りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第34回鶴川落語会 柳家小三治独演会

7/21(土)、和光大学ポプリホール鶴川で行われた「第34回鶴川落語会 柳家小三治独演会」に行ってきた。


・一琴「真田小僧
小三治ちはやふる
~仲入り~
・一琴 紙切り
小三治「長短」


小三治師匠「ちはやふる
こんな暑さの中こんなに沢山おこし頂いてありがとうございます、と小三治師匠。
そう言ったあとに、でもこの中で一番遠かったのは私です。いやほんとによくたどりついた…。

…ぶわはははは。
でもそうとも限りません。私も結構遠いです、鶴川は。しかもこのチケットはあっという間に完売。地元の人ばかりじゃないんじゃないかな。ま、来たくて来てるんだけどね。小三治師匠が見たい一心で。

ところで私、出てくるの遅くなかったですか、と師匠。
そうなのだ。出囃子が鳴ってもなかなか出てこなくて、もしかして前方の一琴師匠が12分で上がったから支度が間に合ってないのかなと思っていたのだ。

一琴があがってきたとき、私まだ帯締めてなかったんですから。
帯を締めてから鏡で全体を見て直して…まだ何分かかかるんです。自分が出る時に私の支度具合を見てそれぐらいのことわかるはずなのに。
しかもあいつがやった「真田小僧」。あれだってあんな風に…倅が金を持って家を出るところで「おいっ」って声をかけるところにはいろんな想いがあるのに、あれじゃサイレン鳴らしてるのと変わらない。
そもそもあの噺は寄席ではみんな確かにあそこで切るけどあれで終わりじゃなくて…。

と言いかけてもう我慢できず?「おい、一琴!」と舞台袖にいる一琴師匠を呼び出す小三治師匠。

ひぃーーー。公開小言ーー。

出てきた一琴師匠に「真田小僧」の後半部分を話せ、と小三治師匠。
「ええと…」と語り始める一琴師匠。
そんなに丁寧にやらなくていいよーーあらすじだけでーーと思ったのだけど、丁寧に話さないと筋が出てこないんだね。
一通り話し終わって、きっと初めて全部を聞いたお客さんも多かったみたいで、大きな拍手。

落語っていうのはお話なんだからそれをちゃんと語らないとダメ。
笑わそう笑わそうと無駄なギャグを入れて、その場でわっとウケたってお客さんにはそれ以上のものは残らないしそれじゃ落語じゃない。
習ったそのままにやるんじゃない。そもそも習いに行くときだってこの人のここがいい、この噺のここがやりたい、そういう考えを持たなきゃいけない。
そんな小言を一通り言って「下がっていい」。

小三治師匠、ほんとにいろんなことをおっしゃっていたけど、どれもとってもよくわかる…そうだなーーということばかり。
私はただの素人だけど、そういう小三治師匠の落語が好きだし、自分が好きになる噺家さんはそういう考えの人が多いだろうな、と感じた。
これでもかこれでもかと押してくる噺家さんより、その落語がお話として好きでその世界をきちんと見せてくれる噺家さんが好きだな。技術の良し悪しや感じ方、個性はそれぞれだと思うけど。

これだけ小言を言ったら自分の落語に入りづらい?
なんてことは全然なくて、「今からするのはたいして面白い噺じゃありませんよ」と言って「ちはやふる」。

そう思って見てみると、やっぱりすごい技術に裏打ちされているんだな…ということが素人の私にも分かる。
なんだろう。ウケすぎないようにしてる…っていうんじゃないけど、自然に流れていくのだ、会話というか間というのが。
「歌のわけを教えてくれ」と言われた「先生」。最初はまるきりわからないからお茶を勧めたり歌をきれぎれに言ったりして時間を稼いで、でも話し始めたら興が乗ってきてだんだん楽しくなってきて浪花節調になったり三味線が鳴ったり。
聴いてる方も「ええ?5年で大関に?すごいですね!」と感心したり「なんか変な話ですね」とちょっと怪しんだり。
やりとりをしている二人のそばで見ているみたいな…そんな感じ。

楽しいなぁ。無理なく楽しい。だから疲れないのかなぁ小三治師匠の落語は。だから何回でも見たくなるのかもしれない。そんなことを思った。


小三治師匠「長短」
前半が長かったので、後半はまくらなしで「長短」。
小三治師匠の「長短」は時によって長さんがかわいく見えたり短さんが好きになったりするんだけど、今回は長さんがかわいかった~。
自分のすることに短さんがイライラしたり、そういう二人の関係を面白がってる。一緒にいる時間を楽しんでる。そんな感じが伝わってきて、思わずにこにこ。
ガミガミ言われるのは慣れてるけど、怒られるのはいやなんだね、長さん(笑)。

じんわりと楽しい「長短」。
静かな瞬間もあったんだけど、その時に自分のお腹がきゅるきゅるいうのが恥ずかしくて、でもそれも落語みたいで少しおかしかった。

こじんまりしたホールで見る小三治師匠。至福だった。
最近落語ブームで寄席で小三治師匠がトリの時はもう鬼のようにお客さんが押し寄せるので行かなくなってしまった。
大きなホールで見ても満足感があるから小三治師匠はすごい。