りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

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 ★★★★★

富士山を望む町で介護士として働く、かつて恋人同士だった日奈と海斗。老人の世話をし、ショッピングモールに出掛けることだけが息抜きの日奈の家に、東京に住む宮澤が庭の草刈りに通ってくるようになる。生まれ育った町以外に思いを馳せるようになる日奈。一方、海斗は、日奈への思いを断ち切れないまま、同僚の畑中との仲を深め、家族を支えるために町に縛りつけられていくが…。読むほどに打ちのめされる!忘れられない恋愛小説。 

自分を見失うほど誰かを好きになりたい気持ちと自分の領域を侵されたくない気持ち。それらを同時に持つことができるから人間はめんどくさい。
みっともない振る舞いをするほど好きだったくせに、冷たく切り捨てられてどこかほっとする自分がいる。

ここに出てくる人たち、誰にも共感しないし誰のことも好きになれないけど、でもなんかわかるなーと思う。

誰かを好きになるのは自分の空虚を埋めるため、確かにそれもあるけれどそれだけじゃない。
恋愛感情は永遠に続くものではないけれど、恋愛でもなく愛でもないけどそばにいる、それも悪くない。
日奈と海斗がそんな風にして一緒にいられたらいいと思う。

面白かった。