りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

連雀亭日替わり夜席

4/9(月)、連雀亭日替わり夜席に行ってきた。

・美るく「狸札」
・さん光「浮世床(本)」
・喜太郎「みち子17歳」
・小はぜ「高砂や」


美るくさん「狸札」
わ、久しぶりだ。美るくさん。
ニツ目さんって寄席にはそんなに出ないから意識的に見てないとほんとに全然見られないんだな。そのかわり今は連雀亭もあるし会も多いから意識的に追いかけようと思うとかなり見られるのもニツ目さんだったりする。
久しぶりに見て、口調もよくなっていて表情も豊かになっていたのでびっくり!うまくなってる。でも落語っていうよりちょっとお芝居っぽい感じ?

さん光さん「浮世床(本)」
私の趣味はオシャレです、とさん光さん。
確かにさん光さんがオシャレってことは私も以前から知っていて、なんで知ったんだっけ?かわら版のインタビュー記事?ほかの噺家さんのまくら?

なぜ私の趣味がオシャレになったかといいますと…。
私、前座のころとにかくしくじりが多くて師匠には常に小言を言われていました。顔を見れば小言…それも30分ぐらい言われ続けて、私もう師匠と話せなくなっちゃいまして。
師匠もほんとに私に苛立って…ある時ブチ切れたんです。「お前はいったいどういうヤツなんだ!ほかの弟子はこういうやつだっていうのがわかるけどお前のことは全然わからない!お前はいったい何が好きなんだ?!」
私そう言われて頭が真っ白になって思わず言ったんです。「師匠私はオシャレが好きです」。
そうしたら師匠もまさかそんな返事が返ってくるとは思わなかったんでしょう。「え?あ、そうか…。が、がんばりなさい」。
このやりとりを見ていた兄弟子たちがすごいウケてあっちこっちで広めたもんだから、それ以来私の趣味は「オシャレ」になったんです。

…ぶわはははは!そういうことだったのか。
なるほど聞いてみなくちゃわからない。面白いなぁ。なんかさん光さんって…たくまない面白さがにじみ出てる。

前座のころ、一番しくじったのが打ち上げです。とにかく打ち上げに出たら必ず師匠にブチ切れられてました。
打ち上げに出てお客様に「ここに座りなさいよ」なんて言われて素直に座って飲み食いしてたら師匠に「おい!おじさん!こっちに来い!」。
ブチ切れた師匠に「飲み食いさせるために呼んだんじゃない!働け!」って言われて、ああ、そうか、もっともだな、と思いまして。そのあとは座らずに一生懸命働いたんですね。お客様の飲み物を注文したり料理を持ってきたり。
そうしたらまた師匠に「おい、おじさん!」って呼ばれて「お前、いつ食うんだ?!いい加減にしろ!」。

…ああ、理不尽…。これが落語家のよく言う理不尽かって思いました。

…ぶわはははは!もう最高におかしいんだけど。
そうそう、さん光さんって前座のころ「柳家おじさん」だったんだよね。
だからフツウに呼ばれただけなんだけど「おい、おじさん!」ってそれだけでおかしい!!師匠がすごい怒っていたにしても和むわ~。
しかもそういう話をいかにも面白いでしょ!どや!って感じじゃなく、困ったような顔して淡々と話すからそれもまたおかしくておかしくて。

そんなまくらから「浮世床(本)」。
本を読むげんちゃんがすごくかわいい。みんなに声を掛けられる前、かっこつけて読むふりをしていたわけじゃなく、読めるようになって嬉しくてよくわからないながらに読んでたんだな、っていう感じが伝わってくる。
読んで!と言われて、え?読まないよ!と言うんだけど、「だったらもう付き合わねぇ」と言われて、え?それは困る…となって、あれこれ言い訳するおかしさ。
たどたどしい読み方もおかしいんだけど、聞いてるほうが「それってひょっとして〇〇じゃねぇの?」というとげんちゃん「お前すごいな、読まずにわかるなんて!」。
あれこれツッこまれたげんちゃんが「それは…ここに注釈が書いてある。〇〇〇って意味」というと、友達が「お前、本から目を離すと流ちょうになるな」にも笑う。

楽しかったー。
そして時々思わぬところでふっと権太楼師匠っぽいところが出てくるところにどきっとする。
なんかいいぞー。さん光さん。すごい笑った。


喜太郎さん「みち子17歳」
初めて見る噺家さん。
客席を見回して「いいですねぇ~」。
ワンコイン寄席は年配のお客さんが多い。全員がお年寄りっていうこともある。
きゃたぴら寄席は若い人…それもイケメン落語家目当てのきゃぴきゃぴした若い女性が集まることも…ってここもメンバーが新しくなってイケメン落語家はほとんどいなくなっちゃいましたけど。
だいたいイケメン落語家っていっても、落語家っていうのが本来不細工が多いですから、そこで相対的に見てイケメンっていうだけのことで…例えばジャニーズなんかに行ったら全然通用しないですから。
だからイケメン落語家っていわれる人たちは私たちのような者がいるからこそのイケメンで…我々のおかげでイケメンを名乗れるわけで。さっきのさん光さんなんかもうそいつらからお金を払ってもらってもいいぐらいで。

…ぶわははは。おっしゃりたいことはよーくわかります。
イケメン落語家言うけどたいしてイケメンじゃないよね。
そしてイケメンって、そもそも落語家にとって誉め言葉じゃない気がするんだよな。
イケメンに女性ファンっていうのは短絡的って気がするんだよなー。私がそもそも面食いじゃないからなのかもしれないけど。

そして夜のお客さん。いいですねぇ。ひねくれたおじさんしかいない。このどよんとした空気。その中に女性は一人だけ。いいです。こういう感じ。一番好きです。
普段はほとんど新作なんですけど、さすがにご年配の方ばかりだとかける勇気がでない。
その点今日は…好きなようにやっちゃおうかな。
ちょっとHな古典とちょっとHな新作…どっちがいいですか。大丈夫ですか。

…大丈夫ですかって私に聞いてますね?!
大丈夫!と答えると「あーーよかったー」。
…って。「大丈夫じゃない」とは答えられないよ、この感じで!
いや大丈夫だけど。でも程度問題だけど。(ブラック師匠は苦手)

ラジオ番組の収録に呼ばれた女子高生。
DJがいかにもちゃらくていやらしい感じ。
それにこたえる女子高生みち子ちゃんもなんかかわいらしさがちょっといやらしい。(先入観?)
どうやらみち子ちゃんは落研で、最近の落語ブームに絡めて落研に入ってる女子高生に話を聞こうという企画らしい。

「じゃせっかくだからお蕎麦食べるしぐさやって」と言われたみち子ちゃん。
「ええ?あたし下手なんですけどぉ。あーでもわかりました。じゃやります。ええとこうやって手で持って…ずずずずずっ!」
「うーんよかったよーばっちりー。じゃデータできたら送るから」

場面が変わって自宅。
PCで送られてきたデータを聞いていたみち子ちゃんが「なんか音声が途切れ途切れになってるぅー」と言って家を飛び出して行く。
同じ部屋にいた父親が「なんだなんだ、PCの電源も落とさないで」といってみち子ちゃんが今まで聞いていたその音源を聞いて、音声が途切れ途切れということもあって、Hな方へHな方へ誤解していく…。

なんか前置きでびびったけどそうでもなくてほっとした~。
喜太郎さん、面白かった。
新作をやるアクの強い噺家さんの中にはものすごーーく苦手な人もいるのでちょっとドキドキだったけど大丈夫だった(笑)。


小はぜさん「高砂や」
おおお、小はぜさんがトリ!

挨拶を返してもらうのが好き、という小はぜさん。
近所の人とか犬を連れて散歩してる人とか通学中の小学生とか、なんなら知らない人にも挨拶したいくらい。
でも花粉症でマスクをしていることもあって、怪しく思われがち。
だけど挨拶したい。挨拶を返されたい。
師匠のお宅に伺ったりすると、ヤクルトレディさんたちと会うことがある。あの方たちは全く面識のない私にも笑顔で「おはようございます」とあいさつをしてくれる。
とても気持ちがよくて嬉しくて、もし結婚するならヤクルトレディさんっていいなぁ…と思って、この間それを協会の事務所で話したら「でもああいう人たちってたいてい人妻ですよ」と言われた。
…そうなんですか…。

…ぶわははは。ヤクルトレディさんと結婚したいって小はぜさん…。どこまでも地味なシュミに笑ってしまう。
でも案外そんなこと言ってて、実際はきれいなモデルさんと結婚したりしてね。そしたら少なからずショックをうけるんだろうな、私。ぷぷぷ。

そんなまくらから「高砂や」。
これも案外難しい噺だよなぁ。そしてそういう噺が好きだよなぁ、小はぜさん。

都都逸浪曲をうなるところが前に効いた時よりもたっぷりでしかもすごくうまくなってるのがやけにおかしい。
確かにくまさん都都逸うまいから隠居の謡いにああだこうだと文句をつけたくなるんだね。
腹に力を入れてと言われて思いのほか低い声になる小はぜさんにも大笑い。前はこんなじゃなかったよね(笑)。
豆腐屋の真似もすごく雰囲気があるから何度もやりたくなる気持ち、わかる。

本番で「親戚一同不調法ゆえ…」というの、それだけこの婚礼が固い雰囲気なんだな、というのが伝わってきておかしかった。

あーそれにしても連雀亭の夜席はほんとにお得。復活してくれてよかった!