千の扉
★★★★
三十九歳の千歳は、親しいわけでもなかった一俊から「結婚しませんか?」と言われ、広大な都営団地の一室に移り住む。その部屋で四十年以上暮らしてきた一俊の祖父から人捜しを頼まれ、いるかどうかも定かでない人物を追うなかで、出会う人たち、そして、出会うことのなかった人たちの過去と人生が交錯していく…。
物語の断片を繋ぎあわせていく楽しさ。
いくつも並ぶ団地には全く同じ扉が並ぶ。間取りも家賃も同じでもそこにいる人たちは誰一人同じ人はいなくて、それぞれの事情がありそれぞれの人生がある。
淡々と語られるけれど、一人一人の人生は淡々となんかしていなくて、さまざまな感情に囚われて立ち止まることなく進んでいく。
いろいろなことがわかるほどに勝男が愛しくなったなぁ。面白かった!