りつこの読書と落語メモ

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2017年・年間ベスト

2107年に読んだ本95冊、行った落語が218回。
昨年が読んだ本が89冊、行った落語が213回だったから、少しだけ読書が復活した感じか。
落語はペース的には昨年よりもっと上がっていたんだけど、12月に体調崩して行けなかったので、かろうじてこの回数。
行き過ぎを実感していて、特に好きな噺家さんを追いかけすぎて「また同じ噺」とがっかりしたり、落語にすれちゃって新鮮な気持ちで聞けなくなっていたりするので、少し控えようと思いながらも、欲に勝てずこの回数。
今年はもう少し控えめに行こう。
そして本ももっと読みたい。

まずは海外から13冊。

1位:「堆塵館」「穢れの町」(エドワード・ケアリー) 

堆塵館 (アイアマンガー三部作1) (アイアマンガー三部作 1)

堆塵館 (アイアマンガー三部作1) (アイアマンガー三部作 1)

 
穢れの町 (アイアマンガー三部作2) (アイアマンガー三部作 2)

穢れの町 (アイアマンガー三部作2) (アイアマンガー三部作 2)

 

 
2017年はアイアマンガー三部作の一部と二部を読んだ。三部もすでに入手はしているので、近いうちに読む予定。
ケアリーは大好きな作家だけど、作品が出なくなって久しい。出版されていた本も絶版で寂しい限り。
でもそんなケアリーの渾身の作品がこうして翻訳されて出版されて、話題になって(大々的にではないにしても)嬉しい!
「堆塵館」が発売になった時は、三部作がどうか全部出版されますようにと祈っていたのだが、無事出版されてよかった。

ゴミで巨大な富を築いたアイアマンガー一族として生まれ「物」の声が聞こえるという才能を持っているものの、その才能ゆえに一族から疎まれているいじめられっ子の少年クロッド。
両親が「物」に変わってしまったため孤児になってしまった反骨心溢れるルーシー。
ルーシーがアイアマンガーの屋敷に召使として入り、偶然出会った二人が心を通わせ、それがこの一族の運命を狂わせることに…。

「誕生の品」がないと生命の危機を迎えてしまうアイアマンガー一族と、結集することで彼らに対抗しようとする元人間の「物」たちという図式は、「物」に強いこだわりのあるケアリーの真骨頂。
でもこの作品は少年少女に向けて書かれたせいか、エンタメ性が高くスピード感があって非常に読みやすい。

ケアリーの作り出した奇妙な世界に入り込み、そのヘンテコなルールに飲み込まれる幸せを満喫できる作品。
文句なしの1位。


2位:「神秘大通り」(ジョン・アーヴィング) 

神秘大通り (上)

神秘大通り (上)

 
神秘大通り (下)

神秘大通り (下)

 

 大好きなアーヴィングの新刊。好きな作家がこうして元気でいて次々新しい作品を発表してくれるというのは本当に幸せなことだ。
アーヴィングは「ガープの世界」の頃がピークと思っている人もいるようだけど、なんのなんの。作品には力があってまだまだ書きたいことがあふれ出てくるというのが読んでいるとわかる。たのもしい限り。

宗教をテーマにしているため、前半は読みにくくてなかなかページが進まなかったのだが、後半は加速をつけるように面白くなった。
アーヴィングの小説はいつも、大切な誰かを失うことは生きているなかで一番辛いことだけど人間はそのことをも乗り越えていける、そしていつか自分もそうやって死んでいくということを教えてくれる。
この作品もそうだった。

読んでいる最中に訳者である小竹由美子さんと角田光代さんのトークショーでこの作品に関する話を伺えたのもラッキーだった。
話ながら角田さんがじわっと涙があふれてきたのを見て胸がいっぱいになったのだった。


3位:「すべての見えない光」(アンソニー・ドーア

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

 

 2016年に出版された時から評判になっていたのできっと素晴らしいんだろうなと思いながら読みそびれていて、読んでみたらやっぱり素晴らしかった。ドーアは短編もいいけど長編もいいんだなぁ。
「堆塵館」にしてもそうだけど、出版された年に読んだら、twitter文学賞とか翻訳大賞とかにも出せるからいいんだろうけど、なかなか読むのが追い付かないんだよな…。

フランス人の盲目の少女とドイツ人の孤児。何の接点もない二人がラジオでつながる。
彼らのささやかな幸せが戦争によって壊されていく。彼らのひたむきさが戦争の残酷さをより際立たせ、読んでいてたまらない気持ちになる。
戦争をやりたがっている(ようにしか見えない)人たちは、この物語を読んでも何も感じないのだろうか。


4位:「死すべき定め――死にゆく人に何ができるか」(アトゥール・ガワンデ)

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

 

死は避けては通れない問題だけど、希望を持つことに慣れた私たちにとって死を宣告されることほど恐ろしいことはない。
自分の親が倒れた時、医者からどうしたら治るかではなくどう死なせてやりたいかともし言われたら、おそらく怒りを覚えると思う。
しかし治る望みがほぼないのに手術をすることや副作用に苦しむことに本当に意味があるのか。
どうやって死んでいきたいかということを考えるのは決して後ろ向きなことではないのかもしれない。

とても難しい問題に正面から取り組んで、自分なりの結論を出しているところが素晴らしい。必読の書だと思う。


5位:「人生の真実」(グレアム・ジョイス

人生の真実 (創元海外SF叢書)
 

世界幻想文学大賞受賞の作品らしいが、SFでも幻想文学でもなく、家族の物語に魔法の要素がちりばめられている、というところがとても好み。
戦争で破壊された町が復興し生まれ変わるように、さまざまな出来事で傷ついた心や人間関係も、家族で団結して修復させていく。
死さえも味方につけて生きる人たちのたくましさが描かれていて、とても素晴らしかった。


6位:「キャッツ・アイ」(マーガレット・アトウッド

キャッツ・アイ

キャッツ・アイ

  • 作者: マーガレットアトウッド,Margaret Atwood,松田雅子,松田寿一,柴田千秋
  • 出版社/メーカー: 開文社出版
  • 発売日: 2016/12
  • メディア: 単行本
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画家として成功したイレインという女性の半生が語られる。
少女時代をトロントで過ごしたイレインはそこでいじめに遭い、その傷が大人になった今も疼く。
一方いじめの主犯格であったコーデリアとは高校生になってからも関係は続き、ある時から二人の立場が逆転する。

アトウッドの自伝的要素もあったのではないかと思える、静かだけど凄みのある物語だった。


7位:「ある婦人の肖像」(ヘンリー・ジェイムズ

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

 
ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

 
ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

 

身もふたもない言い方をすれば、金持ちと結婚することが女性にとって一番の「勝ち」だった時代、頭でっかちで高慢で美人の女が数々の求婚を足蹴にしながら選んだ相手は…という話。
テーマに全く興味を惹かれないし、出てくる登場人物誰にも特に共感も好意も持てないのに、とても面白くて夢中になって読んだ。
時代背景や倫理観など明らかに異質に感じる部分もあるが、それでもなんというかとても生々しく人間が描かれていて躍動していてそこにたまらない魅力を感じる。これぞ文学という作品だった。


8位:「湖畔荘」(ケイト・モートン

湖畔荘 上

湖畔荘 上

 
湖畔荘〈下〉

湖畔荘〈下〉

 

 読んだときの自分のコンディションもあるのだろうが、ハマるときとそうでもないときとがあるケイト・モートン
今回はぴたっとはまって、読書の楽しさを堪能。
ミステリーとしての面白さもあるから、真相は?という興味でページをめくる手が止まらないし、描写や展開をじっくり楽しむこともできる。
やはりケイト・モートンにはずれはないのかも。


9位:「私たちが姉妹だったころ」(カレン・ジョイ・ファウラー

私たちが姉妹だったころ

私たちが姉妹だったころ

 

 内容的には驚きの連続なのだが、それが決して奇をてらったところがなく、不思議と静かな印象を残す。
結局のところこれは家族の物語で、一人の女性の成長の物語なのだと思った。
「真ん中から話す」という構成がとても効いていて、面白かった。


10位:「夜のサーカス」(エリン・モーゲンスターン)

夜のサーカス

夜のサーカス

 

サーカスの物語が好きだ。サーカスの華やかさともの悲しさ、胡散臭さ、人間臭さに心惹かれる。
この作品、未熟さが目につかないこともないのだが、登場人物が魅力的で生き生きしていて、魔法の力で成り立っている夜のサーカスの描写が素晴らしかった。
作者が舞台美術を勉強していたということもあってか、描写が丁寧でリアルで視覚的にも楽しめる。

この世界に浸っていられる時間が幸せだった。


11位:「丁庄の夢―中国エイズ村奇談」

丁庄の夢―中国エイズ村奇談

丁庄の夢―中国エイズ村奇談

 

凄まじい物語で、良く言えば生命力、悪く言えば人間の浅ましさがこれでもかこれでもかと描かれている。
実話をもとにした小説だが、たんなる「告発」ではなく、文学に昇華されているのがすごい。


12位:「四人の交差点」

四人の交差点 (新潮クレスト・ブックス)

四人の交差点 (新潮クレスト・ブックス)

 

フィンランドを舞台に、ある一家の100年をそれぞれの視点から描いた物語。
家族ってこんなに寂しいものだったっけと胸が痛んだけれど、フィンランドの風景や家の描写なども含めて楽しんだ。


13位:「結婚のアマチュア」(アン・タイラー

結婚のアマチュア (文春文庫)

結婚のアマチュア (文春文庫)

 

 大好きなアン・タイラー。大好きと言いながら、新刊が出なくなって久しいこともありずいぶん長いこと読んでいない。
ふだんあまり再読をしないのだけれど、少しずつ再読していこうとおもい、2017年「ブリージング・レッスン」「夢見た旅」「結婚のアマチュア」と読んだ。
この三冊、どれも甲乙つけがたくよかったのだけれど、特にぐっときたのがこの作品。
タイトルといい、驚きの展開といい、もうほんとにたまらない。
2018年も再読していこうと思う。

 

次は国内編。こちらは全10冊。


1位:「スウィングしなけりゃ意味がない」 

スウィングしなけりゃ意味がない

スウィングしなけりゃ意味がない

 

2017年、佐藤亜紀さんの作品はこちらと「吸血鬼」を読んで、両方ともとても面白かったのだが、余韻と言う意味ではこちらに軍配が上がる。

ナチス政権下のドイツで甘やかされたボンボンが自由な音楽のスウィングとユダヤ人の血を持つ友人と付き合ううちに、ナチスへの軽蔑と怒りを抱くようになっていく様は、読んでいて我がことのようにリアルに感じられた。
政治の裏をかきながらしたたかに生きる主人公だが、彼らとて無傷のままではいられず、彼らとて無傷のままではいられず、地獄を目の当たりにすることになるのだが、ボロボロになり果てても、それでも生き延びることに希望を見出す彼らがとても眩しく素敵だった。


2位:「デンジャラス」(桐野夏生

デンジャラス

デンジャラス

 

細雪のモデルとなった女たちと谷崎の物語。
どこまでが真実なのかはわからないけれど、その世界を壊さずに別の小説としての世界をつくりあげていて、素晴らしかった。

小説家の側にいてインスピレーションを与え描かれることの悦びと捨てられる哀しさ。したたかに生きる女たちが良かった。


3位:「僕が殺した人と僕を殺した人」(東山彰良

僕が殺した人と僕を殺した人

僕が殺した人と僕を殺した人

 

台湾を舞台に家庭に問題がある少年3人が友情を育み心を通わせそして悲劇へと向かっていく。
冒頭に「サックマン」と呼ばれる殺人鬼が逮捕されるシーンが出てくるのだが、この冒頭と少年3人の物語がどうつながっていくのか。
後半になって目線が入れ替わるところとこのタイトルが実に巧妙に効いていて、うぉーーーとなる。
少年たちの成長の物語でもありミステリーとしての面白さもたっぷり。面白かった。


4位:「忘却の河」

忘却の河 (新潮文庫)

忘却の河 (新潮文庫)

 

初めて読んだ福永作品。

父から始まって、二人の娘、母親、長女が淡い想いを寄せた男の独白が各章で語られる。
愛されたい満たされたいと思いながら自分の胸のうちを明かすことができず孤独に生きている人たち。
最終章が本当に素晴らしくて、宗教的なことはわからないけれど、大罪を犯した者でも最後はみな救われるのだと思った。すばらしかった。


5位:「草の花」(福永武彦

草の花 (新潮文庫)

草の花 (新潮文庫)

 

 同じ作家をベスト10の中に入れてしまうのも…という気もしたけれど、両方とも甲乙つけがたく素晴らしかったので。

いろいろな読み方ができる作品なのだろうと思う。
おそらく私も何年か後に読んだらまた今回とは全く別の感想を持つような気がする。

文章がとても美しくて何度も読み返したくなる。


6位:「今夜、すベてのバーで」(中島らも

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

 

らもさん自身の早すぎる死を知っているだけに、どこまでらもさん自身の体験なのだろうと思ったり、なんて破滅的な生き方なんだろうと思ったりしながら読んだ。
何かに依存せずにはいられない弱さと愛する人のために立ち直ろうと決意する優しさ。両方あるのが人間で、特にアルコールについては自分も決して他人事ではなく…。こわいこわい。
人間の弱さや脆さを見せつけられるが、どこか達観した明るさとユーモアがあってそこがとても好きだった。


7位:「森へ行きましょう」(川上弘美

森へ行きましょう

森へ行きましょう

 

最近わりと湿度高めの小説が多かった川上弘美さん、久しぶりにからっと乾いた小説で、私は乾いた川上さんの方が好みなのだなと思った。
どんな選択をしたとしてもそれが自分の人生だし、それがまぎれもない「自分」であることに変わりはない。
過去は変えられないけど未来は変えられる。
そんなメッセージを受け取った。


8位」「もう生まれたくない」(長嶋有

もう生まれたくない

もう生まれたくない

 

訃報小説。 
気楽だけど少し不穏な私たちの毎日は、忘れているけど死と隣り合わせだということを教えてくれる。
震災の後の世の中の変わり方に何かこうざわっとした不安を感じ続けているのだが、見事に表現されていると思った。

面白かった。と書きながら、面白がっていてほんとに大丈夫なんだろうか、という不安も。


9位:「その姿の消し方」(堀江敏幸

その姿の消し方

その姿の消し方

 

 初めて読んだ堀江作品。
私には理解できないんじゃないかと腰が引けてなかなか手を出せずにいたのだが、面白かった。

偶然見つけた絵葉書に書かれた詩の意味を長い年月をかけて読み解いていく。ゆらゆらと思索を漂うような小説で、文学ってこういうふうに人生を豊かにしてくれるんだ、と感じた。


10位「浮遊霊ブラジル」(津村記久子

浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル

 

津村さんは「これからお祈りにいきます」も良かったけど、この短編集がとても津村さんらしいと感じたのでこちらを。

どれもみなふわっとした物語なのに地に足がついてる感がある。
漂うように生きて死んだ後も漂う。そんな世界が楽しかった。