りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第366回圓橘の会

8/25(土)、深川東京モダン館で行われた「第366回圓橘の会」に行ってきた。


・まん坊「強情灸」
・圓橘「岡本綺堂作 木曽の旅人 ~山の怪~」
~仲入り~
・圓橘「圓朝作 塩原多助一代記 夫婦守倹家益富 大団円の章」


圓橘師匠「岡本綺堂作 木曽の旅人 ~山の怪~」
出囃子ではなく、師匠の語りの録音が流れる、という初めて見る演出。
木曽の山奥の小屋に住んでいる重兵衛と太吉の父子。
ある日、太吉がしきりに「嫌な声が聞こえる。怖いよう」と怖がっている。こういう小屋に生まれ育っているので普段太吉が何かを怖がることはないのにがたがた震えるほどの怯えよう。重兵衛が耳をすますと確かに何か歌声が聞こえる。はてなんだろうと思っていると扉を叩く者が。恐る恐る開いてみるとそこには一人の旅人。
少し休ませてほしいという旅人を小屋に迎え入れ焚火に当たりながら話をするのだが、太吉は怯えて隠れてしまう。
重兵衛と旅人が話をしていると、旅人は福島の方からやってきて、これから飛騨へ向かうと言い、子どもがいるのであればこれをどうぞと寿司と刻みするめをくれる。また酒もあるのでどうぞと差し出され、重兵衛が喜んでいると、近くに住む猟師弥七が犬を連れて訪ねてくる。
弥七も久しぶりの酒だと喜ぶのだが、連れて来た犬が小屋に入るのを嫌がりしきりに吠える。
普段はおとなしい犬なのになんだろうと不思議がる弥七は重兵衛をこっそり外に連れ出して「あの旅人はもしかするとえてものではないか」と言う。えてものは銃の音に驚いて正体を現すから試してみようと銃を空に向けて撃つが、旅人はなんということもない。
ということはえてものではないのか…と重兵衛は思いながらも、子どもと犬の異様な反応が気になっている。

夜もふけてきてふと見ると、旅人の影が後ろの壁にうつるのだが、その影がなぜか女の姿をしていることに気づき、重兵衛はこの旅人が不気味に思えてくる。
それで旅人が泊まりたがったが断りいったん福島の方へ戻るように勧めると、旅人はわかりました、と出て行く。

旅人が出て行ってしばらくすると筒袖の男が「今25歳ほどの男が訪ねてこなかったか」と言うので、旅人の話をすると、その男に違いないと言って追いかけていく。
しばらくすると銃の音が響き、また戻ってきた筒袖の男。
実は自分は探偵で、諏訪の温泉宿に泊まっていた若い男女がいたのだが、女の方が切り刻まれて殺され、おそらくその男の仕業であろうと追いかけてきた。それがあの旅人だったのだが、探偵の姿に気づくと旅人はもはやこれまでと思ったのか銃で自殺した、という。

それでは自分が見たのは男が殺した女の影だったのか…と重兵衛は思ったのだった。


…何の説明もなく突然こういう噺が始まったのでびっくりしながらも、圓橘師匠の静かな語りに聞き入ってしまった。
あとから圓橘師匠が壁に女の影がうつるところだけは自分の創作、とおっしゃっていたけど、やけに愛想のいい旅人の様子と後ろにうつる影の対比がなんともいえず不気味で、素晴らしい演出…と思った。
犬のはっきりした大きな吠える声がどきっとするほど怖くてぞぞぞ…とした。


圓橘師匠「圓朝作 塩原多助一代記 夫婦守倹家益富 大団円の章」
前にもおっしゃっていた原節子さんが「自分が夫を持つなら貧乏な人がいい。金を持っている男は堕落します」とインタビューで言っていたという話をしたあと「うちの女房なんか、”堕落がなによ。あたしは金持ちの方がいいわっ!”ですから、ほんとにいやになる」と言うので大笑い。
そんなまくらから「塩原多助一代記」の最終章。

多助は奉公先の山口屋からのれん分けしてもらって測り炭屋を始めると、まとまった炭を買うことができない庶民にはたいそうウケて繁盛する。
多助の家の隣に住んでいるのが空き樽を再生して売っている久八という男で、太助と久八はとても気が合い仲良く付き合うようになる。
二人が駄菓子屋で茶を飲みながら世間話をしていると、その裏に住んでいる豪商の娘お花が多助を見初め親に話をすると、親も多助を買っていたため、婚礼ということになる。
多助が実親の角右衛門の家を訪ねて結婚の報告をすると、父は多助に塩原家に伝わる刀を、母は嫁になるお花に渡してくれと自分のかんざしを渡す。

婚礼の日、美しい振袖姿のお花は、千両の炭を乗せた船が着いたと聞くと、袖を結わって多助とともに炭を家に運び入れるのを手伝う。
そして婚礼の晩には多助が父から譲り受けた刀でお花の振袖の袖を斬り落とし、二人で倹約して金を貯め、いつか塩原家を再興することを誓う。


圓朝物だからまたいつ殺し合いが始まるのかと思っていたけど、塩原多助というのはそういう噺ではなかったのだな。
最初の部分は聞けてないし途中も抜けているので、また最初から聞いてみたいな。

力の入った二席を聞けて満足~。