少年と少女のポルカ
★★★★★
ゲイのトシヒコと、女になりたい同級生のヤマダ、電車に乗れなくなった幼なじみのミカコ。
三人それぞれの葛藤と日常、そして青春を軽妙に瑞々しく綴った表題作と、その後日談二篇。
そして、自分を六十四歳だと思い込むことにした十八歳浪人生ハルコのひと夏の恋を描いた海燕新人文学賞受賞作「午後の時間割」。
芥川賞受賞・藤野千夜、幻のデビュータイトル。
「幻のデビュータイトル」という紹介に惹かれて読んでみたのだが、ビックリするくらい良かったので茫然としている。
「少年と少女のポルカ」はゲイであることを自覚したトシヒコを中心に、女になりたいヤマダ、電車に乗れなくなったミカコの日常を描く。
ヒリヒリ痛い物語なのに独特の乾いたユーモアがあって楽しい。書き下ろしの後日談が二話入っているのも嬉しい。彼らが自分らしく生きることと世間と戦いすぎないこととの間の折り合いをつけてどうにか生き延びていてくれて良かったと思う。
「午後の時間割」は64歳になることに決めた浪人生のひと夏の恋を描いているが、この64歳設定が絶妙に効いていて何度も声をあげて笑った。
作品全体を通して、過酷な目にあっても悠然と受け止めるヤマダのように辛い出来事を笑い飛ばす凄みを感じた。
素晴らしかった。