りつこの読書と落語メモ

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寝ても覚めても

 

 ★★★★

謎の男・麦に出会いたちまち恋に落ちた朝子。だが彼はほどなく姿を消す。三年後、東京に引っ越した朝子は、麦に生き写しの男と出会う…そっくりだから好きになったのか?好きになったから、そっくりに見えるのか?野間文芸新人賞受賞作。森泉岳土のマンガとコラボした魅惑の書き下ろし小説を増補。 

恋愛の空気感を写実的に描くとこんな風になるのかな。写真についての記述があちこちにあるのだが、写真を見た時に感じる微妙な「ずれ」のようなものが、作品全体に漂っていてそれが不思議で面白い。

朝子が麦に初めて会ったとき。長い手足、低い声、そして自分に向けられた笑顔。花火の火花が散ったのは幻想なのか比喩なのか。一方的だけど完璧な「恋」。でも「恋」は終わるのだ、必ず。
自分があるようでないような朝子はもともとそういう人間だったのか麦との恋愛でそうなってしまったのかは不明だが、亮平にとっての朝子は朝子にとっての麦だったのか、あるいはもう少しリアルだったのか。

後ろめたさを感じるくらい麦と亮平が同じ顔に見えていた朝子が、再会した麦の寝顔を見て「違う」と気づく瞬間。なんかわかる気がする。きっと魔法は溶けたのだ。そして魔法が溶けてからが本番なのだ。多分。

面白かった。映画も見てみたいな。