りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

楽屋半帖

5/13(月)、駒込落語会で行われた「楽屋半帖」に行ってきた。

・さん助「のめる」
・さん助「転宅」
~仲入り~
・さん助「熊の皮」~三題噺(「うさぎのピー輔」「手ぬぐい」「餃子」)

さん助師匠「のめる」
まくらなしでいきなり噺に。なんとなく表情が硬いけど大丈夫?(表情が硬い理由は二席目のまくらでわかる)。

「のめる」。なんとなくこういう「間違える」噺って、さん助師匠自身が間違えそうでドキドキしちゃう。
でも大丈夫だった(ほっ…)。そして前に聞いた時より面白くなってる。
この噺って案外難しいんだなと感じることがあって、それは時々面白くない「のめる」に当たることがあるからなんだけど、さん助師匠の「のめる」はだれるところがなくてちゃんと面白かった。
そしてこの噺を聞くたびに思う。私も常に飲めるかどうかを探ってるから、伊勢屋の婚礼に呼ばれてるって言われたら絶対「じゃのめるな」って言ってしまいそうだな。


さん助師匠「転宅」
今日のこちらの会ですが、主催者の方といろいろ話しあって、三題噺をやることにしました、とさん助師匠。
その言葉に「ひぃーー」っと息を飲むさん助ファン。
ええええ?三題噺ってことは新作を作るってこと?できるの?無理でしょ。いいのよいいのよそんな無茶しなくても。
しかも仲入りの前にお客さんから「題」を書いてもらって、それを3つ取り出して、仲入りの間に作るって…。ハードル上げすぎでしょう。ムリムリムリ。
「な、なんかお客様が…すごく心配そうなんですが」。
心配だよー。きゃー。

そんなドキドキの発表から、どろぼうのまくら。
「だくだく」か「もぐら泥」かと思っていたら、なんと「転宅」。
さん助師匠の「転宅」初めて。うれしい~。

旦那を送り出すお菊さん。
「これはいつものとは別の金だから。いつもの分はまた後日」って旦那が言うってことは、別れ話がそもそも嘘だというのが最初にわかるってことなのか?
そのすきに家に入り込んだ泥棒、「あんなじじいがこんないい家にあんないい女を囲って!」とプンスカしてるのがおかしい。
うまそうにお酒を飲んだ後に、なんだかわからないものをずずっと食べて、「うまい!」。それからそこらへんにある小鉢を次々手に取ってずずっと食べる。全部同じ形状の食べ物ばかりが並んでる?刺身はないのか?焼き物は?(笑)
お菊さんがあがってきて、「なんだ、お前さんは」と言われると、はっとするけどまた手に取ってずずっ、に笑う。

すごく大きな声で「泥棒だ!」と脅した後、お菊さんに「ばかだね、野中の一軒家じゃないんだよ」と言われると、すごく小さな声で「どろぼうだ…」。
「ぬっと人の家に入ってそこらにあるものを飲み食いして見つかると”静かにしろ!”と脅すような男がいい」とお菊さんに言われるとすぐに「え?それ…おれ!おれだよ!」と嬉しそうなのもおかしい。
「こっんないい女をかみさんにできるなんて」「あんたみたいないい女」と何度も何度も「いい女」と力説するのも、でれでれと鼻の下の伸ばしようが激しいのも、ばかばかしくておかしい。
翌日訪ねてきた時も「あんないい女がかみさんになるなんて」「まじめにやってきてよかった」としみじみうれしそうなのがおかしい。
タバコ屋さんが「夕べの一件」を知らないと聞いて、目がきらっとなるのもおかしい。
そして「この話をするたびに、泥棒が気の毒になる」というタバコ屋の主人…やさしいな。
とっても楽しい「転宅」だった。

三題噺のお題取りでは「みなさんがハッピーになることや物を書いてください」と。
時々こういうお題に陰惨なことや政治的なことを書かれることがあってそうすると変な感じになってしまいますので、と。
私も新作の会で三題噺とか聞いてるけど、例えばわさびさんはお客さんに書いてもらった中から5つ取り出してそれを書き出して拍手の数でお題を決めて、次回作って発表するスタイル。
その方がいいんじゃないかなぁ…と思いつつ、でも次回までとかいうと時間が長い分ずっとそのことに囚われてしんどいのかなぁと思ったり。うーん…。

さん助師匠「熊の皮」~三題噺(「うさぎのピー輔」「手ぬぐい」「餃子」)
ちょっと長めの仲入りの後、座布団に座るなり「ただいま。おっかー。おっかー」。
え?「熊の皮」?
ってことはあれか、「熊の皮」の中に題を入れ込んで改作にするってことか?
そう思って聞いていると、結構スピーディだけどいつも通りの「熊の皮」。
およよ?どうするの?なになに?

すると、サゲを言って頭を下げたあと、「おつかれさまでした」。
なんとさん助師匠が落語をやって楽屋に下がって行ったところから。
「ところで燕弥くん、もう手ぬぐいとお年玉は用意した?」
お、おおっ手拭い!!
「ほんとに参るよなぁ。前座さんとお囃子さんそれぞれに一万円ずつ」。
ぶわはははは!笑いが起きると「なんでそこで見栄を張ったの?」。
「でもわずかなお金でも大勢だとバカにならないし手ぬぐいも大変なんだよなぁ」というような話をしてると、さん助師匠が「でも俺はあれよ。副業があるから」「え?副業?」。
その副業ってなに?と問われると「昔、江戸には野良犬が多くてそれが狂犬病になったり菌をまき散らすっていうんで、犬殺しっていうのがいただろ。今、みんなは知らないだろうけど、野ウサギが増えてこれが深刻な状況なのよ」。
「え?そんな話聞いたことないよ?」
「政府が必死に隠してるからね。で、そのウサギを殺すバイトをやってるんだ」。

ひぃーー。ウサギのピー輔ちゃん殺されちゃうの?そして私もウサギ飼ってるんですけど!やめてー(心の叫び)。
仕事帰りのさん助師匠がこの駒込のあたりを歩いていて「え?こんなところで落語やってる?普通の家で?怪しいな。秘密結社かよ。」という毒吐きに大笑い。
そしてこの近所にある中里公園…そこでさん助師匠がウサギを探すと…いたのだ、ウサギが。
手拭いを使って一気に仕留めようとするさん助師匠に、追い詰められたウサギが「くぅんくぅん」と殺さないでのお願い!これが耳を立てて上目遣いでめちゃくちゃかわいい!なんじゃこりゃ!(ウサギはくぅんくぅんと鳴かないけどそんなことはもはやどうでもいい)
ウサギのあまりのかわいらしさに、さん助師匠も殺すことができず、懐に入れて家へ…。そしてウサギはピー輔と名付けられる。

それからバイト先の中華屋に行ったので、おおっここで餃子が出るのね!と思っていると、なぜか餃子は出てこずに廃棄処分になるはずの白菜とニンジンをもらって家へ帰り、ウサギにやる。(え?中華屋を出した意味は?)
そうしていると電話が来て(とぅるるるるーっていつの時代の電話だ?)出ると「手ぬぐいの代金を払ってほしい」。その代金が16万円。…16万円ってなんかリアル~。
必ず払うけど今はちょっと待ってくれ、とさん助師匠。
電話を切って、やっぱりピー輔を殺すしかないかと思っているとまた電話。
出ると今度は仕事の依頼。喬之助師匠が病気で出られなくなって代演をさん助に…と言われました、と。ギャラは些少で…16万円です。
「16万!!」大喜びのさん助師匠。引き受けて電話を切ってピー輔に「これでお前を殺さないで済む」と話しかけていると、また電話がかかってくる。
ああ、やっぱり別の噺家に頼むことになりました、っていうんだ。絶対そうなんだ…。そう言いながら電話に出ると「具体的な内容を言うのを忘れてました。まんじゅうの噺をお願いします」。
ああ、よかった…それならできる、とさん助師匠。
まんじゅうも餃子もアンが大事です、でサゲ。

うおおお。私もよく覚えてたな。普段全然記憶ないのに(飲んでなくても)。
なんかきっともう二度とやられることはないような気がするのでサゲまで全部書いてみた。(記憶違いもあるかも)

なんかちゃんと面白いし、そんなに無理やりでもないし(後半はぐだぐだしたけど)、すごい!びっくりよ。やればできるじゃん!えらいぞうー!
って褒めても失礼な感じになってしまうのはなぜなのかしら…。
でも面白かった。すごいと思った。たったの15分足らずでこのクオリティ。
不安しかなかったさん助師匠の三題噺、次回も楽しみ(心配だけど)。

この会、毎月月曜日に開催ということで、次回は下記の通り。
6/10(月)、7月8日(月)、8月26日(月)。19時開演。