りつこの読書と落語メモ

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南北戦争がはじまって、インディアナの農場で暮らす主婦コンスタンスは男のふりをして戦争に参加する。訥々とした女語りの雄弁さ、死と痛みに浸された世界、色彩たっぷりの自然描写、静かで容赦ない声。ポール・オースターが絶賛した長篇を柴田元幸の見事な訳でおくる。 

「優しい鬼」がとても苦い物語だったので覚悟して読んだのだけれど、辛い…とても辛い物語だった。
大切な人の死を乗り越えるために…あるいは現実から逃げるために、彼女は兵士となって戦争に行ったのだろう。
そこで数限りない死を目の当たりにして自分でも何人もの人間を殺し酷い目にもあってようやく我が家に帰ってきたのに…。その経験により真の兵士となり恐怖に打ち勝つことはできたけれど、最愛の人をなくすことになってしまうとは。

人の命を奪うことに鈍感になった報いなのだろうか。
あるいはそうなることがわかっていたから、足が家に向かなかったのだろうか。

語られていなかったことの方に意味がある。苦いけれど素晴らしい作品。