りつこの読書と落語メモ

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大古今亭まつり 渋好み金原亭の会

1/17(木)、日本橋劇場で行われた「大古今亭まつり 渋好み金原亭の会」に行ってきた。

・ひしもち「寿限無
・馬石「安兵衛狐」
・伯楽「猫の茶碗」
・さん喬「時そば
~仲入り~
・今松「二丁蝋燭」
・雲助「お直し」


ひしもちさん「寿限無
名前を教えてもらってるくまさんの反応がいちいち面白い。
「え?擦り切れちゃってるんですか?」「え?それ名前ですか?」「え?日本人ですよ?」「普通に戻りましたね?」。
書いてもらって読むときに「寿限無寿限無…ここなんで二回になったんですか?あ、調子?」には思わず吹き出しちゃった。


馬石師匠「安兵衛狐」
古今亭まつりということで、古今亭っていうのは志ん生師匠がいてその下に馬生、志ん朝、圓菊といて…馬生一門っていうのは「えー?なんでもいいんだよー。ああ?めんどくせぇなー」という緩い一門、志ん朝師匠のところはしゅっとしていてかっこよくて「そういうのはいけねぇよ!」みたいな一門、圓菊師匠はきゅっと気合が入ってて「やるよ!!」って力が入ってる一門。
私なんかその弟子のまた弟子ですから枝葉のあたり、さっき出たひしもちなんかさらにその弟子ですから、このあたり…と体をひょいっとひねって先の方を指すから大笑い。
噺はおなじみのところだったけど、女の幽霊も狐もかわいい!幽霊が訪ねてきて「こまごましたことをやります」と言うのにも笑ったー。そういえば恩返しに来た狸もそう言ってたなー。


さん喬師匠「時そば
全員古今亭の中に自分だけ柳家で居心地が悪い。たまにそういうことあるんですよ。われわれ全員柳家の中に馬石さんがゲストで来る、なんていうことが。そういうとき、いじめるんですよ、みんなでよってたかってね。だから今日は逆でいやですねー。

なんて言いながら「時そば」。
雰囲気を壊さないように、でも柳家らしく?そして笑いどころもたっぷりと。
うーん。こういうことができないとこういう会のゲストには呼ばれないわけよね。なるほどねー。かっこいいわ、さん喬師匠ってやっぱり。


今松師匠「二丁蝋燭」
うちの一門はみんな名前もバラバラで芸もバラバラ。でもいいでしょう?落語らしくて、と今松師匠。
むかし家今松という名前は師匠から言われた名前で最初は「そんな名前はよしましょうよ」と断ったけど、殊の外師匠がこの名前を推してきたので、これ以上断るとしくじっちゃうと思って受けた。
名前なんてものは他と区別できればなんでもいいんだから、今では慣れちゃった、と。

あんまり一門のことや師匠のことを語ったりしない師匠だから、こういう話を聞けるのは嬉しいなぁ。
みんなバラバラでそこがいいんだって誇らしげにおっしゃっていたも聞いていて嬉しかったな。

「二丁蝋燭」は「味噌蔵」の帰って来てからがないバージョンのような噺。ケチ兵衛さんのケチなだけの噺で救いがないと言えば救いがない。
おかみさんが妊娠してからもおまんまをたくさん食べるようになったと嫌がったり、食い扶持が増えるからおかみさんを里に帰そうとしたり…赤ん坊が生まれたら情が沸いたように演じる噺家さんもいるけど、今松師匠はそういうことはせず、徹頭徹尾ケチのまま。ひどいわっ!と思うけど、落語らしいといえば落語らしくて、笑っちゃう。
お嫁さんの実家で出るごちそうを持って帰ろうと言うケチ兵衛さんが「最近うちの奉公人の顔色が悪くなってきたから」というのには笑ってしまった。


雲助師匠「お直し」
この会が「渋好み」ということに首をかしげる雲助師匠。「金原亭だと渋いになるんですかね?確かによく言われましたよ。金原亭だっていうと、”渋いねぇ~”って。でもうちの師匠の芸は決して渋いっていうのじゃなかったですけどね。どちらかというと、くさい。フェイスランゲージ。うちの師匠の速記があるんですけど、いい男のところに、”かっといい男”って書いてあってね。弟子はわかるんです。これで、師匠のいい男。かっ!!!っていうのがね。でも文字にするとこうなるのかと思って。渋好みっていうことだからそういう噺を」
と言って「お直し」。
きっとこの噺だと思ってた。以前師匠がこの噺は古今亭の噺だから柳家噺家さんに「教えてくれ」と
言われて断ったとおっしゃっていたから。思い入れの強い噺なのだろう。

売れっ子だった花魁が寄る年波でお茶をひくようになって辛い思いをしている時に店の若い衆に優しい声をかけられてそれが本当に嬉しくて慰められて、そのうち二人はいい仲に。
店の主人が気が付いて二人を夫婦にしてくれてそのまま店に置いてくれる。
借金も返して家財道具も揃えられるようになったころ、男の方は遊びや博打に夢中になって仕事をさぼるようになり、二人はクビになってしまう。
借金だらけで仕事も失いどうしようもなくなり、男は女に「ケコロをやってくれ」と泣きつく。
最初は嫌がる女だったが、二人の暮らしを立て直すためと覚悟を決めてやることになる。

畳一畳ぐらいしかないような小屋に男を引き入れて、口八丁手八丁で「お直し」をさせて小銭を巻き上げる。
いざ始めてみると女の方が度胸が据わっていて客の見定めにもぬかりない。
捕まえた客がべろんべろんに酔っ払っているけど気のいい職人で、やたらと女のことを気に入って「女房にする」と言い、女も「うれしい」とおだてるのに嫉妬した亭主が「直してもらいなよ」と言うんだけど、女に夢中になってる客は「おお、そうか」とどんどん金を出す。
亭主の不機嫌な「直してもらいなよ」と、「お、そうか」「なんか直すの早くねぇか?」と言いながらもお金を出す客の対比がちょっと面白い。

客が帰ってから「もうこんなことはやめだやめだ!」と言うと、女が「あたしはやりたくないのにお前がやれと言ったんじゃないか」と言ってから、辛かった時にうどんをとってくれて二人で食べたのがどんなに嬉しかったか、その情があるからいまだにこうやって離れられずにいるのに…と言うところには、思わず涙…。
底辺にいてそこから抜け出せない、離れられない男女の情や哀しさが伝わってきて、なんともいえない気持ちになった。
でも最後ちょっと笑えて、そこがまた落語らしくて好き。

とてもいい会だった。楽しかった。