りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

クネレルのサマーキャンプ

 

クネレルのサマーキャンプ

クネレルのサマーキャンプ

 

 ★★★★★

自殺者だけが集まる世界でかつての恋人を探すハイムは、親友アリとヒッチハイカーの美女リヒとともに旅に出る。やがて行き着いたのは「意味のない奇跡」に満ちたサマーキャンプだった…。中篇代表作のほか、かつて月に住んでいた人々、作家の才能を奪いにくる悪霊、付き合った女性たちの写真をある家で発見する男、きらきら光るものが好きな女の子、バスに乗り遅れた客にドアを開けない運転手、美術館に飾られた美しい子宮、地獄から湧きでる人々など、意表をつく設定で人間の本質をとらえた数多の物語を紡ぎだすイスラエル人作家の日本語版オリジナル作品集。人気作家の31の中短篇。

表題作が中篇で、それ以外はかなり短めの短編が収められている。

「クネレルのサマーキャンプ」
自殺した者だけが行き着く世界で元カノを探す男。この世界で家族で暮らしてる男(つまり家族全員自殺している)。そして何かの手違いで来てしまった美女。旅に出た三人がたどり着いたのは意味のない奇跡に溢れたサマーキャンプ。

自殺したあともこんな「ふつう」の世界に行くのなら、生きていても変わりがない?なんて思ってしまうけど、それだけ現世が生き難いということなのか。「兵役」までは「(自殺しないで)もった」というような記述もあって、そうか…戦争だ…とはっとする。
ぶっ飛んでいるけど不思議な優しさに満ちている。でも油断してると奈落に落とされるような危うさもある。

前作よりもバラエティーに富んでる作品群。

表題作の他は「君の男」「でぶっちょ」「地獄の滴り」が好き。一瞬で世界が逆転する面白さが独特。