りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場3月上席夜の部

3/6(水)、鈴本演芸場3月上席夜の部に行ってきた。

・歌奴「近日息子」
・馬石「鮑熨斗」
~仲入り~
・二楽 紙切り
・菊之丞「愛宕山
翁家社中 太神楽
・雲助「淀五郎」


馬石師匠「鮑熨斗」
お金を借りに行くところと魚屋さんのシーンを省いて甚兵衛さんが買ってきた鮑をおかみさんに見せるところから。
省いた分甚兵衛さんがおかみさんから言われた内容や魚屋さんに鮑を勧められた件を喋るんだけど、それを聞いたおかみさんが「あんた今日はよくしゃべるわね」と言ったのがすごくおかしい。そう言おうと思ったのではなくふわっと出てきたって感じで、いつもの「鮑熨斗」を知ってるだけに大爆笑。
そこから口上の稽古が始まるんだけど、甚兵衛さんが「承りますれば」も「お嫁後様」も言えないとおかみさん「うん、いいや。そこは勢いで。旦那が察してくれるから」。
「で、ここからが肝心だよ」と教わった甚兵衛さんが伊勢屋を訪ねる。
甚兵衛さんにお天気の挨拶をされた旦那が「お。何か改まったことを言おうってんだな」と聞く姿勢になるのも、何言ってるかわからない甚兵衛さんに「待っておくれ。察するから」と言うのも、馬石師匠らしく優しい反応で好き。
旦那が鮑を突き返すところも「縁起が悪いんだよ」と申し訳なさそう。
魚屋さんに口上を教わって甚兵衛さんがやってくると「お。敵討ちに来たな」と楽しそうなのもいいなぁ。
もうとにかく二人のやりとりが楽しくて、最初から最後まで爆笑の渦だった。
すごーーーい。馬石師匠、すてきーーー。大盛り上がりだった。


菊之丞「愛宕山
なんとこの位置で「愛宕山」とは!うれしい!
山登りのシーンは省いてかわらけ投げの場面から。
小判を投げる旦那に一八が「もったいない!」「バカなことを!」と言うのでムッとする旦那。
傘をさしてふわふわ降りようという一八が怖くてなかなか一歩が踏み出せず「そうか、目をつぶればいいんだ」と言ってぎゅっと目をつぶって行こうとするんだけど飛ぶ寸前に「あー、だめだ。目が開いちゃう」。
そのトントントーンというテンポの良さ。
お金を拾うシーンも刈り込んでいるんだけど、一八の金への執着がにじみ出ていて楽しい。
「どうやって上がるー?」と聞かれた一八が着物を裂いて縄をこしらえるしぐさもかっこいい。
この位置でもこれだけ刈り込んでもめちゃくちゃ面白い「愛宕山」。見事だった~。


翁家社中 太神楽
花籠鞠の曲芸や傘の曲芸(「以前は回していたけど今では回さなくなったもの」シリーズ)、皿廻し(包丁!)等、いつものじゃない曲芸。
この二人、いい!!
安定の仙三郎社中に、冒険する翁家社中って感じ。楽しかったー。


雲助師匠「淀五郎」
歌舞伎のシーンがすごくかっこいいので引き込まれて見ていると、團蔵が「うわっひでぇ芝居だな、こりゃ」とつぶやくので、ああ、そうか、これは淀五郎が演じてるシーンなのか、と我に返る。
淀五郎が「私の芝居にまずいところがありますでしょうか」と訪ねに行くところ。淀五郎は若者らしいし、團蔵は威厳がある。厳しい言葉を投げつけるがそれほど皮肉には感じられない。むしろ淀五郎の頭に血が上っているので何を言われても意地悪にしかとれない、という印象。

落ち込んだ淀五郎が訪ねる中村仲蔵。仲蔵について少し説明した後「あさってこの人の噺はやりますから気になる方はいらしてください」と雲助師匠が言うので大笑い。
淀五郎の話を聞いて「皮肉屋と言われてるけど、芝居のことだったら教えてくれると思うんだけどなぁ」と言う仲蔵が、悪いところがあったら直してやるから、と言って淀五郎の芝居を見るところ。
顔をしかめて「こりゃひどい」という表情をするのがちょっとユーモラスで笑いが起きる。
「お前、今回の役がついて嬉しかったかい?」。この言い方のやさしさ。そして「お前を引き上げてくれたのが團蔵で、あいつは相手がどんな芝居をしたってちゃんと演じることはできる。それをあえてやらないのはなぜだと思う?お前に見込みがあるからだよ」という言葉。
心の持ち方から細かなしぐさまで教えてくれる仲蔵にじーん…。そして「これぐらいやればいいと思うんだがな。これでもだめならまた相談においで」という包み込むような優しさが、雲助師匠のやさしさと重なって泣ける…。

かっこよくて優しくて素敵な「淀五郎」だった。満足~。