りつこの読書と落語メモ

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ディス・イズ・ザ・デイ

 

ディス・イズ・ザ・デイ

ディス・イズ・ザ・デイ

 

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「こういう話をしてるとさ、どんな気持ちでも生きていけるんじゃないかって思うよね」
22チームの22人のファンたちは、それぞれの思いを抱いて2部リーグ最後の試合の「その日」に向かう。職場の人間関係に悩む会社員、別々のチームを応援することになった家族、憧れの先輩に近づきたい男子高生、十数年ぶりに再会した祖母と孫など、ごく普通の人たちのかけがえのない喜びを、サッカーを通してエモーショナルに描き出す連作短編集。

 Jリーグ2部サポーター小説。架空のチームのありそでなさそなチーム名とエンブレムが秀逸で楽しい。

それぞれの地方でそのチームの最終節のゲームに向かう人たち。
サッカーやチームに対する思いもそれぞれだし、人となりや抱えてる問題や心情もさまざま。

なんとなく行っているうちに徐々にのめり込んでいったり、好きすぎて応援に行くことすらできなくなったり、憧れの人のことを知りたい一心で行くようになったり…それでもやっぱりサッカーがあってよかった、サポーターっていいなと思える、じんわりとした温かさが好き。

「若松家ダービー」のお母さんが好きだ。自分の息子より泉大津ディアブロのフナ選手の事を常に心配しているお母さん。家族でディアブロの試合を応援に行くのが当たり前だったのに最近行かなくなった長男の圭太を気にしながらも「ま、なにか事情があるんだろう。見守ろうよ」という夫の言葉に「それもそうか」とそれ以上の詮索をしない。
長年応援しているチームに対するゆるっとした応援の仕方が息子に対する態度にも共通していて面白い。でもこういう親がもしかすると一番なのかもしれない、と思ったり。

「篠村兄弟の恩寵」に出てくる窓井選手。惚れる…。こういう選手がどれだけの人に力を与えているかわからないよなぁ。簡単に「勇気を与える」なんていうけど、こういう選手は本当にいろんな人たちに勇気を与えてるんだよなぁ…とじーん…。

会場にいる見知らぬ人たちの会話の描写もとてもリアルで、ほんのり優しくておかしくて癒された。

楽しかった。