれない。鳴りやまない拍手にも鳥肌が。素敵だった~。

小三治師匠「ちはやふる
前から言ってますけど、私はオリンピックには反対です、と小三治師匠。
山田洋次監督が自分が思っていることと同じようなことを発言されていて、少しほっとしました。
こういうことを表立って言う人がいないのかわざと載せねぇようにしてるのか知らない。多分同じように考えてる人はいるんだろうけど、表立って言わねぇで裏で言ってるんでしょう。裏っていうのは…板橋のホールみたいな。
東北の人たちのことを見て見ぬふりをしておいて何がオリンピックだ。
そして終わったあとに何が残るんだ。

…表立って言わないというのは、報道されることがないということなんだと思う。
小三治師匠はネットを信用しないと言っているけど、新聞もテレビも信用できないよー。
山田洋次監督がああいうことを言えるのは、もう老い先短いからいいやと思ってるのかもしれない、私もそうです、と笑っていたけど、ほんとにそういうことをきちんと言ってくれる年上の人がいるということはものすごく心強いこと。
逆にそういう方たちがいなくなったら日本はどうなってしまうんだろうという不安も…。

そこまで話してから「やっぱりやった方がいい?」に大笑い。
大きな拍手に苦笑いして、夕べのラグビー観た?あれはすごかった。とひとしきり話をしてから「知ったかぶり」のまくら。そして「ちはやふる」。

小三治師匠の「ちはやふる」は何度も聞いているけど、昨日の「ちはやふる」はほんとにひっくり返るくらい面白かった。
「先生」の知ったかぶりがもうほんとに自然で、「え?百人一首にいい男?あー、いるね」「え?その人の作った歌?…知ってるよ」「ええと…なんとかって言ったな」「お茶でも飲むかい?」
全然声を張らずふわっとしているんだけど、知らないんだろうなぁというのが見えて、たまらなくおかしい。

それが「物語」を語りだしてからはのりにのってくる面白さ。
また金さんが真面目に聞いて反応してるのがおかしくておかしくて。
最高に面白かった。
小三治師匠も会心の出来だったのでは?なんて思ってしまった。よかったー!