りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

桂夏丸真打昇進披露目の会 in 深川

5/30(水)、深川江戸資料館で行われた「桂夏丸真打昇進披露目の会 in 深川」に行ってきた。

・しん乃「狸札」
翔丸「鈴ヶ森」
・たけ平「宗論」
・市馬「かぼちゃ屋
・幸丸「野口英世伝」
~仲入り~
・真打昇進披露口上(たけ平、市馬、夏丸、幸丸)
・よし乃 太神楽
・夏丸「阿武松」&歌「憧れのハワイ航路」


しん乃さん「狸札」
日るねさん時代をそんなに何回も見たことがないので、昔からこうだったのか今弾けてこうなったのかわからないけど、自由だわー。
前座さんらしく大きな声なので、余計個性的に感じる。
ふにゃふにゃっとしたところと、口跡が案外ちゃんとしたところがあって、そのアンバランスさが魅力だな。
声がところどころアニメっぽくなるところがちょっと気になるけど、楽しかった。


翔丸さん「鈴ヶ森」
翔丸さんって夏丸師匠の弟弟子だったのかー。知らなかった。確かに関係が薄そう(笑)。芸風も全然違う。
芸協のニツ目さん、みーんな「鈴ヶ森」を文治師匠に教わってるね。でも私はあれがとても苦手なんだよなぁ。
「…あたしだってまんざらばかじゃないんですから」
「ばかだよ!」
のやりとりも、どこが面白のかわからない。


たけ平師匠「宗論」
正直苦手な噺家さんだけど、いつものまくらも楽しくて大笑いしてしまった。
小さな会場だと客いじりとかキンキンした声が攻撃的に感じてしまうんだけど、これぐらい広い会場だと気にならないんだな。
「この会場はいい!何がいいって北千住から近い。半蔵門のおかげで。半蔵門ができる前はここには来られなかった。来ようとすると2日ぐらいかかった」には笑った。

長いまくらから「宗論」。
玉の輔師匠から?
この師匠の芸風にぴったりだなー。どうでもいいダジャレがツボって笑った~。


市馬師匠「かぼちゃ屋
市馬師匠が出てくると「待ってました!!」と大きな掛け声がかかったんだけど、それににこっと笑って「ご陽気ですね」と言ったのがおかしかった。
まくらなしで「かぼちゃ屋」。

与太郎を手伝ってくれるおじさんが素敵。
怒ってたくせに与太郎が「じゃしょうがねぇな、なぐれ。それからかぼちゃ買ってくれ」と言うと、けろっと「おめぇえれぇな!」って褒めて「じゃ買ってやるよ」と2つ買ってくれて、長屋の人が集まってくると「おもしろいかぼちゃ屋が来てるんだよ」「品物はいいよ!」と売り込んでくれて全部売ってくれる。
与太郎がすごいばかっていうことはないんだけど「俺、しなくちゃいけねぇことがあるから」と言って上を向いてしまうと、「なんだこいつは。ほんとにおもしれぇやつだな」って面白がるやさしさ。

いいなぁ、市馬師匠。
のんびりゆったりしていてあたたかい世界。楽しかった~。


幸丸師匠「野口英世伝」
ながーいまくらの中で「愚痴が多くなっていけないね。でも愚痴も面白くて笑えればいいんだよ。笑えれば勝ち。でも笑えなかったら単なる愚痴になっちゃう。」の言葉に、そうだよなぁ、と感じ入る。笑うが勝ちの人生よ。愚痴も笑いに昇華したい。
長いまくらから「野口英世伝」。
途中脱線したりしながらもコンパクトにぎゅっとまとめて。ところどころの脱線やギャグも楽しかった!
幸丸師匠、毎回違う噺だ。正直、「吉田茂伝」は嫌いだったけど、それ以外はみんな面白かった。


真打昇進披露口上(たけ平師匠:司会、市馬師匠、夏丸師匠、幸丸師匠)
たけ平師匠
夏丸さんとはほんとに長い付き合い。いろんな話をさせてもらって…相撲、昭和歌謡…こういう話をできるのはほんとにうれしい。
彼とはいろんな話をしましたけど、そういえば落語の話はしたことがない。
相撲界の未来について熱く語り合ったことはあるけど、落語界の未来について話したことはないですね。
でも彼はこれからほんとに寄席に欠かせない噺家になると思います。そうじゃありませんか。いろんなカラーの噺家や色物さんがいる中で、得難いキャラクターだと思います。

…やっぱり口上はこういうよく知ってる人にしてもらいたいよねぇ。心のこもった言葉にじーん。


市馬師匠
夏丸さんが前座をやってた頃は落語界は冬の時代で本当に新しい人が入ってこなかった。入ってきてもみんなやめちゃう。
そん中彼は一人、腐ることもなく寄席で働いていた。いいなぁと思って見てました。協会違うからそんなにしょっちゅう会うわけじゃないけどね。
ニツ目になってからも、人がやらないような噺ばかりやってね。面白いなぁと思ってね。
うちの協会ではこういうのは育たない。こういうのってていうのは…ま、自然体っていうかね、やる気があるようには見えないっていうか。そうすると「あいつはやる気がないだろう」って言われちゃうからね。がははは!
それをよくこうやって野放しにして…いや、こんなふに育てましたね、えらいね、幸丸師匠は。えらいよ、あなた。
私は好きです、この人が。夏丸さん、大好きです。

…何か言ってはたけ平師匠の方を見て「ね?」と言う市馬師匠に、「こっちを見て何か言わないでくださいよ」「何私に同意を求めてるんですか」とたけ平師匠。
でも市馬師匠らしい優しい言葉にじーん。
こういうとき、絶対に引き立てようとする市馬師匠が大好き。

幸丸師匠
毎回口上で夏丸さんのことを「実家が金持ちだから鷹揚に育ってる」と言っていたけど、この日は「家で怒られたことがない」と。
だから自分が怒ったとき、驚いてぽかーんとしていた。
あんまり驚いたんでどういう反応をしていいかわからなかったんでしょう。ニヤニヤ笑ったりしてますます怒られた。何年かして慣れて反省した態度をとるようになりましたけど。

…うわ、そうなのか。それはきつかっただろうなぁ、夏丸師匠。と、同情する。

幸丸師匠の口上のあと「せっかくですから師匠、相撲甚句を」という展開になって、歌いだした市馬師匠。明るくてきれいな声だしちゃんと「梅雨」「深川」「夏丸師匠」という単語も入っていて、いいっ。
やっぱり口上は落語協会の方が好きだな。ふざけが過ぎないし、褒めるし、なにより本人のことを語ってくれるのがうれしい。


夏丸師匠「阿武松
まくらですぐにわかった「阿武松」だって。
真打になる直前の「夏丸谷中慕情」で聞いているんだ「阿武松」を。あの時ニツ目だった夏丸さんがもう真打披露興行の折り返し地点ってなんか感慨深い。

淡々とした中に時々ばかばかしいクスグリが入るのが楽しい。
ここに出てくるおこげの握り飯、食べてみたいなー。
長吉がおまんまの食いすぎでクビになったと聞いた善右衛門が「だったら自分が米を送ってやろう」と言うのも素敵だけど、それを断る綴山親方が素敵だなぁ。
そして長吉を一目見て逸材と見抜くシーン。白鵬のまくらが効いてる。
夏丸師匠らしい飄々とした「阿武松」。よかった。

そして落語の後は、マイクを持って「憧れのハワイ航路」。
ちゃんとそれを予測して前列でうちわ、ライトを振る夏丸ファンが素敵。
飴の入った夏丸&蘭ポチ袋を客席に配るサービスのよさ。楽しかった!