りつこの読書と落語メモ

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さん助燕弥二人會

3/17(土)、お江戸日本橋亭で行われた「さん助燕弥二人會」に行ってきた。

 

・門朗「黄金の大黒」
・燕弥「普段の袴」
・さん助「駒長」
~仲入り~
・さん助「人形買い」
・燕弥「花見の仇討」


門朗さん「黄金の大黒」
ギャグ満載の笑いどころたっぷりな「黄金の大黒」。あとから燕弥師匠が「兼好師匠に教わったってすぐにわかった」と。
なるほどー。
それにしてもたいしたもんだな。なかなか達者な前座さん。


燕弥師匠「普段の袴」
さん助師匠がネタ出ししている「駒長」について、実は自分は学生時代落研の時に二度ほどやったことがある。何をおもってか。
当時、とにかく落語だけが楽しみで落研の部室に行っては昔のテープを聞いたりしていた。その時に2回ほどやったんだけど、もう二度とやらないと思います。
笑いどころは少ないし…学生の時にやった噺はもうやらないと決めている、と。

で、さん助師匠はこれを龍玉師匠に教わったらしいんだけど、だいたい稽古って落語協会の二階とか狭いところで二人っきりでやる。あの二人がこの噺を稽古しているところを想像すると、どう見ても脱獄の相談をしてる受刑者にしか見えないから、それがもうおかしくておかしくて。

…ぶわはははは。たしかに。
ネタ出しを見た時は、さん助師匠が「駒長」?ってなんかピンとこなかったんだけど、燕弥師匠の話を聞いていたらちょっと楽しみになってきた。燕弥師匠ってやさしいなぁ…。

そんなまくらから「普段の袴」。
お侍と道具屋の主人の会話が品があって威厳があって…それを見ていた男と大家さんの会話のざっかけなさとの対比が楽しい。
なんかうきうきと弾むような高座でとても楽しかった!
やっぱり燕弥師匠にはお侍さんが似合うなぁ。


さん助師匠「駒長」
まくらなしで「駒長」。
貧乏で借金取りが来るのに金が払えない夫婦。
女房が旦那にどうにかしてくれと頼むが旦那は「ねぇものはねぇんだからしょうがねぇじゃねぇか」と言う。
借金取りの中でもどうしても断れないのは丈八さんだよ、と女房。
損料物を借りておいてそれは質に出してしまったのだから弁解のしようがない、と。

それを聞いて旦那が「丈八についてはいい考えがある」。
丈八は来るたびに俺と話しながらお前の姿をじーっと見ている。お前に惚れてるに違いない。だから一芝居打って借金を踏み倒した上に身ぐるみはがして追い出してやろう。
女房が丈八に惚れているから二人で会いたいという手紙を書き、それを旦那が拾ったということにして、丈八がやってくる頃を見計らって夫婦喧嘩の芝居をする。丈八が「何をしてる」と飛んでくるだろうから、そこで「お前、俺の女房に間男しやがって」と逆にぼこぼこにする。
何を証拠にそんなことをと言われたら先ほどの手紙を見せる。
そしてこの女房と一緒になるについちゃ親分に間に入ってもらったから親分のところに行ってくると言って家を飛び出す。
二人きりになった時、女房が丈八に「前から好きだった」と告げれば丈八もその気になるはずだから、そこへ戻ってきて包丁で脅して身ぐるみはいでやる、と。

「早速芝居の稽古をしよう」と旦那。
嫌がる女房に「芝居がうまくなきゃ話にならない」と夫婦喧嘩の稽古。
旦那が女房に怒鳴って平手で打ち女房は「痛い!何をするんだい?!」と驚くのだが「これぐらいしなきゃ本当に見えない」。
女房が一声発するとそれがものすごい棒読みで「お前…下手にもほどがあるだろう!」に大笑い。
「ここでおれがピカピカ光る包丁を取り出して…」と言うと女房が「うちの包丁はさびてて光ってないよ」「じゃ口でピカピカ言うから…あとは頭のピカピカを使って」にも爆笑。
「ここで包丁を突き刺して」と言うと女房が「うちの包丁欠けてるから突き刺さらないよ」「じゃ畳目にぐりぐりと入れ込むから」。

そのあと、足音が聞こえてきた!丈八だ!と何度も芝居を繰り返しては、全然関係のない人が入ってきたり通り過ぎていくのがおかしいおかしい。

…まさか「駒長」で笑えるところがあるのにも驚いたけど、さん助師匠の旦那がいかにもやくざものというか、何をしでかすかわからないような…今は芝居だけど女房を殴る日も遠くはないような…そんな雰囲気を醸し出しているのにも驚いた。

そして丈八が登場するのだが、丈八を脅して旦那が出て行ったあと、台本通りに女房が「前からお慕い申していました」と言うと、「ほんまか?」と喜ぶ丈八。「あんたみたいないい女と一緒になれたら…わてだったらあんさんにそんな汚い着物を着せたりはしません。上等な着物を着せて生涯大事にする」。
それを聞いて本当に泣きだした女房。
二人で手に手をとって上方へ逃げようということになるのだが、女房が「あんな旦那でも長年連れ添った人だから置手紙を残しておきたい」と言って手紙を書く。

何もしらない旦那は友達の家で飲んだくれ明け方になって慌てて家に戻ると二人の姿はなく置手紙。
この手紙の内容もすごくばかばかしくて大笑い。

ここまでの間に笑いどころもたくさんあったのでサゲもぴったり!

…いやぁ驚いたーー。
芝居とはいえ女房を殴る場面もあるし、そんなに楽しい噺じゃないのに、最初から最後までとても面白くて、だけどなんかこの旦那のだらしなさやダメ男なところも出ているから、女房がほんとに丈八の言葉にほろりときてしまうのも無理はないと思えるし、まさか「駒長」がこんなに面白くて、そしてさん助師匠にぴったり合ってるとは思ってもいなかった。
さん助師匠って噺を再構築する力があるんだよな。だから噺のイメージがガラッと変わってびっくりすることがある。
この噺は素直にやればいいのに…と思うこともあるけど(おい!)、こんな風に嘘みたいに魅力的になることもあるから目が離せないんだよなぁ…。すごかった。


さん助師匠「人形買い」
「もう私ふらふらです」とさん助師匠。
「あれは龍玉兄貴に教わったんですが…あの方は圓朝物や殺人ものを通しでやったりしているので、二人で向かい合って稽古をしてると…ほんとに眼光が鋭くて女房を殴るしぐさでは本当に殴ってるみたいで…もう自分が殴られているような感覚になりまして…。このサゲの後も追いかけて行ってそこから因縁噺が始まるんじゃないかという雰囲気もあって。そして稽古の時は笑ってはいけないという不文律があるんですけど、私なんか途中ですごく笑いそうになってきてしまいまして…笑う場面じゃないのになんか妙におかしくて…」。

…ぶわはははは。燕弥師匠が言ってた通り、その絵を想像するともうそれだけでおかしい~。

へとへと…と言いながら「人形買い」を通しで。
昼間小はぜさんで聞いてるからなんと一日二「人形買い」。めったに聴く噺じゃないのに凄いな、それも。

この間ドッポで聞いた時よりぐっと面白くなっていた。講釈師、易者、神道者とカラーがくっきりしていて、そのやりとりがコンパクトになっていていたからかな。
なんか相変わらず鼻水出てるし体調はいまいちそうだったけど、さん助師匠らしい高座が見られて満足。


燕弥師匠「花見の仇討」
「そりゃあれだけやれば疲れるでしょうよ」と燕弥師匠。「あんなに(殴る芝居のところ)何度もやることないんですよ。全力ですから。帰ってきた時、湯気が出てましたから」。
私はあっさりと、と言いながら「花見の仇討」。

二席続けて変な噺(笑)を聞いたあとだから、「花見の仇討」が逆にとっても新鮮(笑)。
やっぱりよくやられる噺っていうのは分かりやすくて面白いなぁ。
でも私はかなりすれちゃったから珍品を聞きたくなるんだなぁ。

この二人のバランスが絶妙でほんとにいい会!楽しかった~。