りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

父の詫び状

 

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

 

 ★★★★★

 宴会帰りの父の赤い顔、母に威張り散らす父の高声、朝の食卓で父が広げた新聞…だれの胸の中にもある父のいる懐かしい家庭の息遣いをユーモアを交じえて見事に描き出し、“真打ち”と絶賛されたエッセイの最高傑作。また、生活人の昭和史としても評価が高い。航空機事故で急逝した著者の第一エッセイ集。

向田邦子の作るドラマと同じ空気が流れていてたまらない気持ちになった。

厳格で理不尽な父親。家族の中で圧倒的に威張っているけれど決して強いわけではなくそうあろうとして…そうありたいと思ってそうしている。それを今の視点からパワハラだなんだというのは野暮。
理不尽でも納得いかなくても、秘められたコンプレックスや狡さに気付いても、愛を受けたことは揺るぎなく恨みもない。なんか羨ましい。

時代の空気から逃れることはできないし、それが幸福だったか不幸だったかを断じても意味はなくて、結局その中でどれだけ自由に生きられるか、幸せを見いだせるかが大切なのかもしれない。

文章が良くてユーモアに溢れていてその時代の風景や空気を見事に表現していて、ほんとに素晴らしい。
肩肘張ってないけど読んでいて背筋がぴんと伸びてくる感じ。

向田作品は学生の頃、ほぼ全部読んだつもりでいたのだが、今見直してみると読んでない作品もたくさん。これから時間をかけて全部読みたい。