りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

マザリング・サンデー

 

マザリング・サンデー (新潮クレスト・ブックス)

マザリング・サンデー (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★★

あの秘密の裏道を通って、わたしは本当の人生を漕ぎはじめる。一九二四年春、メイドに許された年に一度の里帰りの日曜日(マザリング・サンデー)に、ジェーンは生涯忘れられない悦びと喪失を味わう。孤児院で育ち、帰る家のない彼女は、自転車を漕いで屋敷を離れ、秘密の恋人に逢い、書斎で好きなだけ本を眺める。そこに悲報が――。のちに著名な小説家となった彼女の、人生を一変させた美しき日をブッカー賞作家が熟練の筆で描く。 2017年 ホーソーンデン賞受賞作 

主人公ジェーンは聡明でしたたかで逞しい。

前半を読んだときはジェーンには選択肢も決定権もないのだと、メイドという低い身分であること、女性であることの弱さを目の当たりにしたようで苦い気持ちになったけど、それだけで終わらないのが素晴らしい。

ジェーンが一人屋敷に取り残されてからの場面。そして受け身に見えた彼女が自転車で裏道を駆け抜けるシーンが素晴らしい。

彼女がその瞬間に感じた自由、無敵感がとてもリアルに伝わってくる。
マザリング・サンデーにジェーンが失ったものものと得たもの。そして作家として歩み始めるきっかけとなったまさにその日。

こんな中途半端な長さでこの充足感、すごいなぁ…グレアム・スウィフトは。「ウォーターランド」よかったもんなぁ。また読み返したくなったな。