りつこの読書と落語メモ

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松鯉・伸治二人会 第一回

3/7(木)、上野広小路亭で行われた「松鯉・伸治二人会 第一回」に行ってきた。

・松麻呂「井伊直人
・松鯉「屏風の蘇生」
・伸治「らくだ」
仲入り
・伸治「あくび指南」
・松鯉「出世の高松」

松鯉先生「屏風の蘇生」
「屏風の蘇生」は以前末廣亭で聞いたことがあった。

紀伊国屋文左衛門が大勢のおともを連れて吉原へと赴く。
おともには芭蕉の弟子の中でも筆頭に名前が挙がる宝井其角、絵師の多賀朝湖、書家の佐々木文山。
店の主人が誂えた金屏風に文山に一筆書いてほしいので間に入ってお願いしていただきたいと文左衛門を訪ねてくる。
文左衛門が文山に頼むと快く引き受けた文山だったが、今日はすでに酒を飲んでいるので、後日屏風を家まで届けてほしい、と言う。
それを聞いた主人、屏風にはすでに多賀朝湖に絵を描いてもらっており、届けるのは手間だし屏風が傷つく恐れがあるので、この場で書いてほしいと言い張る。
その時に主人が「多賀朝湖ですらここで描いてくださったのですから」と言った、この一言にカチンときた文山。
そこまで言うならこの場で書いてやると言って筆を取ったが怒りに任せて「此所小便無用」と書く。
それを見た主人、家宝にしようと思っていたのに台無しだと泣くと、それを見た其角がこの書に「花の山」と付け加えて、一度は台無しになった屏風を蘇生させた、という話。

松鯉先生の講談は声を張り上げたりしないのに、ものすごい緊張感があって、でも時々ふわっと笑えるユーモアもあって、素敵だ。


伸治師匠「らくだ」
圓歌襲名のパーティに行ってきたという伸治師匠。
帝国ホテルで料理長が挨拶をし、乾杯のワインは1本10万円ぐらいする高級なもの。いったいどれだけお金がかかっているんだ!と思ったが、自分は下戸で酒が全然飲めない。でもめったに飲めるものじゃないんだからとちょびっとだけ舐めてみたけど味はわからない。残りは同じテーブルにいた飲める噺家にあげてしまったのだが、同じテーブルには同じく下戸の遊三師匠。二人で「おれたち人生損してるなぁ」と嘆きあった。

そんなまくらから「らくだ」。
伸治師匠の「らくだ」は何回か見ているけど、今まで見た中で一番笑いの多い「らくだ」だった。
もう師匠が楽しそう!
月番のところに行って大家のところに行ったあと、兄貴分が「この後もう一軒行ってもらいてぇ。大家の所」と言ってしまい「あ、大家の所は今行ったんだ。八百屋だ八百屋」と言ってから「間違えちゃった。こういうところで間違えると後で笑いが起きなくなっちゃう」と言うので、もう大笑い。
戻ってきた屑屋さんが酒を飲んで「いい酒だ。これは10万円の酒だ」と言うのもおかしかった。
こんなに笑える「らくだ」は初めて。楽しかった~。


伸治師匠「あくび指南」
兄貴分に「一緒におけいこに付き合ってくれ」と頼みに来た男。「あくびの稽古」と聞いて驚いた兄貴が「あくびってあれか?口からふわーっと出るやつか?」と聞くと「そうだよ。口から出るやつ。これが尻から出たら屁だ」と答えると、兄貴が「屁の御稽古ならちょっと行ってみたいがな」と言うのがおかしい。
そして四季のあくびに始まって、上級者向けの寄席のあくび、そして師範級の臨終のあくび。
あまりに飲みこみの悪い生徒にあくびの師匠があきれかえると「見捨てないでくださいよー。臨終のあくびまで行きたいんっすから」と言うのもおかしい。

ふわふわ楽しい「あくび指南」。いいなぁ伸治師匠。


松鯉先生「出世の高松」

家康の息子鶴千代が京都にいた時、おしまという女中にお手が付き解任する。
江戸へ戻ることになった鶴千代はおしまから子どもができたことを告げられると、今はまだ公認できないが自分の子であることの証拠の品として、書付と短刀、香木をおしまに渡す。
おしまは実家に戻るが両親とも亡くなってしまい、路頭に迷ったおしまはぼてふりをしている叔父を頼って行く。
そこで男の子を生んだおしまはそのまま死んでしまう。
叔父夫婦は子供を寅松と名付けて大事に育てるが、雨降りで商売に出ることができず食うに食えず困った時に、そういえばおしまが残した風呂敷があったとおろして中を見る。その価値が分からない夫婦だったが、香木の香りに誘われて道具屋の七六という男が家を訪れ、風呂敷の中身を見て「寅松の父親は水戸の中納言様だ」と分かる。
4人は江戸へと赴き、寅松が中納言の子どもであると判明。
跡継ぎはすでに千代松(のちの水戸黄門)に決まっていたが、寅松は藩主になる。

初めて聴く話。
今とは価値観や倫理観も違うけれど、そのギャップも説得力のある語りで埋められて違和感がない。
叔父夫婦がざっかけない人物でユーモラスでそこに救われる。
渋かった~。