りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

11/26(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

・さん助 ご挨拶
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十四回「戸田の庵」
~仲入り~
・さん助「白銅の女郎買い」
・さん助「火事息子」

さん助師匠 ご挨拶
私、この間初体験をしました、とさん助師匠。
国立演芸場で行われた弟弟子さん若改め小平太の真打昇進披露口上の司会を仰せつかりました。
最初に協会からの電話でそう言われたとき思わず「え?私でいいんですか?」と言ってしまったんですが。
この話が公になるや、まぁいろんな方に心配していただきまして…「大丈夫なのか」「やれるのか」って…。
お披露目ってこう言ったら言葉が悪いんですけど、だいたい池袋で燃え尽きてしまって国立に来たときには燃え殻になってるっていうことが多々ありまして…。
私、その日は結構早い時間に楽屋入りしたんですが、さん若…小平太もうちの師匠ももうぐったり疲れてるんです。
で、私一人がものすごい緊張していまして。
口上に並ぶのはうちの師匠と兄弟子だけでしたけど、それでも場所が国立ですし、もうこんなに緊張したのは久しぶりっていうぐらいの緊張で。
一番最初に「演芸半ばではありますが」って言うとき、なぜかこの口上の時の「演芸」っていうイントネーションが独特で(高いところから低いところへ言う)…その第一声で声が上ずってすごく高い声になってひっくり返っちゃったんですね。
その後も直そうとするんですけどどうしても高くなってひっくり返ってしまって…それは最後までそうでした。

楽屋に帰ったら…その日は燕弥くんが遊びに来てたんですけど…これが私が口上の司会をやるって聞いて見に来てたんですよ…笑うつもりで来てるんですから…ほんとに悪いヤツなんです。
燕弥くんは一門会の時に結構口上の司会をやるらしくて慣れているんですね。
それで「緊張すると声が裏返るだろ?だから、あの司会をやる時にはコツがあるんだよ。物まねをすればいいんだよ」って言うんです。
「だれの?」って聞いたら「雲助師匠の。それも人情噺をするときの。…演芸半ばではございますが(ひくーい声)」。
そうすると声がひっくり返ることはないって。
…なんでそれをやった後に言うんだよ!!

いやでも私はこの経験をしてから、「黄金の大黒」に出てくる金ちゃんの気持ちがほんとによくわかりました。
あの噺でも金ちゃんが口上をやろうとして「承りますれば」が言えずに「うけうけうけうけ」「うけまたがりますれば」ってやりますけど、あれですよ、私もまさに。
まさにリアル「黄金の大黒」でした。
これから「黄金の大黒」をやるときはリアルさが増すのではないかと思います。

…ぶわはははは!
雲助師匠の真似をしたら口上の司会がうまくいく、って最高だな!いいなーそのアドバイス
笑うために来たっていうけど、わざわざ来てくれるなんて燕弥師匠って優しいなぁ。友情を感じる。
そして金ちゃん!やっぱりさん助師匠は金ちゃんにシンパシーを感じてたんだね!
私は「うけまたがり」のところじゃなくて、金ちゃんが「稽古に稽古を重ねて完ぺきなものにして」と言ったところにさん助師匠の心情を感じたけどね。あーーおかしい。


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十四回「戸田の庵」
前回、戸田の庵に入って尼にごはんをごちそうになった義松とお糸。
尼が二人を見つめて「義松、お糸」と声をかけたところで終わったのだが、この尼の正体は…。
お糸が「おっかさん」と呼び、尼も「お糸…」と。なんとこの尼はお糸の実の母親のおやま。
お糸に向かって「無事でよかった。お前に生きていてほしいと願わない日はなかった」と言うおやまに義松が「おふくろ」と声をかけるとおやまは「どの面を下げてあたしのことをおふくろなんて呼ぶんだ!」。
「お前は育ての親である辰五郎と私を斬り殺し三十両を奪って逃げたんじゃないか」。
それを聞いてお糸が「え?どういうこと?三十両を盗むことは聞いていたけど、おとっつぁんとおっかさんを殺したなんて聞いてない」と驚くと、「そんなことはしてない」とうそぶく義松。
「しらを切るならこれを見るがいい」とおやまが着物をはだけると肩先から胸にかけてものすごい刀傷。
「私と辰五郎は義松に斬られ、辰五郎は死んだが私はどうにか生きながらえ、それからというものこうして仏門に入ってようやくこの庵を持つことができたのだ」。
そう言うおやまに向かって「もとはといえばお前と辰五郎がおれの親を殺したんじゃないか」と言う義松。
何を言っているの?と驚くお糸に向かって「今までお前には言ったことがなかったが」と身の上を話す義松。
おやまもお糸に向かって「私の懺悔を聞いてくれ」と言い、同じ話をするが、自分と辰五郎は山賊をやっていて、通りがかった旅人から金を奪い命を殺めてきた。その中には子供もいた。
親の因果が報いてお前も義松も相当な悪事を働いてきたのだろう。これも因縁だ、と言うおやま。
おやまが義松に向かって「お前のおっかさんは自分の命をなげうってお前を助けたのだ」と言うと義松は「殺されそうになった自分を助けてくれたのが森田屋才兵衛。そこに引き取られて育てられたが自分のことが邪魔になり10歳の時に売られた。売られた先が辰五郎という自分の親を殺したやつらだとは露知らず。
その後も売られたり邪魔にされたりろくな人生じゃない。いっそあの時死んでた方がどんなにましだったかわからない。最初は三十両を奪って逃げるつもりで殺すつもりはなかったが、起きだして声を出すから二人を殺した」と言う。
そして「お上に訴えるなりなんなりしやがれ」と居直るのだが、おやまは「自分のような者がお上に訴えるわけはない。それよりも心を入れ替えてくれ」と言う。
そう言うおやまに向かって持っていた刀で方から胸にかけて斬りつける義松。
「二度も殺されるなんてお前も因果な女だ」と毒づく義松。
お糸は「あたしの目の前でおっかさんを斬るなんて」と言って逃げようとするのだが足腰がたたない。そんなお糸の首を後ろから締めながら「お前とやり直したい。一緒にいてくれ」と甘い言葉をささやく義松だが、お糸はうんとは言わない。
「どうしてもだめなのか」と言うと義松はそのまま首を絞めてお糸を殺し、出立する…。

…ぐわーーーー。おやまだったのか。尼は。
でもおやまも辰五郎も悪かったもんなぁ…。
以前のストーリー
以前のストーリー2


それでもお糸の前で母親を殺し、さらにお糸も殺すとは…。もうどんな殺人マシンだよ、ふんとに。
そして自分は才兵衛にひきとられたが大事にされなかったみたいなことを恨みがましく言うけど、それはお前の性根が腐ってたからだろうが!ムキー。

実はこの首を絞めるシーンはもっと長くて速記によると音曲が入るらしい。
「双蝶々」にも首を絞めるところがあるし、この時代なにか流行ってたんでしょうか…って…知らんがな。
しかし話がようやく発端に戻って来た感がある「西海屋騒動」。いよいよ花五郎と義松で直接対決か?
と思いきや、また次回から義松任侠編が始まるらしい。
義松の任侠ってなんちゃって任侠だよなぁ。全然意味不明なんだよな。
って悪口ばっかりになっちゃった。ひゃー。

さん助師匠「白銅の女郎買い」
「これは今はほとんどやる人がいない噺なんですがそれはこの噺に出てくる風俗が今ではもうわからなくなってしまったから。でも私、好きなんですね、この噺が」。
そんなまくらから「白銅の女郎買い」。

若い連中がわいわい話をしている。その中で「とめちゃんはすごい」という話になる。何がすごいって吉原に通いつめている、と。
言ってるところにとめちゃんが通りかかったので呼び入れて「中に送り込みっぱなしっていうじゃない?」と聞くと「行くも行くも行きっぱなしよ」と誇る。
「どういうわけで?」と聞くと、俺が行かないと女が許してくれないんだと言う。
そんなに惚れられてるのか?と聞くとバカな惚れられようで、行くと約束していたのに行かなかったりすると中で暴れるので店のおばさんからは「約束しておいて来ないのはやめてくれ」と頼まれている、と。
さらにこの間なんか女から「これ電車賃だよ」と帰りに金を持たされた。
それはすごい。中の女といったらこちらから金を取ることしか考えてないのにくれるというのはすごい。しかもあれだろ、電車賃といって白い袋に包んでいるけど、そうは言いながらそれ相応の額が包んであるってやつだ。すごい。いったい幾らだ?
みんなに聞かれてやにさがったとめちゃんの答えを聞いてみんな「そりゃほんとに電車賃だ…」。

次に自慢話をしたのが半ちゃん。
自分は5銭で女郎買いをしたと言う。
5銭でできるわけないという連中に、してなかったらしたなんて言わない。ほんとに5銭で女郎買いをしたからそう言ってるんだと自慢する半ちゃん。
で、その顛末を話すのだが…。

ところどころにさん助師匠が好きそうな言い回し(明治っぽい?)が出てきて大笑い。
5銭5厘しか持ってない半ちゃんがお腹が空いてしょうがなくおでん屋でこんにゃくを食べるところや、店に上がって女に「おまんまを持ってきてくれ」と頼むと「もう遅いしお金もないんだろうから我慢して」と女。
でもどうしてもおまんまを食べないとお腹が空いてどうしようもないというはんちゃんが「おまんま!!」と駄々をこね、それを聞いた若い連中が「いやな女郎買いだな」とつぶやくのがおかしい。
そしてしょうがなく女が隣の部屋からお鉢を持ってやってくる様子の勇ましいのにまた笑う。

「西海屋」とは打って変わってさん助師匠が楽しそうで、見ていてこちらもゲラゲラ笑ってしまう。
それがいきなり終わり、あまりの唐突さに愕然とする客席。
「す、すみません。この後、馬に乗るシーンが出てくるんですが、これがまた聞いてもよくわからない内容なので」と言うけれど、あーた…無理やりでもいいから何かサゲてくれよ!
その後の部分を一生懸命説明するさん助師匠なんだけど、なにせさん助師匠はリアル怪談話下手だから、何言ってるか全然わからないよ~。サゲ作れ~。そうしたら寄席でもかけられるどー。


さん助師匠「火事息子」
ネタ出ししていた「火事息子」。
高いところではからきしダメな番頭の様子が面白い。
一方旦那にちょっと威厳がないかな。
そしておかみさんが旦那と比べるとおばあさんっぽい。年の差夫婦か?(笑)
なんとなくわちゃわちゃした印象だったけど、子どもを思う親の気持ちは伝わってきた。大旦那もほんとは若旦那のことがかわいくて心配でしょうがないんだよね…。

楽しかった。