りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

希望荘

 

希望荘 (文春文庫 み 17-14)

希望荘 (文春文庫 み 17-14)

 

 ★★★★

今多コンツェルン会長の娘である妻と離婚した杉村三郎は、愛娘とも別れ、仕事も失い、東京都北区に私立探偵事務所を開設する。ある日、亡き父が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調べてほしいという依頼が舞い込む。依頼人によれば、父親は妻の不倫による離婚後、息子との再会までに30年の空白があったという。はたして本当に人殺しはあったのか――。
表題作の「希望荘」をはじめ計4篇を収録。新たなスタートを切った2011年の3.11前後の杉村三郎を描くシリーズ最新作。
『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』に続く人気シリーズ第4弾。 


シリーズということを知らず第三作目の「ペテロの葬列」だけ読んでいる。

今回は離婚して一人になった杉村が東京に居を構え私立探偵として事務所を立ち上げている。大家さん始めご近所の人たちが優しくてほっとする。

彼の周辺はほのぼのしているけど持ち込まれる事件は陰惨なものもあって、特に「砂男」には胸がしめつけられた。関わってしまったがために自分の一生が台無しになる…それは震災で否応なく命や家族、家を奪われることと同様の不条理。
親でさえ「あれはサイコパス」と言って縁を切るほどの人間。親がそんなだからこんな風になってしまったのだと言う人もいるだろうが、私はそうは思わない。こういう人間は確かにいるのだ。
しかしそんな人間とかかわってしまったために一生十字架を背負って生きて行かなければならなくなるとは…。救いは訪れるのだろうか。

表題作が好きだった。宮部みゆきさんは魅力的なおじいさんを書くのがうまい。