りつこの読書と落語メモ

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田辺凌鶴独演会「あれも凌鶴、これも凌鶴」(第二回)

1/12(土)、道楽亭で行われた田辺凌鶴独演会「あれも凌鶴、これも凌鶴」(第二回)に行ってきた。
凌鶴先生をもっと見たいと思っているんだけど、定期的にやってる会が日曜日の夜や平日の昼間でなかなか行けない。道楽亭のこの会は前回も行ったけど今回は土曜日の昼間。ありがたい。


・凌鶴「山本琢磨」
・凌天「加藤清正 屏風の使者」
・凌鶴「ハドソン川の奇跡
~仲入り~
・凌天「秋色桜」
・凌鶴「介護民俗学者 六車由実


凌鶴先生「山本琢磨」
1週間ぐらい前から喉のところがぽっこり腫れてきたという凌鶴先生。痛くもなんともないけど気になる。来週健康診断に行くことになっているからそこで見てもらおうと思いつつ、奥さんに「ここってなんだろう?」と聞くと「甲状腺?」。
その言葉を聞いてふと思った。「こうじょう…こうじょう…向上?おおっ。年の初めに甲状腺が目立つってことは、今年は芸が向上するのか!」。
喜んでいると奥さんが「喜ぶのは早いわよ。向上せん…。」

…ぶわはははは。その会話まるごと落語みたいだ。弁護士のような折り目正しい風貌の凌鶴先生が真面目な顔してそんなことを言うからおかしくてたまらない。

それから毎月やられている自分の会のチラシについて。
そうそう!これを見た時思わず「ぶわははは!」と笑ってしまったんだけど、毎月やられている新作ネタおろしの会「新宿 田辺凌鶴の会」のチラシは、右手をぐわっと高くあげたポーズをとる笑顔の凌鶴先生の写真、それをめくると隔月の第一日曜日にやられている新作講談再演の会「田辺凌鶴 新宿新作R」の会のチラシが入れ込まれていて、こちらが同じポーズの凌鶴先生の写真なんだけど真っ白な見事な髭が付いていて、凌鶴先生の師匠一鶴先生にそっくりな写真!

見た時、なんてお茶目!と大笑い。実はこれ合成なんだそう。
ほんとは付け髭をつけて一鶴先生っぽくして撮ってみようという話になっていたんだけど、チラシを作ってくださってる方が試しに一鶴先生の髭の部分を合成してみたら、驚くほどぴったりとはまって、「こ、これは…このままでよいのでは」ということになったとか。

「なんか自分で言うのもなんですけど、ほんとに一鶴にそっくりなんですよね。骨格が似てるんでしょうか。自分でも怖いぐらい…。」
…いやほんとに。どちらかというと真逆のイメージがあるお二方だけど、こうして見るとそっくりっていうのが、ああやっぱり師弟なんだなぁというのを感じさせて深い。

そんなまくらから新作講談「山本琢磨」。
山本琢磨は坂本龍馬の従弟にあたる人なのだが武術に優れ師範代をつとめるほどだったのだが大の酒好きで酒癖が良くない。
ある時酒を飲んだ帰り道に町人の落とした金時計を拾い、それを質屋に売りとばしたことが露見して切腹しなければいけないような事態になる。
龍馬はそんな琢磨にお金を渡して江戸を出る助けをしてくれる。「お前はこんなことで死ぬような男じゃない。一度死んだも同然なんだから自分に合った場所を見つけてやり直せ」と言われた琢磨は新潟へ。そこで前島密に出会い、函館へ行くように勧められる。

函館に行った琢磨は泊まった宿屋が盗賊に襲われた時に持ち前の剣術の腕で盗賊を捕まえ、宿屋の主人にたいそう感謝され、道場を開かせてもらう。
ロシア帝国の領事館からロシア人も道場へやってくるのだが、そのうちの一人にニコライがおり、熱心にメモをとるニコライをロシアの密偵と思いこんだ琢磨は殺害も辞さない覚悟でニコライを訪ねる。
そこでニコライにキリストの教えをわかりやすく説かれた琢磨は今まで触れたのことない思想に感銘を受け、ニコライの元を行くたびも訪れては教理を学び、洗礼を受ける。

その後、何度となく迫害を受けながらもキリスト教の布教につとめた。
東京での布教が重要と考えて建てられたのがお茶の水に今も残るニコライ堂

…面白かった~。
なによりも琢磨という人がとても人間臭くて魅力的に描かれているので、ドキドキしながら、どうなる?どうなる?と聴いた。
なにせ日本の歴史に全く疎いので、ある程度有名な人物でも全然知らなくてほんとに新鮮(笑)。
楽しかった!

凌鶴先生「ハドソン川の奇跡
2009年1月15日に起きたUSエアウェイズ1549便不時着水事故を描いた新作講談。
これがもう最初から最後まで本当に面白くて夢中になって聴いた。
カナダガンの群れに遭遇したSエアウェイズ1549便は、両エンジンが同時に停止してしまうという絶体絶命のピンチ。
この時、機長のサレンバーガーがとても冷静でかつさまざまな事故についての知識や対応方法に精通していたため、ハドソン川へ不時着するのが乗客の命を救う最善の方法であると判断し、適切な対応を行ったため、乗客全員が大けがをすることもなく助かった。

内容自体も非常にドラマチックなのに加えて、サレンバーガー機長の経歴や人柄などもとてもチャーミングで、これは楽しい!
また船が救助に駆けつけるところが講談調で言い募ったり、途中でふわっと力の抜けたギャグが入ったりというメリハリもあって長さを感じさせない。
すごいすごい。講談ってこういうのもありなんだね。忠臣蔵だけじゃないんだね。


凌鶴先生「介護民俗学者 六車由実
介護民俗学者六車由実さんを描いた新作講談。
民俗学と介護が結びつくとは!というのにも驚いたけど、聞き書きをすることで、老人側にも生きがいが生まれ、老人ホームにいる老人同士お互いに興味を持ったり敬意が生まれるというのも、すごいなぁと思った。
この間「エリザベスの友達」を読んだ時にも感じたのだが、私たちは認知症になった老人のことを「もう何もわからない人」と思い込んでしまっているのかもしれない。

講談でこういう話が聞けるというのにも驚いた。

凌鶴先生の講談を三席聴けるという幸せな会。
次回は3/2(土)とのこと。