りつこの読書と落語メモ

はてなダイアリーからブログに移行しました。

図書館島

 

図書館島 (海外文学セレクション)

図書館島 (海外文学セレクション)

 

 ★★★★★

文字を持たぬ辺境の島に生まれ、異国の師の導きで書物に耽溺して育った青年は、長じて憧れの帝都に旅立つ。だが航海中、不治の病の娘と出会ったがために、彼の運命は一変する。世界じゅうの書物を収めた王立図書館のある島で幽閉された彼は、書き記された“文字”を奉じる人々と語り伝える“声”を信じる人々の戦いに巻き込まれてゆく…。デビュー長篇にして世界幻想文学大賞・英国幻想文学大賞など四冠制覇、書物と物語をめぐる傑作本格ファンタジイ。 

とても面白かった!

文字を持たない島で暴君のような父親に怯えながら暮らしていた少年・ジェヴィック。父親がきまぐれでつけた家庭教師・オロンドリア帝国から来たルンレ先生から字を教わり、むさぼるようにして先生が所蔵している本を読み、この辺境の島を出てオロンドリア帝国へ行くことを夢見る。
父親が急死してオロンドリア帝国へ行けることになったジェヴィックは、その船の中で一人の少女ジサヴェトに出会う。キトナという不治の病にかかっているジサヴェトはすでに死にかけていたがその攻撃的な性格と歯に衣着せぬ物言いにたじたじとなりながらも、本の素晴らしさを語るジェヴィック。この会話がその後彼をとんでもない運命に導いていくことも知らず…。

憧れの帝都で初めて入った本屋でこんなにもたくさんの本が…そこから広がる世界があることに喜びをおさえきれないジェヴィック。その高揚感をさらに高める島の祭り。
狂乱の中ジェヴィックはジサヴェトの幽霊(天使)と出会い、彼女が死んだこと、そしてその魂がまだそこにあることを知る。天使は彼に自分の物語を「ヴァロン」(本)に書いてくれと迫り、恐ろしさのあまり毎晩のようにうなされるジェヴィック。
ジェヴィックが天使と会話をしていることが知られるようになると彼は捕えられ、オロンドリア帝国の宗教戦争に巻き込まれていく…。

なんの説明もされずに出てくる、この世界独特の用語(ヴァロン、ジュート、アヴネアニーなど)に戸惑いながらも、この物語の中で様々な語り手によって語られる物語がとても面白くて強烈なので、その中に巻き込まれていき…特にクライマックスで語られる物語は魅力に溢れていて素晴らしかった。
物語ること、それを書きとめてヴァロン(本)として残しておくことの素晴らしさ…。悲惨としかいいようがないジサヴェトの運命も、ジェヴィックがその言葉を書き残すことによってようやく意味をなし、光り輝きだす。

タイトルから想像していた世界とは全く違っていたのだが、作りこまれた異世界、物語の世界に身を委ねてぐにゃぐにゃにされる楽しさを堪能した。素晴らしかった。