りつこの読書と落語メモ

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海の乙女の惜しみなさ (エクス・リブリス)

 

海の乙女の惜しみなさ (エクス・リブリス)

海の乙女の惜しみなさ (エクス・リブリス)

 

 ★★★★★

広告代理店に長年勤務した初老の男ビル・ウィットマン。彼の人生の瞬間の数々を自虐的ユーモアを交えて語る断章形式の物語。(「海の乙女の惜しみなさ」)。もとはモーテルだったアルコール依存症治療センター“スターライト”。そこに入所中のマーク・キャサンドラが、ありとあらゆる知り合いに宛てて書いた(または脳内で書いた)一連の手紙という体裁の短篇。(「アイダホのスターライト」)。1967年、ささいな罪で刑務所に収監されることになった語り手。そこで無秩序の寸前で保たれる監房の秩序を目の当たりにし、それぞれの受刑者が語る虚構すれすれの体験談を聞く。(「首絞めボブ」)。かつてテキサス大学で創作を教えていた語り手は、あるとき学生たちを連れて老作家ダーシー・ミラーの牧場を訪ねる。その後、作家仲間から彼の安否を気遣う連絡を受け、ふたたび訪問すると、そこには、すでに死んだはずの兄夫婦と暮らしていると錯覚するミラーの姿があった。(「墓に対する勝利」)。詩人である大学教師ケヴィンが、才能豊かな教え子マークのエルヴィス・プレスリーに対する強迫観念を振り返る。マークは、エルヴィスの生涯に関する陰謀説を証明しようとしていた。(「ドッペルゲンガーポルターガイスト」)。

初めて読んだデニス・ジョンソン

アルコール依存治療センターや刑務所暮らしという特異な状況の中でも、広告代理店を勤めあげたとしても、大学教師だとしても、満たされない気持ちや身の置き場のなさは同じで、そして死は誰にも平等に訪れる。

乾いたユーモアはあるが描かれる死のイメージがあまりにリアルでぞくぞくっとするのだが、それは作者の夭折にも関係しているのではないか。奈落の底を覗き込みすぎたんじゃないか、そんな気がする。