母の前で
★★★★
老いることで自分の母親は、遠くへと去ってしまう―。最後まで尊厳を保とうとする母親と向き合いながら、その人をその人たらしめているものとは何であるのか、人間の意識の境界を問いつづけた思索の日々を綴る。
老いて自分のこともわからなくなってしまった母を前にして、あの聡明でユーモアに溢れていた母はどこへ行ってしまったのだろう、母を母たらしめていたものはなくなってしまったのか、それはいつから何がきっかけでどういう経緯で…。考えてもどうしようもないことのようにも思えるけれど、パシェは考え続ける。
考えれば考えるほど辛くなるのではないかと思いながら読んでいると、それが決してそうではないということが後半になってわかる。
感情を排した文章で書かれているのに、胸を打たれた。