つぼみ
★★★★★
『スコーレNo.4』の女たちはひたむきに花と向き合う。凛として、たおやかに、6つのこれからの物語。宮下奈都11年の軌跡。
なんとなく過ごす日々に紛ぎれていく小さな種が実は扉を開けるきっかけになる。見過ごしていた相手のきらりと光る部分を見つける手がかりになる。宮下さんはそういう宝物ような一瞬を切り取るのがとても上手だと思う。
「手を挙げて」
主人公の恋人のなんとなくぼんやりした輪郭…育ちが良くて主張が薄くて母親の言いなり?が、後半になってくっきりと見えてくるところに温かい気持ちになる。
自分が一方的なイメージで見られることには敏感なくせに、案外自分も人を一方的なイメージで見てしまっていることがある。主人公がそのことに気付けて良かった、と思う。
「まだまだ、」
屈託のない太陽のような紗栄がまぶしく、またこれから大きく成長していくことを予感させるラストが清々しい。
小さな悪意に触れて自分の暗い部分が勝りそうになった時、自分の大事にしていること、大事にしてる人の声に耳を傾けること。胸に刻んでおこうと思う。