これから泳ぎにいきませんか: 穂村弘の書評集
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ミステリ、SF、純文学から歌集、詩集、絵本まで、読売・朝日新聞の書評委員をつとめた穂村弘がときめきを感じた本の数々を紹介。
「人間は言葉の介在無しに世界そのものを直に生きることはできない」。
いきなり前書きでハートをわしづかみにされた。
本を読むことで頭が良くなるとは全然思わないのだけれど、でも本を読むことで鍛えられる何かはあると漠然と感じていて、だから例えば自分の未来を託さなければならないような人(たとえば政治家とか)は本を読む人でなかったら嫌だな、怖いな、と思う。
どんなに頭がよかったとしても、言葉をきちんと使えない人、想像力のない人がトップに立つような世界は怖い。それを的確に言葉で表された気がする。
書評集なので基本的には本の紹介なのだが、短くやさしい言葉で本質を表現されていて、どれも読んでみたくなる。
なぜ短歌や俳句が苦手なんだろう、と思っていたところにこの文章。
学校や会社で普通に使われる散文は「社会」と繋がっている。それに対して、詩歌の言葉は「世界」と繋がっているのだ。私たちは物心ついた時から「社会」的にきちんとチューニングを合わせることを要求されて、幼稚園や学校や会社で長年訓練を受けてくる。
(中略)しかし一方で、その訓練の結果、私たちは子供の頃もっていたような「世界」を直接味わう感覚を衰弱させてしまう。
(中略)
詩歌を読むことは「世界」に触れて命を甦らせる快楽を味わうこと。
こんな文章を読むと今まで苦手と思っていた詩や短歌を読みたい、読めるようになりたい、という気持ちにさせられる。
予期せぬところでぐっとくる言葉が出てくるのでどきっとする。そして不思議と励まされる。ほむほむ恐るべし。