りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第53回 伝承話芸を聴く会

2/2(土)、東京堂ホールで行われた「第53回 伝承話芸を聴く会」に行ってきた。

・藤兵衛「芋俵」
・琴柳「清水次郎長外伝 小政の生い立ち」
・藤兵衛「弥次郎(通し)」
~仲入り~
・琴柳「万両婿」


藤兵衛師匠「芋俵」
トリをつとめるはずだった小燕枝師匠がインフルエンザでお休み。もうだいぶ具合は良くなったようですのでご安心を、と。
でもほんとは今日は小燕枝師匠がトリで「三軒長屋」を通しでかける予定で、あれは1時間はある長講なので、しめしめ今日は楽ができるぞと思っていたんですが、世の中何があるかわからない。

そんなまくらから「芋俵」。
聞き慣れた噺なのに最初から最後まで隙間なく面白い。
テンポの良さとリズム、それに落ち着いた語りがベースにあって、それにくっきりした人物像。自称しっかり者の兄貴に間抜けな弟分、与太郎、かわいい定吉、お清どん。

お腹すいた、おいもをもらっちゃおうよと言う定吉に、それまでたしなめる役だったお清どんが「え?お芋?お芋と聞くと理性を失うわ」と言うのには笑った。
楽しかった。


琴柳先生「清水次郎長外伝 小政の生い立ち」
次郎長には親分らしいどっしりとした大物感があって、石松はおっちょこちょいな感じ、小政はかわいらしさと暗さの両方がある。
特に後半になって小政が母親のことを語るところにはじーん…。

「小政の生い立ち」は前に喬太郎師匠で聞いたことがあったけど、落語より講談の方が好きかも。


藤兵衛師匠「弥次郎(通し)」
急遽長めの噺をやらなくてはいけなくなって「弥次郎」の通し、というのが面白い。
一度ぐらい聴いたことがあるような気がすると思ってブログ検索したら小せん師匠で聞いていた!

通しといったって、所詮は嘘つきの話でダジャレの連発というのもくだらなくておかしい。

琴柳先生「万両婿」
聞き始めて、おおっ、これは「小間物屋政談」とわかる。
落語ではあんまりな展開にちょっと軽めにお笑いに持って行く部分があるけど講談ではどうなんだろう?

上方版で聴いた時には小四郎がおかみさんのことを溺愛していて自分が留守の間に何か間違いがあったら…と心配して大家さんに相談に行くようなところもあったけど、そういう描写は全くない。
ただ商売のために上方へ行こうという流れ。そこで追いはぎにあった若狭屋の主人を助け、着物と財布と住所氏名を書いて渡したために、悲劇が起きてしまう。

小四郎が死んだという連絡を受けて大家さんと世話人の二人が箱根に行くのだが、顔を改めるのを気持ち悪がってあまり近づこうとしない。
世話人の方が「なんかおかしくねぇか?背丈が小さい」とか「荷物が財布だけというのもおかしい」と怪しむと大家さんが「じゃもっと近くに行ってよく見ておいでよ」。それに対して「いや、いいよ。死んで縮んだんだな。間違いない」。

小四郎が戻ってきてから幽霊と勘違いするところ、また、小四郎と新しい亭主どちらを選ぶと聞かれたおときが「小四郎さんって本当にいい人なんですよ。働き者だし。でも…今の亭主の方が優しくて」、というところにはおかしさがあって、やっぱり落語と同じように、あんまりなところは笑いで軽く持って行くというのは講談も同じだった!

あと奉行所で初めて若狭屋の女房に会されて、それがおときと比べものにならないぐらいのいい女!というところもユーモアたっぷり。
初めて聴いた時はひどい噺や…と思ったけど、これはこれでちゃっかりしていていいかも、と思った。