りつこの読書と落語メモ

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戦時の音楽

 

戦時の音楽 (新潮クレスト・ブックス)

戦時の音楽 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★★

音楽と戦争、幻想と歴史が交錯し、響き合う、17の物語。名手による待望の初短篇集。往年の名ヴァイオリニスト。サーカスの象使い。大学教授になりすますシェフ。時代や運命の不条理に翻弄されつつも何かを生み出そうと苦闘する人々の物語は、作家自身の家族史をも織り込みながら、?がり合うように広がっていく。ベスト・アメリカン・ショート・ストーリーズに4年連続選出された名手による、驚異に満ちた17篇。

バラエティに富んだ短編が収められているのだが、じっと耳をすますと一つのメロディが聞こえてくるような感じ。

とても好きだったけれど、ちょっとわかりにくいところもあって、大きな声で「素晴らしかった!」とは言いづらい。じゃどれがよかった?どこがどんなふうに?と聞かれると、まだそこまで深く読み取れてないから、と答えざるを得ない。

「ブリーフケース」「絵の海、絵の船」「惜しまれつつ世を去った人々の博物館」も好きだったが、一番好きだったのは「赤を背景とした恋人たち」。
ピアノの中から出てきたのがちょっと小さめのバッハ!徐々に大きさが整ってきて、元旦那の服も板についてきて、家のピアノを弾くようになってきて…バッハの目から見て初めて高層階の怖さに気づき、理解できなかった元旦那の恐怖をようやく受け入れられるようになるって…いったいどこをどうやったらこういう発想が出てくるんだろう。

自分が生き延びるためにした選択、犠牲にした人、切り捨てたこと…その罪悪感を抱きながら生き続けること。
苦いけれど底に流れる音楽の優しい調べが救いになっている。