死体展覧会
★★★★
現実か、悪夢か。現実性と非現実性が交錯する14の物語。イラクにはびこる不条理な暴力を、亡命イラク人作家が冷徹かつ幻想的に描き出す。現代アラブ文学の新鋭が放つ鮮烈な短篇集。PEN翻訳文学賞、英国インディペンデント紙外国文学賞受賞。既刊2冊から14篇を選んでアメリカで出版された英訳版からの翻訳。
悪夢のような物語がつらなる短編集。
正義や信仰や善意ではなく暴力が制する世界。
テロが多発し次々人が死んでいく中で、ヤラれないために自らも暴力をふるう人、亡命したものの祖国の呪縛から逃れられず狂気に向かう人…。
表紙の女性のように嫌だ見たくない聞きたくないと目を背けてみても、読んでいる私たちも否応なくこの世界に巻き込まれていく。
こわい。こんな世界でどう希望を持ってどう正気を保って生きていけばいいのだろう。
10年前なら面白いと思って読めたかもしれないが、今は…。面白がれていたあの頃の自分は平和ボケだったのかもしれないなぁ…。