りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

昏い水 (新潮クレスト・ブックス)

 

昏い水 (新潮クレスト・ブックス)

昏い水 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★★

『碾臼』から半世紀、八十を前にした大家が描く英国の枯れない老人たち。知的で辛辣、自由を重んじ、七十代の いまも仕事のため遠方まで車を走らせるフランチェスカ、病床にあるどこか憎めない元夫、高級老人ホームで悠々自適の女友だち、恋人を突然亡くした息子が身を寄せるカナリア諸島のゲイの老カップル……。いかにも英国的なユーモアをちりばめながら、人生の終盤を生きる人々を描く長篇小説。

自分の老化を「まだ大丈夫」「いやそろそろヤバイかも?」と冷静にはかりながらも、働くこと移動すること動き続けることをやめない主人公フラン。
元夫には「落ち着くことを病的に恐れている女」と評されるが、実にあっぱれ。プライドが高くてひねくれてて、でもとても知的でパワフルなフランは作者ドラブル自身を投影しているように思える。

あっけなく老人向け施設に入った親友、老人になってから再会した幼馴染み、カナリア諸島に移住したゲイカップル。様々な視点から老いること、生きること、そして死ぬことが語られる。

こんなにリアルで、それなのに楽しい老人小説は初めて。

散りばめられたユーモアにふふっと笑い、なんかそれわかる…と苦い気持ちになり、それでも最後までこうやって生きていくのだ!とちからをもらう。面白かった~。

ドラブルは学生時代に「碾臼」を読みかけて挫折して以来苦手意識があったのだが、とても面白かったので他の作品も読んでみようと思った。