りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭4月下席夜の部

4/23(月)末廣亭4月下席夜の部に行ってきた。

・一之輔「寄合酒」
・正楽 紙切り
・小ゑん「下町せんべい」
・小燕枝「禁酒番屋
~仲入り~
・駒次「生徒の作文」
ホンキートンク 漫才
志ん五「出目金」
・小せん「浪曲社長」
仙三郎社中 太神楽
・天どん「時をかけるおっさん」


一之輔師匠「寄合酒」
今セクハラが問題になっているけど楽屋なんかセクハラだらけ。
女性の噺家が増えて、以前は上から踏みつぶしたような女性しかいなかったけど、最近はタレントでもやっていけるんじゃないか、みたいなきれいな子も入るようになった。
楽屋ではおじいちゃんの師匠がそういう子に「おっぱい触らせて」と普通に言ってる。
これ、昼間ですから。酒飲んだりしてないですよ。お茶飲みながら素面で言ってるんですよ。
で、言われた方の子も噺家になろうなんていう子だから堂々としたもんで「いいですよ。どうぞ。」と答えたりする。
すると言われた師匠は「あ…今はよしとくわ…」。
楽屋にいるのは、今話題の新潟知事と福田財務次官を足して8で割ったぐらいの連中なんで、「さわっていい」と言われたりすると、てんで意気地がない。
で、高座を終えて帰る時、さっきの女の子に向かって「迷惑かけて悪かったな。これ取っておいて」と千円渡したりしてる。
何も触ってないのに千円渡してこれはいったいなんなんだ。

…ぶわははは。
噺家さんはみんな言うよね。セクハラなんてことを楽屋で言い出したら大変だ、って。
この間もとある噺家さんが「偉くなったらセクハラできる!と思ってそれが仕事のモチベーションになってるのに」ってまくらで言って、お客さんドン引きでしーん…となったことがあったけど。
さすが一之輔師匠。ひかせることなく、ちゃんと笑いに変えるほどのよさ。

そんなまくらから「寄合酒」。
スピードがあるから、うだうだっとしないんだよなぁ。
そして大きくは変えてないんだけど、繰り返しが続いて少し飽きてきたころに、ぐわっと笑いどころを作ってる。
乾物屋から数の子を持ってきた男。風呂敷を数の子の上にふわっとかけて「キャベツくれ」「あなたなに言ってるんですかうちにはキャベツはないですよ」「え?じゃキャベツはどこにあるの?」「八百屋です」「じゃお前のところでは何を売ってるの?」「うちは乾物です」「え?キャベツないの?キャベツくれ」「ですから…」。
このやりとりの繰り返しですごくおかしい。
いやぁ、寄席の一之輔師匠、いいなぁ。


小ゑん師匠「下町せんべい」
わーい、小ゑん師匠。
いつものICレコーダーのまくらでいつも笑っちゃう。いいなぁ。
でも師匠はこうやってブログ書いたりするの嫌いだよね、って聞いててわかるから、ちょっとドキドキしちゃうんだな。

田原町に降り立った男が異様に感激している様子でわかる。「下町せんべい」だー!
江戸っ子に熱烈に憧れている男と、せんべい屋のいかにも江戸っ子な会話が楽しい。
特にせんべい屋のおやじが「いっつくんねぇ」とか「まっつぐ」とか言う口調がほんとにわざとらしくなくかっこいいので、キャーキャー言いたくなる気持ちもわかる。
そして「こんなに驚いたのは墓地で酔っ払って歌う川柳川柳を見たとき以来だ」とかいうクスグリが寄席好きにはたまらない!

下町せんべい屋の映画の構想から何から何まで最高だ。特にマニアックなクスグリがいいわー。
笑った笑った。


小燕枝師匠「禁酒番屋
番屋の侍に威厳があって、ちょっと今まで見たことがない感じ。
3人目の男が来た時、小便やと聞いて「何を申しておる。今回は見逃してやるから持ち帰れ」というのも初めて聞くセリフ。
ま、もしかすると、もうお酒はたくさん飲んで満足してたのかもしれないけど。

わりとこの噺って爆笑系にやるイメージがあるけどそんなことなくでもしっかり面白い禁酒番屋だった。


駒次さん「生徒の作文」
「ガールズトーク」以外の噺でうれしい!
まくら(電車で携帯のぞき見、学校寄席の感想文)も変えればいいのになぁ…。
志ん駒師匠には間に合わなかったけど、すごく素敵な師匠だったみたいだから、もっと師匠の思い出話を聞きたいな。
昨日は初めて聞く話(4メートルぐらいの高さがある木の上の方の枝を切れ、と普通の植木用のはさみを渡された)があって面白かったから。もっと聞きたいな。

作文が駒次さんらしく鉄道マニアなのがおかしい。
特に駅名を都都逸風に詠みこんだ文が秀逸だったなぁ。
安定の面白さ。もっと寄席でもいろんな噺をしてほしいな。


小せん師匠「浪曲社長」
志ん五師匠と天どん師匠の間に挟まれて私は…とてもやる気がでます」と笑わせる。
「今日はちょっとご勘弁願って」と言って始まったのが、え?新作?小せん師匠が?

今よりもう少しのんびりした時代、ゴルフが流行ったときがあったそうです。
今もゴルフやる方はいますけど、そのころはサラリーマンもゴルフができないと商談がすすまない、なんてことがあったそうで…いい時代だったんですな。

社長が中堅社員を呼んで、「君もゴルフぐらいできないと」と言ってスウィングの練習。
確かに昔はこういう光景、よくドラマなんかで目にしたなー。
今はもう世知辛くなっちゃってこんなことしてると白い目で見られそうだな。
そこへやってきたのが課長。新入社員を連れてきたので会ってくれないかと。
社長はちょうど暇だったから会ってやろう。そんなに人数もいないだろうから一人ずつ会って話したい。一人ずつ呼んでくれたまえ、と。

それで新入社員が一人ずつ入ってくるんだけど、異様に緊張して何言ってるかわからないやつ、ものすごく失礼なやつ、とまともな者がいない。
ようやくまともそうなのが来たかと思ったらこれが浪曲をうなりだし…。

…なにかとっても昭和テイストの漂う噺で、小せん師匠がこういう噺を?と驚きながらも、確かにとても合ってる~。楽しい~。
後から調べたら円歌師匠の新作でこの日は円歌師匠の命日!
くーーー。たまらん。


天どん師匠「時をかけるおっさん」
この日はかなりたくさんお客さんが入っていたんだけど「これ…知って入ってきたの?それとも知らずに入ってきた?」。

だいたいね、「三遊亭天どん」なんていうどこをどう見ても怪しい名前がどーんと表に貼ってあって、それで入ってきちゃったのは危機管理能力なさすぎですよ。自己責任ですよ。
楽しく笑っていられたのは小せん師匠までで終わりですよ。
ここからは違いますから。もういいでしょ、もととったでしょ。
私は今日は楽屋にいるときから、攻めるんだ、負けないという気持ちで出てきてますから。

…ぶわはははは。なにその覚悟?もうまくらだけですごいおかしいんだけど。
はっ。でもこれはもしかして笑いどころの一切ないドロドロした人情噺をやるつもり?
いやでも天どん師匠の場合、古典だとあんまりそういう余計なことは言わないでやることが多いような。

と思っていると、「あの映画見ましたか。ひどい映画でしたね。君の名は」。
「男女が入れ替わってタイムスリップしてまた出会えて…なんでもかんでも入れりゃいいってもんじゃないだろ。って言いながらわたしも作りましたよ、そういう噺」。

「あーーーいってー。なんだー。頭いてぇー。えええ?何があった?あ、そうだ。今おれネットニュース見て、大好きな〇〇ちゃんが結婚ってニュース読んでショック受けてひっくり返っちゃって…それで気を失ってたんだ」と男。
で、この男が実はこのひっくり返ったときに1週間前にタイムスリップしていた、と。
「一週間って…びみょーーー!」…ぶわはははは。

この40歳を過ぎたキモオタ(と本人が)が、タイムスリップしたことを利用して、 お気に入りのアイドルのコンサート(といっても大型スーパーの〇〇ショーみたいなやつ)に行って、彼女を救って自分が結婚相手になろう!とする、という噺。
セリフをあれこれ言いながら天どん師匠が自分で突っ込むのがまたおかしくて、もう笑い遠し。
いやぁーーー面白かった!笑った笑った。