りつこの読書と落語メモ

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このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年

 

 

 ★★★★

現代アメリカ文学の巨匠が遺した幻の作品群。目が眩むほどの生への焦燥と渇望――もうひとつの九つの物語。ああ、人生って、目を見開いてさえいれば、心躍る楽しいことに出会えるんだね――。「バナナフィッシュにうってつけの日」で自殺したグラース家の長兄シーモアが、七歳のときに家族あてに書いていた手紙「ハプワース」。『ライ麦畑でつかまえて』以前にホールデンを描いていた短編。長い沈黙の前に、サリンジャーが生への祈りを込めた九編。

ホールデンシーモアといった懐かしい登場人物が出てくるのでサリンジャーファンにはたまらない作品集なのでは。

どの登場人物も、学校や世間からどうしてもはみ出さないではいられない、頑ななナイーブさが際立つ。そこに戦争の影がくっきりと。こんなナイーブな感性を持った人が軍隊に入るようなことになって…どれだけしんどいか、どれだけのダメージを受けただろうと思わずにはいられない。

出版当時は評判が悪かったという「ハプワーズ16,1924年」も、サリンジャー自身の人間性や文学論が垣間見れるような作品なので、確かに作品としての面白さはないがマニア心をくすぐる内容だと思う。私はそれほどファンでも思い入れもないので、正直「ふーん」っていうぐらいではあったけれど、少しだけ生身のサリンジャーを感じられたような気がする。