りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

異形の愛

 

異形の愛

異形の愛

 

 ★★★★★

 巡業サーカスを営む団長の父と献身的な母、天才アザラシ少年の兄、美しいシャム双子の姉、特別な力をもつ弟。愛しき“奇天烈カーニバル”は国中を騒がせ、やがて崩壊のときが来る…いまから、わが家の物語を語ろう。偏愛される伝説の名作。

子どもをデザインして家族でカーニバルを営むビネウスキ一家。長男は手足のないアザラシ少年アーティ、シャム双生児の美しい姉妹エリーとイフィー、アルビノのせむし(語り手)オリー、そして超能力を持つ末っ子チック。彼らにとっては「異形」であること、カーニバルで稼げることが何より重要。
彼らにとって、服を着ていないと見分けがつかない「フツウ」に意味はないのである。

頭がよくて嫉妬深いアーティが家族の中心になった頃から物語は悲劇へまっ逆さま。そんなアーティを恐れながらも彼に必要とされることだけを願い続けるオリー。

これが究極の愛だとは私は思わないけれど、愛する人に愛されたい、認められたいという彼らの気持ちは痛いほど分かる。
正常と異常がひっくり返った世界。彼らの価値観や暮らしを歪んでいると思いながら読んでいたが、アーティの講話のような語り)に「フツウ」が洗脳されて入信してくる様はとてもリアルで、結局のところフツウも異形も違いはないのだと気付かされる。

グロテスクだけれど美しい。不思議な世界。