りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

池袋演芸場正月二之席昼の部

1/13(土)、池袋演芸場正月二之席昼の部に行ってきた。
最近の寄席ブームと小三治師匠トリの土曜日なので混むだろうとは予測していたけど、10時45分頃に行ってすでに70人ぐらい?並んでいたのには驚いた。
1時間強並んでいたけど、最初はそうでもなかったのにどんどん冷えてきて、入場券を買ってようやく入れる!と思ったらまだ開場じゃなくその後15分ほど待たされたのがつらかった…。
それでもどうにか座れてよかったけど、最初から最後まで立ち見だった人はほんとにきつかっただろうなぁ。私だったら最初から立ち見とわかったら入らないなぁ。

・門朗「雑排」
・歌る多・美るく 寿松づくし
・小かじ「馬大家」
喬太郎 漫談(「北」)
・ひびきわたる 漫談
・さん助「徳ちゃん」
・さん八「替り目」
・一琴「勘定板」
・アサダ二世 マジック
・一之輔「浮世床(本)」
・市馬「厄払い」
文楽「権兵衛狸」
笑組 漫才
花緑時そば
~仲入り~
・左龍「宮戸川(上)」
・小里ん「碁泥」
・小袁治「初天神
・橘之助 浮世節
小三治粗忽長屋


小かじさん「馬大家」
満員の客席を見て「ドンキホーテみたいですね…。圧縮陳列」と言ったのがツボでしばらく笑いが止まらなかった。
「馬大家」、珍しい噺だしおめでたいからウケるしいいよね。さすが三三師匠のお弟子さんだけあってツボを心得てる。
好き嫌いは別にして「できる」印象。前座の頃はあんなにつまらなそうだったのに。わからないものだなぁ。


喬太郎 漫談
満員の客席に「もはやここまでくると…あんたたちの問題だからね!こっちのせいじゃないからね!と言いたくなりますね」。
昨年の一文字「北」から始まって、「北」の先代が特撮好きだったことや、今の「大将」を止めるには太鼓持ちしかない、など…ぽんぽん飛び出すギャグに客席は大盛り上がり。
さんざん盛り上げた後に「圓朝という名人がおりまして圓朝が言うには…」と言うので、え?これからなにを?と思ったら「お時間です」で下がって行った。わははは。


さん助師匠「徳ちゃん」
浅草の初席で奇跡のような出来事がありました、とさん助師匠。
小菊姉さんという三味線と歌の師匠がいらっしゃってとても色っぽくてきれいな方なんですが、その小菊姉さんが楽屋で私のことをじっと見つめながら…いえ、正確に言うと私の頭を見つめながら「今夜はスーパームーンかしら…」と一言。
私思わず「そうです!」と答えてました。胸キュンでした。

…ぶわははは!なんだそのエピソード。おかしいぞ!

「これからするお話は我々の楽屋の先輩方が経験した実話をもとにしております。いわゆるドキュメンタリーノベルです」。
そんな前置きから「徳ちゃん」。

道行く人に片っ端から声をかける若い衆。いかにも軽薄で安い店っぽい感じ。
声をかけられた噺家二人。安さにつられて「じゃ入ってみるか」。
お見立ての時に「そこの色白のきれいな…」と言うと、それは女じゃなく置物?です。女はその横にうずくまってる黒いやつ。「え?それ人間なの?」

通された部屋は汚くて落書きだらけ。
廊下は穴だらけで、「離れ」というのは隣の家との間に板を渡しただけ。
そこに通されて大喜びした客が落ちて血だらけになったとか…。

そして部屋にやってきた花魁が、無言で芋をもしゃもしゃ食べてる様子がさん助師匠にぴったり。すごく異様で笑ってしまう。

面白かった~。
もう少しテンポよく進んだらもっと笑いが起きる気がするなー。


さん八師匠「替り目」
この何十年もかけてようやくわかりましたが、私は酒が苦手です。
あれこれ試して、これなら飲めるか、こっちはどうだとやってきましたけど、残念なことに清酒がからだに合わないようです。実に残念。
8合も飲むと具合が悪くなるから間違いありません。

…ぶわははは!この師匠下戸なんだ?と本気で思って聞いてたからまんまとだまされた。

そんなまくらから「替り目」。
これがもうべらぼうに面白かった。
酔っぱらい方がとってもリアルだし、おかみさんに対して強気に出たりびっくりしてちょっと引こめたりの加減が絶妙で、大笑い。
えええ?この師匠、こんなに面白かったんだ。(←失礼)

一之輔師匠「浮世床(本)」
両脇にぎゅうぎゅうに立つお客さんに向かって「これもいい思い出になる!物事は前向きに考えよう。立ち見と聞いてそれでも入ってきたんでしょ?しょうがない。でもこれで座ってる人と同じ料金…!立ち見は覚悟してたけど、こんなだとは思わなかったでしょ?」。
そんな客いじりから「浮世床(本)」。
テッパンですね。もう客席がどっかんどっかんウケてすごい。さすがだよなぁ。


市馬師匠「厄払い」
もしかして小はぜさんの「厄払い」は市馬師匠から教わったのかな。違うかな。
こういう席で必ずおめでたい噺をしてくれる市馬師匠、好きだなぁ。


小里ん師匠「碁泥」
大真面目に池で碁を打ちましょうと意見するご隠居に笑ってしまう。
サゲが大好き。


橘之助師匠 浮世節
ああ、きれい。そして前のように三味線漫談じゃなく「浮世節」なんだね。
正直、三味線がそんなに上手とは思わないんだけど(すびばせん!)、でも心意気が素敵だし、華があって明るくて楽しくて最高。
踊りが本当に素敵だった。


小三治師匠「粗忽長屋
客席を見て「こんなに大勢いらしてくださってありがとうございます」と頭を下げる小三治師匠。
「立ち見…大変でしょう。前の方に座ってる方はずいぶん早くから並んでくださったんでしょう。本当にこんなに寒い中…ありがとうございます。なにもそこまでしてみるようなものじゃ…。俺が客だったら嫌だよ」。
「今日初めて寄席に来たという方も、初めて小三治の落語を見に来たという方もいらっしゃると思います。言っておきますけど、今日落語を聞けると思ったら大間違いですよ」。

…ぶわははは!
小三治師匠のこういう軽口を聞けるの、ほんとに嬉しい。
身体の調子は決してよくはないんだろうけど、元気なんだな、と思えるから。

この二之席の初日、車の免許を返納してきました、と小三治師匠。
私は腕自慢だった。免許も教習所に通わずに試験を受けてもらった。一発合格でそれが自慢。でもぜったい一発で受かりたかったから、いろんな教習所に行って車庫入れを練習したりして腕を磨いた。
その免許を返すっていうのはね…。

私は40から50歳までバイクに乗っていて、それはもう毎日乗ってたし、生きがいだったけど、それもリュウマチになってやめた。
免許を返した時は切なかった。もうこれで二度と乗れないのかと思って。

車もね…。でもほんとにあぶねぇから。
この間もありましたね。85歳の人が運転していて人をひいて…。話を聞くとみんな「覚えてない」って言うんですね。
もちろんショックで頭がかーっとなって覚えてないっていうのもあるだろうけど。年をとると、そういうことあるんですよ。
私も落語をやっていて自分でなにをやってるか分からなくなる時がある。
なんとなく体で覚えていてふわっとやっちゃうと、ふと「あれ?仕込みちゃんと言ったっけ?」って。
落語だからいいですけどね。これが運転となったら…。

免許を返したら自分の足がふっと軽くなった感じがした。
ああ、気楽になったな、って。
免許を更新すると係の人が「安全運転でお願いします」と新しい免許を渡してくれるけど、今回は違いました。
「どうぞ事故に遭わないようにお気をつけて」。
上手いこと言うよね。思わず笑っちゃった。そうかこれからは自分がひいちゃう心配はなくなったけど、自分がひかれる心配をしないといけないんだ、って。

そんなまくらから「粗忽長屋」。
大勢の小三治師匠目当てのお客さんの熱にこたえるように、テンション少し高めの「粗忽長屋」。
声は決して大きくないのにとても聞きやすいのは、まくらで言っていたように子音をきちんと発音してるからなんだな。
やっぱりすごいんだ、小三治師匠って。

大変だったけど頑張った甲斐があった。よかった。