りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

白酒・甚語楼ふたり会

11/30(金)、お江戸日本橋亭で行われた「白酒・甚語楼ふたり会」に行ってきた。

・ひしもち「狸の札」
・白酒「短命」
・甚語楼「夢金」
~仲入り~
・甚語楼「町内の若い衆」
・白酒「二番煎じ」

ひしもちさん「狸の札」
ふつうにやってふつうに面白い。以前感じていた滑舌の悪さも全く感じない。
いいなぁひしもちさん。ニツ目になったらどんな高座を見せてくれるんだろう。楽しみ。

白酒師匠「短命」
もしかして白酒師匠の「短命」を初めて見たかも。
八五郎の察しの悪さとそれに手を焼くご隠居。ご隠居が何度も説明するんだけどそれがほら、わかるだろ?わかるだろ?と、言い方を大きな声にしたりひそひそ声にしたりしながらも言ってる内容はずっと同じっていうのが、なんともいえずおかしい。そのたびに八五郎が「そうヒソヒソ言われてもねぇ。言ってることさっきと一緒だもん!」とむくれるのもおかしくて、大笑い。
「よし、わかった。布団もつけよう!」とご隠居が「おまんま、手と手が触れる、いい女、布団!」。それでもわからないと「もうおまんまもいらない。いい女、布団!」と言うと八が「布団に入っておまんまを食う?」。「だからおまんまは離れろ!」。

悔やみの口上を「あれはごにょごにょ言って悲しい気持ちが伝わればいいんだ」「内容はなんでもいい」と言って「寿限無」を悔やみっぽく言うばかばかしさ。それを聞いた八が「パイポパイポに無理がありますね」って。ぶわははは。

ひっくり返るほど面白い「短命」だった。楽しい!

甚語楼師匠「夢金」
噺家というのは個人事業主なので会のお知らせや営業活動、ギャラの交渉も自分でやらないといけない。
このギャラの交渉というのがいまだに苦手です、と甚語楼師匠。
相手が慣れてる人ならいいんだけど、初めての落語会、相場もなにもわからないという人だった場合に、最初に「だいたいどれぐらいお出しすればよいんでしょう?」と聞かれてそこで「このぐらい」と言うのが難しい。そもそも相手がこちらをどの程度のものと思っているのかがわからないから。こちらが言ったのが上だったらまだいい。下げて行けばいいので。でももっと上を思っていたとすると、なんか悔しい。特にその後別の噺家がそこの会にでてギャラをいくらもらったなんていうことを聞いてそれが自分の倍ぐらいだったりするとすごく悔しい。
でも「だいたいどれぐらい」と言われた時に高い金額を言いづらい。なぜならこちらも「話すだけだもんなぁ」という負い目がありますから。

…ぶわはははは!
話すだけという負い目があるっていうのが最高におかしい。
甚語楼師匠ってこういう自分の会や二人会の時にまくらで結構ぶっちゃけ話をするんだけど、それがめちゃくちゃ面白いんだよなぁ。ざっけかない人柄が伝わってきてほんとに楽しい。

そんなまくらから「夢金」。
とても丁寧なたっぷりの「夢金」。
親方がいかにも船宿の親方らしくしっかりしていて用心深い。
侍は刀傷の描写もあったけれど、いかにも胡散臭い。
熊は寝言がもにゃもにゃしつつも「百両ーーー百両ほしいぞ…」「二百両ーーー二百両ほしいぞ」とはっきり「ほしい」と言っているのがおかしい。強欲だけどカラっとしていて明るくて軽い。

船を漕ぎだしてから「酒手がもらえると思ったら景色も違って見える」と言って雪が降り積もっている景色を言うところ、情景が目に浮かんで「うおお」っとなった。
侍に「銭儲け」と言われてホイホイ乗るんだけど、「女を殺して」と言われると「思ってたのとちがう!」と叫ぶのが漫画っぽくて楽しい。
それでも聞いてしまったからには殺すしかないと言われると「ええ?じゃ殺せば割り前をもらえて、殺さないと殺されちゃうの?…じゃやりますよ」とこれもまたカラッと気持ちを変えるのもおかしい。

中州に侍が降りてからの展開はとてもスピード感があってスカっとする。
楽しかった。


甚語楼師匠「町内の若い衆」
くまのおかみさん(笑)!すごいよ。
家に帰るくまが「それに引き替えうちのかかぁ…。いつでも畳の真ん中であぐらかいて。意味がわかんねぇのがあの鉢巻だよ。一年中してるんだから」と言うのがおかしい。
家に帰ったくまさんが「きったねぇ家だな、ほんとに」と言いながらおかみさんを見て「お前、俺が家を出てから一歩もそこを動いてねぇだろう!」と畳に積もったほこりを見て言い当てるのがおかしい。

お湯へ行こうとした途中で会ったはんちゃんが「家に行ってかみさんにこう聞いてくれよ」と言われると「行きたくないよ!」と嫌がったり、くまの家に向かいながら「いやだなぁ」と心底嫌がってるのもおかしい。

この会はネタ出しされている噺だけじゃなく、軽い噺の方もめちゃくちゃ面白いからすごく得した気分。


白酒師匠「二番煎じ」
白酒師匠の「二番煎じ」は夜回りが二手に分かれない。そして宗助さんは留守番ですぐにぐーーーって寝ちゃう人。河内屋さんという関西人もいるんだけど、白酒師匠、関西弁うまい。きっと耳がいいんだろうなぁ。
先生の謡に無意味に迫力があるばかばかしさ。
あと「いい男」の半ちゃんの彫り物、今では肌がしわしわで伸ばさないとなんて書いてあるから読めないのがおかしい。
あとは、酒を飲んだり食べたりのところが、とにかくおいしそうで。獅子の肉を食べるところではもう何度も唾を飲みこんでしまった。

様子を見に来た侍が威厳があって厳めしいので、酒を飲んで「よい煎じ薬じゃ」と言うと心底ほっとする。
終わった時にはお腹ぺこぺこ。楽しかった。