りつこの読書と落語メモ

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酸っぱいブドウ/はりねずみ

 

酸っぱいブドウ/はりねずみ (エクス・リブリス)

酸っぱいブドウ/はりねずみ (エクス・リブリス)

 

 ★★★★

『酸っぱいブドウ』―「短剣に斃る」:強欲で乱暴で慎しみを欠き、くせ者揃いの住民で知られるクワイク街区。そこに暮らす片耳の男ヒドゥル・アッルーンは、自分の伴侶のように大事にしていた短剣を警察に没収されてしまう。「隘路の外衣」:クワイク街区を抜けて近道しようとしたムフスィン・ファーイルは、黒い外衣をまとった女に道を訊かれる。知らないと答えると、突然その女の兄を名乗る男に因縁をつけられる。「ハッラーウの末路」:床屋のサイード・ハッラーウは店を閉め、謎の黄色い錠剤を売っている。錠剤には魔法のような効能があり、街区に住む男たちは次々と中毒に陥るが、その成分や製造方法は誰にもわからない。「八時」:ハナーン・ムルキーは一時間刻みで約束をこなす。正午には公園、一時にはある家、二時にはカフェ、三時には映画館、五時には婦人服店、六時にはレストランへ…多忙な娘ハナーンが八時に帰宅するまでの半日を追う。『はりねずみ』―両親と兄と暮らす6歳の「僕」は、大人にいたずらを仕掛け、質問攻めにして困らせるのが大好き。シリアの子どもの殺伐とした日常をコミカルかつシニカルに語る。 

 シリアでは言論の自由が厳しく制限されていることを受けてか、寓話的な物語が多い。しかし描かれるのは徹底した残酷性、暴力性だ。
命はとことん軽んじられ、昨日の加害者が今日の被害者になり、誰かを殺した誰かはまた違う誰かに殺されていく。特に「酸っぱいブドウ」の方はそういう短編が次から次へと畳み掛けるように続いて行くので読んでいて何度かめげそうになった。

「はりねずみ」は主人公が幼い子どもなため、一見無邪気な物語に見えるのだがやはりそこにも暴力、絶望の陰がちらつく。

同時に読んでいた「アラブ、祈りとしての文学」よりは、フィクションだったためまだ続けて読むことができたが、しかし正直絶望しか感じられない世界でいったいどう生きていけばいいのだろう、という気持ちになった。
自国ではどのように読まれているのかが気になる。