りつこの読書と落語メモ

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第367回 圓橘の会

9/29(土)、深川モダン館で行われた「第367回 圓橘の会」に行ってきた。


・じゃんけん「たらちね」
・圓橘「三井の大黒」
~仲入り~
・圓橘「猿の眼」

 

圓橘師匠「三井の大黒」
政五郎は威厳があるけど江戸っ子らしいさっぱりしたざっけかない感じがある。
甚五郎はとても自然体というか思ったことをそのまま口にするようなところはあるけど、わざとらしいへんてこりんな感じはない(私は「ぽんしゅー」の甚五郎が苦手だ)。
政五郎の奥さんのことを甚五郎が「顔がまずい」と言うのには大笑い。しかも「気にすることはない。広く探せばもっとひどいのも見つかるだろう」って。ぶわははは。
お弁当のおかずが鮭と聞いてがっかりするのが、それを見せてみろと言って見て「測らずにこんな風にきれいに切れるのか」と感心するのが面白い。
また初日に板を削れと言われてムッとした甚五郎が「でも政五郎親方には世話になってるから」と気を取り直して鉋を3時間かけて削り板を一気に切るところ、迫力があった。
政五郎はそれを聞いて「そんな仕事を頼むとは」ととても怒り、甚五郎にきちんと謝る。また甚五郎は次の日からも他の大工に付いていろいろな現場に行って仕事をする。次の日からなんだかんだいって仕事に行かなくなりぶらぶらする、という展開もあるけど、私はこちらの方が好きだな。

仕事が丁寧で腕も確かな甚五郎だが他の大工に比べて遅いので文句が出ているというのを政五郎が甚五郎に伝え、江戸というのは火事の多いところだから丁寧さよりも速さを求められるのだ、だからお前には江戸は合わないと言うのも、政五郎の正直な人柄が出ていていいなぁ。

小遣い稼ぎに彫り物をやらないかと言われた甚五郎がそこで三井から大黒様を頼まれていたことを思い出して「ああ、そういえば…」と彫り始めるのも納得感がある。
出来上がった大黒様を見に行った政五郎が、見ているうちに不気味になってきて後ずさりするというのも初めて聞いたけれど好きだ。政五郎が甚五郎とは全く違うタイプの大工だけれど、ちゃんと見る目はあって…だけど専門外(!)だからちゃんとは分からない、というのが伝わってくる。

そこへ三井から使いの者が来て、政五郎はそれでもまだ甚五郎だと気付かず…そこへ甚五郎が帰ってきて二人の会話を聞いていてようやくわかる。それで今までの無礼を詫びるんだけど、その程もちょうどいい感じ。

今まで聞いた「三井の大黒」の中で一番好きだったなぁ。圓橘師匠の落語ってわざとらしい作ったようなところがなくてストレートできれいで好きだなぁ。


圓橘師匠「猿の眼」
初めて聴く噺。

岡本綺堂「青蛙堂鬼談」より。
青蛙堂という古道具屋に老若男女が集まって自分が経験した、あるいは人伝に聞いた怪談話をする。
物語は「第一の男(女)は語る」という書き出しで始まり、この「猿の眼」は第四話とのこと。

吉原で引手茶屋を営む市兵衛が、ある日広小路で汚い筵に道具を並べて売っている男に目を止めた。男は40代後半ぐらい、傍らに9歳ぐらいの男の子を連れていて、あきらかに氏族の成れの果て。
何か買ってやりたいがと思い置いてある道具を見てみると、猿の面がありそれに目を止めた。
「箱はないのか」と聞くと、家にあった長持ちの底から見つけ出したもので箱はない。ただ不思議なことにこの猿の眼のところに白い布で目隠しがしてあった、と言う。
男が二歩でいいと言うところを三歩で求めて持ち帰る。

明治5年に市兵衛は茶屋を売り払い、家族3人で今戸に移り住み、それからは俳諧宗匠として生きていくことにする。
その時に代々伝わってきた古道具の類はほとんど売り払い、気に行ったいくつかの品だけを今戸へ持って行った。
ある日、井田という知り合いの若者が訪ねてきて、二人で俳諧について語り合い、その晩は井田を離れに泊めてやった。
すると夜も更けた頃、離れからうなり声が聞こえてきて、市兵衛が様子を見に行くと井田は「化け物が出た」と言っている。あらかた寝ぼけたのだろう、と言っていると、またしばらくして悲鳴が聞こえてくる。
再び離れに行った市兵衛はびしょ濡れになった井田を連れて戻ってきた。
井田は、寝ていると胸が苦しくなり髪の毛が掻き毟られて、恐る恐る見上げると柱にかけてある猿の面の眼が青く光っていて、あまりの恐ろしさに庭先に転がり出たのだ、と言う。
市兵衛も離れに行って、確かに猿の面の眼が青く光っているのを目にする。

次の日の朝、市兵衛と井田の二人は明るいところで猿の面を見てみようと離れに行ってみると、不思議なことに猿の面は消えてなくなっていた。
それから数か月すると、井田はぶらぶら病にかかり22歳という若さで亡くなってしまう。

それから何年かした時に吉原時代の知り合いの幇間が道具屋になって骨董品を買っていただきたいと訪ねてくる。
市兵衛は断ったのだが一目だけでも見てほしいと言って風呂敷から取り出したのが、例の猿の面。
これをどこで手に入れたのかと詰問すると実は四谷の夜店で買ったという。しかも自分が買った時と同じ、落ちぶれた氏族風の男から買い求めたらしい。
四谷と聞いて嫌な気分になった市兵衛。というのは亡くなった井田が住んでいたのが四谷だったのだ。
それでも猿の眼が本当に光るかどうか確かめたいと市兵衛は猿の面を買い求めて離れに飾る。
市兵衛の妻は、なぜこんな不吉なものを引き取ったのだと怒るが、市兵衛はどうしても確かめたい、と言う。

その晩遅くに今度は母が、何者かに髪の毛を掴まれて寝床から引っ張り出されたと言って叫び声をあげる。市兵衛が確かめるとまた猿の眼が青く光っていた。
不思議なことがあるものだと言っていたが、母はその後3年後に亡くなってしまった。

その問題の猿の面を市兵衛と幇間で焼こうとしたが、不思議なことにまた猿の面はなくなっていた…。

…この間聞いた「木曽の旅人 ~山の怪~」と似た、もやもやとした怖さが残る物語。これが圓橘師匠の淡々とした喋りととても合ってる。
サゲでこのお面がこの近所で今度開かれる道具市に出るかもしれない、と言ったのが、お茶目で微笑ましかった。

来月も谷崎潤一郎の話をやるらしいし、楽しみだ!

 

圓橘師匠の「鰍沢」があった。


[落語] 鰍沢