りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

福岡から来ました。

5/14(月)、落語協会で行われた「福岡から来ました。」に行ってきた。

・はな平・さん光 トーク
・はな平「大師の杵」
・はな平「権助提灯」
・さん光「壺算」


はな平さん、さん光さん トーク
とてもゆるーい雰囲気。お客さんとも話しながら、二人が近況を語る。
師匠に付いて九州に行ってきたさん光さんが買ってきたおみやげを配ってくださって。それが権太楼師匠のお孫さんの大好物ということだったんだけど、この間会社で同じものをおみやげに持ってきた人がいたやつだったりして、なんか嬉しい。


はな平さん「大師の杵」
林家というと地噺というイメージがあるようです、とはな平さん。
でも地噺ってやるのに勇気がいるんです。
というのは、本来の噺の部分のほかにふんだんにギャグが入って、その部分も含めて教わるんですけど、このギャグの部分、教えていただいた師匠がやるとウケてるのに自分がやるとウケないことがあって。そうすると、教えてくださった師匠にも傷をつけるような気がして、なんか申し訳ない気持ちになるんです。
だからできるだけギャグの部分は自分で考えたやつを入れるようにして、二倍傷つくのを防ぐ…。そんな私です。

…わはははは!そんな話は初めて聞いた!そういうものなのか。おもしろ~い。

「弘法も筆もあやまり」ということわざがありますが、似たようなものに「名人、ネタをあやまり」というのがあります。
このネタをあやまるというのは、その日のお客さんに合ってない噺を選んでしまった、ということを言ってます。
あと「弘法、筆を選ばず」というのがありますが、これには「名人、客を選ばず」というのもあります。これは名人というのはお客を選ばない。笑わないお客さんのことも笑わせることができる、ということです。
その点私は「はな平、客を選ぶ」。笑ってくれないお客さん相手に撃沈なんていうことも少なくありません。

…ぶわはははは。この対比、面白い!
これがさっき言ってた「自分で入れたギャグ」なのかな。だとすると、はな平さんのセンス、すごい好きだわっ。

そんなまくらから「大師の杵」。
空海上人は若いころ、非常に見目麗しかった。修行のために立ち寄った川崎で宿に泊まった時、その宿の娘のおもよさんが空海に想いを寄せた。
おもよさんがそのことを父親に打ち明けると、父親は空海におもよを嫁にしてくれないかと話をする。
しかし空海は自分は修行の身の上だからと、それを断る。
断られた父親はそれをおもよに伝えることができず、夜、部屋に訪ねてくるように空海が言っていたと嘘をつく。
それはこれだけの美女が夜訪ねてくればさすがの空海も誘惑に負けるだろうと考えたからだった。

期待に胸を膨らませたおもよが夜中に空海の部屋を訪ねてみると、部屋はもぬけの殻。布団にはまだぬくもりが残り、中に杵が置いてある。
これはなにかのなぞに違いないと考えたおもよさん。
想いを杵(キレ)なのか、はたまた、俺に付いて杵(来ねぇ)なのか。
江戸っ子の方(ついてきねぇ)だと思ったおもよさんが家を飛び出すが、渡しに行ってみると空海がすでに川を渡ったことがわかる。

失恋ですよ。
失恋といえばいい歌がありますね。なんといっても西野カナ
そういって歌詞を諳んじるはな平さん。
それだけでもおかしいのに、そのあと、あみんの「待つわ」とか石川ひとみの「待ちぶせ」とか中森明菜の「難破船」とか…。挙げる歌がどれもツボなんですが。

この噺って、夜部屋を訪ねてくるようにと言うのが父親というのと、空海が言うのと2パターンあるよね。
空海が言う方だと、確かにそりゃあなたも悪いわ、気を持たせたんだから、と思うけど、今回のように間に入った父親が勝手に言ったとなると、空海に罪はないよなぁ…。気の毒だわー。

地噺ってギャグが過ぎると気が散って「もうそれ(ギャグ)いらない!」って思うけど、はな平さんのはほどがよくて噺の邪魔にならずとても楽しかった。


はな平さん「権助提灯」
まくらで「不倫」という言葉がいや。倫理に「不」ってひどいじゃないですか。そういうのばかりじゃないと思うんですけどね。
ってわかるよ、言いたいこと。なんかね…。
その点昔は「お妾さん」というのがいて、正妻もその存在を知っていて容認していたというんですから…。
なんていうまくらから「権助提灯」。

この噺って、奥さんが「あの子の家に泊まってあげたら」と言われた旦那が大喜びで「じゃそうさせてもらうか」と言った時点で家には帰れないことが決まったも同然だよなー。
そしてお妾さんに向かって「家内が泊まれと言ったから」と言ったのもまずい。「風が強くて心配だから(自主的に)来た」と言えば歓迎されたのにねぇ…。
お妾さんを認めていたと言ったって、奥さんにしてみればやっぱり面白くなかったんだよ、ぜったいに。
それを認めて心の広いところを見せることで自分を保っていたんだろうなぁ、と思うとこの奥さんが気の毒になるし、やれやれー!と思ってすっきりする。

嬉しそうに大声あげる権助がおかしい。
そして出かけるときに権助が「わしだってわしみたいのをおともに連れて行きたくない」とうそぶいたのがおかしかった~。
楽しい「権助提灯」だった。


さん光さん「壺算」
GWは師匠に付いて九州に行った、というさん光さん。
それでちょっと尾籠な話になるんですが…GW中にお尻にできものができてこれが痛いのなんの。でもGW中は病院も休みで行くことができず、ようやくあけてから皮膚科に行ったんですが、どうもバイ菌が入って膿んでるっていうんですね…。切って膿を出すしかないけど相当痛いですよ、どうしますか?って医者に聞かれて…。
どうしますか?って、なにその選択肢?切ってもらうよりほかないじゃないですか!

切る時、まずは麻酔をしますと言われたんだけど、私子どものころから注射が大嫌い。小学生の頃は注射がいやで1時間泣き続けたほど。今だって変わりません。
しかも医者が「これを打ちます」ってわざわざ注射を見せてきたんですけど、これがすごくぶっとい。
なんで見せたんですか?!

で、打たれたんですけど、これがもう…。ただでさえ座っているのも耐えられないぐらい痛いところに注射を打つんですから、痛いところに痛いですから…さすがに大人だから泣いたりはしなかったですけど、「ううっ」って思わず声が何度か漏れたんです。
そうしたら終わってから医者が「痛かったね?」とにやり。

…ひぃーーー。聞いてるだけで痛いわっ。
そんなまくらから「壺算」。
さん光さんが落語に入ったときの声が権太楼師匠にそっくりでドキっとする。タイプが同じというわけじゃないんだけど、声の出し方がとっても似てる。もしかすると権太楼師匠の全部のお弟子さんの中で一番似てるんじゃないかしら。

買い物の下手な方の男の無邪気でかわいい。
おかみさんが「あんたは性格が素直だから買い物が下手」と言う気持ちもわかる。
瀬戸物屋の番頭が一回目の説明で「ああ、そうでした!」と満面の笑みになるところがお人よしっぽくておかしい。

うーん。さん光さん、とってもチャーミング。
なんか内側から湧き出る明るさがあって、そこが好きだな。私、暗さと明るさがある噺家さんに弱いのよねぇ。
でも「壺算」だけじゃ正直物足りない。もっとたっぷり聞きたいぞ。ということは赤坂の会に行かないとだめかな。(そういって、どんどん「行かなきゃだめ」な会が増えていく~)