りつこの読書と落語メモ

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憂鬱な10か月

 

憂鬱な10か月 (新潮クレスト・ブックス)

憂鬱な10か月 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

誕生の日を待ちながら、母親のお腹のなかにいる「わたし」。胎盤を通して味わうワイン、ポッドキャストで学ぶ国際情勢、そして父ではない男が囁く愛の言葉と、ある不穏な計画―。胎内から窺い知る、まだ見ぬ外の世界。美しい母、詩を愛する父、父の強欲な弟が繰り広げる、まったく新しい『ハムレット』。サスペンスと洞察が冴える極上の長篇小説。

全能だけど無力な胎児が子宮の中で母と愛人の悪だくみを聴く。タイトルにある「10か月」というのは、胎児が子宮の中で過ごす10か月。母が飲むワインに酔いしれ、母から疎まれる父を案じ、愛人への憎悪を募らせながら、生まれ落ちた後の自分の未来を憂う胎児の一人語り。

とんでもなくグロテスクなのだがブラックなユーモアに満ちていてでもちょっぴり切実で…。
胎児がお腹の中でこれだけ物がわかっていたら…と思うと恐怖しかないが、生まれてくる前にこれだけのことが分かってしまっている胎児の方がより気の毒だな…。

いつもは緻密な調査を行って作品を書いてきたマキューアンが自分の想像力だけで自由に書いたというこの作品。やっぱりマキューアンは意地悪だなぁと思いつつ楽しかった。