りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治独演会

4/24(水)、赤坂区民センターで行われた「柳家小三治独演会」に行ってきた。

・小はぜ「狸鯉」
小三治「お化け長屋」
~仲入り~
小三治 質問コーナー

小はぜさん「狸鯉」
わーい、小はぜさん。
「狸鯉」は小はぜさんがニツ目になりたての頃、よくやっていた噺。
狸がかわいいし、男はざっかけなくて気がいいし、とても楽しい。
別れのシーンが好き。前はもう少し男がけろっとしていたけど、申し訳なさと悲しさが出てきていてよかった。

小三治師匠「お化け長屋」
この季節は花粉症でいやになっちゃう、と小三治師匠。
自分はそういうのにはならないんだと思っていたのにある時からなっちゃって一度なったら毎年なってほんとに勘弁してほしい、と。
客席を見渡して、「今日もマスクしてる方もおられますけど…ご愁傷様です」。
それから自分の前に出た小はぜさんについて。
あの者にね、聞いたんですよ、すれ違ったときに。どうだった?って。そうしたら「は、はぁ…」。
どうだった?うまくやれたか?って聞いたらまた「はぁ…」。
お客さんはどうだった?にも「はぁ…」。
はぁってねぇ?

…ぶわははは。そりゃ小三治師匠に「どうだったか」と聞かれたら「は、はぁ」としか答えようがないよなぁ。
「うまくいきました!」なんて言えっこないしかといって「だめでした」とも言いづらいし。
無理ないよーと思いつつ笑ってしまった。

それから自分は落語家ではなく噺家と呼ばれたいという話。これは何度か聞いているけど…入門して7年目ぐらいからそう名乗っていて、税務署で何度も「噺家?ってどういう意味ですか?落語家のことですか?だったら落語家のほうがわかりやすい」と言われ、何度も説明したというのも面白い。

落語にはいろんな種類の話があってというまくらから「お化け長屋」。
最初に訪ねてきた男の話への入り込み方と怖がり方と二番目に訪ねてきた男の動じなさ。
怖がられるほど調子づいて怪談に迫力が増してくる杢兵衛さん。
それが二番目の男が思わぬところに反応したりつっかかってくるので、たじたじになる杢兵衛さん。
その対比がくっきり。

この日はなにせ席が鬼のようによかったので表情やしぐさのすみずみまで見られたんだけど、いつも小三治師匠が言ってる「落語を記憶しているのではなくやってる」というのがなんとなく体感できた気がした。
師匠の調子はあまりよさそうではなかったけれど、間近で見られてしみじみと幸せを感じた。


小三治師匠 質問コーナー
「みなさんお察しの通り、時間がありません」と小三治師匠。
一席目が長すぎてもうあまり時間が残っていない。落語を二席やるつもりで上がってきたけど、もうやってる時間がない。
というわけで…今日は質問を受けましょう。こんなことはめったにやらないんですが。

…ひぃーー。席も前だからこんなチャンスはないけど私にそんな度胸があるはずもなくー。と思っていると男の人が「談志師匠との思い出は?」。

聞かれた小三治師匠。
「ああ、ここは立川流の企画だからか…」と言った後に「あの方は兄弟弟子なんですよ。私より5年上。1日でも先に入ったら先輩という世界で5年ですから…正直言って私がとやかく言えるような立場じゃないんです。でも…それこそ太鼓のたたき方から教えてもらったわけで…思い出なんかそりゃもうたくさんありますよ。あるにきまってるでしょう。以上!」

…し、師匠…。質問に答えますよと言っておいてその回答は…と思ったら、そう言い切った後に、気を取り直したように、つらつらと話し始めて…。

談志師匠が落語協会を出て何年かたったときにホールのロビーですれ違った時の話。
私は談志師匠のことはよく知らないけれど、その人柄と二人の関係性がじんわりとにじみ出てくるようで、いいエピソードだったなぁ…。
いったんけんもほろろに言ったあとに、そういう話をぽつりとしてくれる。
そういうところが好きなんだよなぁ…と思ったのだった。

もう一つぐらいと師匠が思ったところで舞台袖から「師匠!時間です」とマネージャーさんの声。
「お前ね…おれより声が大きいよ」と言った師匠がおかしかった。