りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

露の新治落語会

5/10(金)、深川江戸資料館で行われた「露の新治落語会」に行った来た。


・新治「兵庫船」
・新幸「時うどん」
・新治「ちりとてちん
・さん喬「笠碁」
~仲入り~
トーク(さん喬&新治)
・新治「大丸屋騒動」


・新治師匠「兵庫船」
前にも新治師匠で聞いたことがある「兵庫船」。
広島の内陸部ではサメ(ふか)が唯一食べられる魚でお祭りの時に食べるごちそうだったことや、海のある方ではいくらでもおいしい魚が食べられるためサメはかまぼこにしていた、というまくらを振って「兵庫船」。
船が出るタイミングで三味線と太鼓がぴたっと入るのがかっこいい。いいなぁ。
同じ船に乗り込んだ者同士、出身を言い合ってそれを褒める、というのも楽しいし、なぞかけのくだりもとても楽しい。
サメが出てきて母娘の二人のうち娘の方が流した品物だけが沈んでいき、母親が「お前を海に沈めることなどできない。私が代わりに…」などと言い合っていると、それまで寝ていた男がはたと目覚め、サメなら俺に任せておけ!と。

にぎやかでふわっと楽しい「兵庫船」だった。


新治師匠「ちりとてちん
「知ったかぶりのあいつに食わせてやろう」とお世辞のうまい男を前に旦那が腐った豆腐に醤油をまぜていると、世辞のうまい男が「唐辛子も入れたらどうでしょ?」「どうせなら全部入れよう」「消毒にもなる」。
それに紙を被せてそれらしい名前を書き入れようと「ちりとてちん」と書くと「斜めに”元祖”と入れたらどうでしょ?」。
知ったかぶりの男が皿に盛られた「ちりとてちん」を前に何度も「ああ、懐かしい。ちりとてちん(おかしな発音で)」と言ってうんちくを言いながら口の近くに持っていっては「うえっ」となって皿を外し、また気を取り直して「ああ、懐かしい。ちりとてちん」…この繰り返しがリズミカルで陽気でめちゃくちゃおかしい。

いやこれがもうほんとに捧腹絶倒の「ちりとてちん」で、今まで見た「ちりとてちん」の中で一番面白かった!
新治師匠の落語ってきれいだなぁ…といつも思っていたけど、こんな一面もあったとは。笑った笑った。


さん喬師匠「笠碁」
碁を打つ二人がまだ少し若さがあるイメージ。喧嘩になる前の会話からとても親しい…気を使わない間柄なのが伝わってくる。
お互いに退屈して店の前を通ってみようと歩くところ、首の振り方がきびきびしていてすごくおかしい。
店にいる方も「こっちを向け」と首でくいっとやるのもおかしくて、微笑ましい。
碁盤を前にしてしんみりと語るのもすごくよくて、じーんときた。


新治師匠「大丸屋騒動」
名刀と悪刀のまくらから「大丸屋騒動」。
伏見の老舗「大丸屋」には先代が嫁入り道具で持ってきた村正の刀があった。それを次男の宗三郎がいたく気に入り欲しがる。最初は固辞されたのだが「だったら預からせてくれ」と言うのでそれならば…と宗三郎が持つことに。
その宗三郎、祇園の舞妓おときに入れ込み親戚から苦情が寄せられるが、兄の宗兵衛はおときの素性を調べると氏素性もはっきりしているし仲間内の評判もいいというので、二人に所帯を持たせることにする。
とはいえまずはほとぼりが冷めるまで…3か月だけ二人は会わずに別々に暮らせ、そうしたら店の暖簾も分けてやるし祝言をあげさせてやる、兄に言われ宗三郎も快諾する。
宗三郎は番頭をおともにつけてもらい木屋町三条で一人暮らし。2か月は何事もなく過ぎたのだが3か月目に入ったある日、番頭が御手水に行った隙に一目だけおときに会おうと思い立ち、村正の刀を懐に入れおときの住む富永町を訪れる。
宗三郎が訪ねてきたと聞いたおときは女中に「いないと言って追い返してくれ」と言うのだがうまくいかず仕方なく顔を見せる。
「3か月の約束を反故にしたら一緒になれなくなるから帰ってくれ」と言うおときに、酒を一杯飲ませてくれ…それが無理ならお茶を…それも無理なら水だけでも…と言う宗三郎。自分の顔を見ておときが喜ぶだろうと思っていたのに迷惑そうにされて面白くなく、脅かすつもりで村正を取り出して鞘がついたまま肩を斬りつける真似をしたのだが、鞘は勝手に外れて本当におときを斬ってしまう。
悲鳴を聞いて駆け付けた女中も斬り、心配して迎えに来た番頭も斬り…焦点の合わない目をしたままふらっと家を出ると出会うものを次々斬っていく…。
虫の知らせか宗三郎の屋敷を訪ねた宗兵衛が駆けつけると、宗三郎を役人が取り囲んでいる。
兄の私に捕まえさせてくれと頼んだ宗兵衛は宗三郎の後ろに回り込むと…。

…村正を手にしたことでいっきに悲劇へと転げ落ちていく物語。焦点の定まらぬ目で次々人を斬りつけていく宗三郎が恐ろしいのだが、最後の最後で驚きのサゲ…。ええええ?こんな噺にそんな落ちーー?
これも落語らしいといえば落語らしいのか。驚いたけど、最初から最後まで目が離せなくて面白かった。