りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

池袋演芸場6月中席夜の部

6.19(火)、池袋演芸場6月中席夜の部に行ってきた。

・伸治「あくび指南」
小遊三「雑排」
~仲入り~
・真打昇進披露口上(伸治、紅、蘭、夏丸、幸丸、小遊三
・蘭「鼓ヶ滝」
・紅「マダム貞奴
・幸丸 漫談
ボンボンブラザーズ 曲芸
・夏丸「いが栗」


伸治師匠「あくび指南」
伸治師匠が出てきただけで、高座がぱーっと明るくなる。
座布団にふわっと座って笑顔で客席を見渡されると、キャーキャー言って手を振りたくなる。ほんとに素敵。

いろんなお稽古があって…と始まったので「あくび指南」!とすぐにわかったんだけど、そのまえにされた喧嘩のお稽古の小噺、聞いたことがなかったけど面白かった。
あくびの稽古に行きたいんだよ!という江戸っ子もそれに付き合う兄貴分もふわふわご機嫌で楽しい。
あくびの説明の中にあった「寄席のあくび」。これは2回半気づかれないようにそっとする。なぜなら「噺家はあくび3つで即死する」から。
あと師範格になると「臨終のあくび」。ふわぁーーとあくびをしてご臨終。これが最上級。

師匠のあくびの模範演技はゆるっとしているけど上品で風流。
稽古する男は不器用でひどいんだけど、師匠は「それじゃいけません!」と言うけど、穏やかでちょっと笑っちゃう感じ。
何度やってもできないので師匠があきれると男が「先生、見放さないでくださいよ。師範までいきたいんっすから!」と言うのがなんともチャーミング。
最初から最後まで軽くて明るくて楽しい「あくび指南」。
ニコッと笑って去って行く姿もかっこよかった~。


小遊三師匠「雑排」
話し始めて、あれ?道灌?でも圓馬師匠が「つる」をやったってお友だちが言ってたしなぁー(見たかった!)と思っていたらなんと「雑排」。
ご隠居とはっつぁんのかけあいがとても楽しかった。


真打昇進披露口上(伸治師匠:司会、紅先生、蘭先生、夏丸師匠、幸丸師匠、小遊三師匠)
司会の伸治師匠が素敵すぎる!
ふわっと笑顔で名前間違えちゃったりするんだけど、それも含めてこうゆる~い優しい空気が流れてる。
幸丸師匠に口上を振る前に、「幸丸師匠っていうのは小言の多い人でね…。でも夏丸さんはこの人にとっても初めての弟子だったから小言言うのも実は”これでいいのかな”って心配してて、よく聞かれましたよ。”これであってる?この小言で間違いない?”って」。
幸丸師匠は「余計なことを言うな」って顔して見てたけど、なんかほのぼの…。いいなぁ。そのエピソード。
紅先生に振る時も「蘭さんがたてだった時に楽屋でネタ帳書いてたんだけど、ちょうどそのとき楽屋にウィスキーボンボンがあって、それを3つほど食べたら私お酒弱いんでちょっと酔っちゃってね、思わず蘭さんの手をちょっと握ったらね…」
「なんの話だよ!」「何言いだすんだよ!」というツッコミにも動じず、「そうしたら蘭さんはぎゅっと手を握り返してきてからね、”師匠、いいんですか?あたしは高いですよ。覚悟はできてますか?”って。私、あわてて手を離しました」。
…ぶわははは!すてきーーー。蘭さんのかっこよさがすごくあらわれてるエピソード。最高だー。

紅先生が蘭先生を「師匠譲りの美貌」「美人なのに努力家」と褒めるのも好きだったけど、講談協会では一人前座だった蘭さんが芸協では夏丸さんがいて…ほんとに夏丸さんでよかった…包み込むような優しさがあるから芸協の寄席で働くときはほっとしていたと思う、っておっしゃったのにもじーん…。
「こんなぐだぐだな司会」って言われてたけど、とても芸協らしくて、でもふざけるだけじゃなく心がこもってて、いい口上だった。感動。


幸丸師匠 漫談
伸治師匠の司会を「あんなに間違えて」と文句を言いながら、「幕が上がったときに、1列目のお客様が色紙(祝新真打夏丸)を挙げてるのが見えて、ああいうお客さんがついてるんだ、いいなぁ、と思ったら動揺したと言ってた」と。
なんか気難しそうな師匠だなぁと苦手だった幸丸師匠のことを、このお披露目に通ううちにどんどん好きになったな。

自分に初孫ができてこれがかわいいのなんの。
なんでこんなにかわいいんだよーーーって思ってたら、同じこと言ったやつがもういたね。♪なんで~こんなにかわいいんだよ~♪
オムツも嬉々として(自分が)替えちゃう。手についても”いいのいいの全然臭くない”。それが自分のがちょっとでもついたら”くっせぇ!!!”
(ネズミの増毛実験成功のニュースに)いいニュースだね。あれ、なんでネズミで試したんだろうね。俺で試してほしかったね。ネズミだって一匹だけあんなふうに毛が生えたら仲間から変な目で見られるだろうに。

いつもは漫談の後に何かしら一席やっていたけどこの日は漫談だけ。
でもおかしかったー。最初から最後まで笑いどおしだった。

 

夏丸師匠「いが栗」
昔はネズミ除けで鴨居のところにいが栗を置いた、というまくらでわかる。「いが栗」だ!
「夏丸谷中慕情」で聞いてことがある。

娘が気病にかかり村を追い出されてあばら家で娘と二人で暮らしているおばあさん。悲惨な状況なのだが、このおばあさんがのんびりしていてなんかちょっとユーモラスで、それがこの噺全体を優しいトーンにしている。
民話のような独特な雰囲気が夏丸師匠にとても合ってるし、池袋演芸場のトリでこの噺っていうマニアックさがたまらない!
ちょっとこわくて、でものんびりしていて、不思議で楽しい。
素晴らしかった。来てよかったー。