りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

11/24(金)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。


・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十四回「三七日」
~仲入り~
・さん助「鼻ほしい」
・さん助「茗荷宿」
・さん助「いかけや」


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十四回「三七日」
いつものように立ち話から。
私はこの世界に入る前からベテランの師匠が好きで、入ってからもすごく好きなんです、とさん助師匠。
末廣亭の中席に入っていて、自分の後の出番に小はん師匠と栄枝師匠が交互で入っていた。
両師匠ともとても早めに楽屋入りされていて自分が行くとすでにいらっしゃっていた。
初日、火鉢の前に座っていると小はん師匠が話しかけてきた。「あなた…どこに住んでるの?」
ああ、私のことを何も知らないけど聞いてくださったんだなと思いながら答えると「ああ、そう」。
その後もそんなふうに少し話をできるようになってきたので、前から気になっていたことを聞いてみた。
というのは小はん師匠はいつも着物でいらっしゃるのだが、なんかとても変わった羽織を着ていて、それは合わせなのかなんなのかが気になっていたのだ。
すると小はん師匠「これはね…デニム」と。
ええ?と驚くと、おかみさんが着物を仕立てられるので、自分で生地を買ってきて作ってもらったのだと。本当は「若いやつらに負けないように」ダメージジーンズみたいにしたかったらしいのだがそれはおかみさんに止められた、と。

一方栄枝師匠にも「師匠は外国のロックにお詳しいんですか」と聞いてみたら「私はオリビアニュートンジョンと仲がいいのだ」と意外な答え。なんでもまだ彼女が有名じゃなかったころからのファンでファンクラブを作ったのは自分でコンサートの時は友達を50名ほど募ってペンライトを振ったのだ、とか。
話しはじめると止まらない栄枝師匠。
さん助師匠が自分の出番が近くなったので扉の方に移動すると、なんとそこまで付いてきてまだ喋っていた…。

…ぶわはははは。楽しい~!楽しすぎる~。
私もベテランの師匠方が大好きなので、そういうエピソードを聞けるのは本当にうれしい。
さん助師匠の見た目全然若く見えないから、そういう師匠方も違和感なくしゃべれるんじゃないか。ありがたや~。

そんな立ち話から「西海屋騒動」第十四回「三七日」。

久兵衛と清蔵の罵りあいに割って入ったのが勝五郎。久兵衛は他の人だったら知らないようなことを知ってるのだから兄に間違いないだろう。たった一人の兄をそんな風に罵ってはいけないと言うと、清蔵は「勝の言うとおりだ。私もついかっとなってすまなかった。兄さん、許してください。これからは私が兄さんの面倒を見ます」と謝る。
そう言われた久兵衛も謝り和解する。
しかしこれは清蔵が敵を欺くには手なづけたほうがいいと考えたからだった。

長屋の空き部屋に久兵衛を住まわせたのだが、しばらくすると久兵衛の具合が悪くなり起き上がれなくなる。
しかし清蔵もお静も見舞いにも行かず、ただ一人義松だけが膳を運んだり薬を飲ませたりかいがいしく世話をしていた。

ある日、義松が久兵衛のところを訪ねると「私の面倒をみてくれるのはお前だけだ。お前の望みを聞かせてくれ。叶えてやりたい」と言う久兵衛
最初は「とんでもない」と言っていた義松だったのだが、久兵衛に「お前は見た目もいいし優しく振る舞っているのが目の奥に暗いものがある。うわべは主人に忠義を尽くしているようだが実はそうではないだろう」と言われると「自分は8歳の頃から賭場に出入りし、育ての親を殺した身の上。生まれついての悪性は隠しきれるものじゃない」と身の上話をし、「店の金をちょろまかしたりすることはできるが、主人の女房に手をつけることはできない」と「お静を自分の女にするのが自分の望みだ」と言う。

それを聞いた久兵衛は「わかった。だったらお前の望みをかなえてやる。私が死んだ三七日にお静といい仲になれるようにしてやる。」そう言うと、自分の舌を噛み切る。
あたり一面に血しぶきをあげながら今度は下唇も噛み切って死んでいく久兵衛の死にざまを見届ける義松。

簡単な葬式は行ったものの墓参りにも行かない清蔵とお静。義松一人は久兵衛の墓へ詣り一心不乱にお経をあげている。
三七日になった時、お静が「この日ぐらいは世間体もあるから私が墓参りに行く」と言い出し、義松と二人墓参りへ。
墓の掃除をして花を手向けお経をあげる義松の姿を見つめるお静は、今まで気にも留めていなかった奉公人の美男子ぶりに初めて気づく。
お清めをしようとお静に誘われ料理屋へあがると、お静がふんだんに祝儀を与えたせいか店の者は遠慮して誰も上がってこない。
そこで二人で酒を飲んでいるとお静が「あたしは面倒なことは嫌いだ。お前は私のことが好きだろう。」と義松に迫り、二人は割りない仲になってしまう…。

…うひょー。久兵衛、簡単に死んじゃったー。こりゃまたお得意の毒を盛ったのか、清蔵よ。邪魔者はすぐに患って死んじゃうもんなー。
そしてここへ来て義松がまた浮上してきた。お静とそうなるか、そうですか。
義松が30歳とか言ってたけど、時系列がよくわからん…。でもそうよね、結構な年月が流れているはずだから、それぐらいの年になっていても不思議はないわよね。

しかしなんていうかこう…男と女の場面も案外多いわね、西海屋騒動って。
そしてさん助師匠にそういう場面をやられるとなんかこう目のやり場に困るっていうか…ははははやくそこはちゃちゃっと終わらせて、と思ってしまうのだった。


さん助師匠「鼻ほしい」
この間末廣亭で聞いた「鼻ほしい」。あの時は時間も押していたので結構刈り込んでいたと思っていたんだけど、今回もそんなに変わらなかったような。
浪人が鼻がなくなってしまったいきさつみたいのをもう少しちゃんと話した方が分かりやすい気がしないでもない。病で鼻がなくなるって…?梅毒じゃないの?

いやしかしもうあのふがふがした喋り方がイケナイおかしさ。これで笑うって人としてどうなのよと思いながらもおかしくておかしくて。
浪人のまじめな人柄が伝わってくるだけに余計におかしかなし。

後で、自分が前座の頃この噺を高座にかけているのを袖で見ていて「こういう噺をよくやるなぁ」と思っていたけど、まさか自分がかけるようになるとは、なんて言っていたさん助師匠。
面白かった!


さん助師匠「茗荷宿」
「茗荷宿」というと白酒師匠!なので、それと比べるとなんかこう…帯に短し…な感じがしてしまうのだな。
江戸っ子二人組が泊まりかけてあまりのひどさに泊まらずに帰ってしまう一件は結構面白かったんだけど、常客の飛脚が百両入った胴巻きを預けていると女房に聞いて、夢の中で殺しに行く、という部分はいらないような…。
次の日、茗荷の湯にお口直しの梅干しと思ったらそれも茗荷っていうところが面白かっただけに、もっと茗荷のフルコースをたっぷりー!という不完全燃焼感が。

でもダメダメな宿屋の主人に、おっちょこちょいの飛脚というのは面白かった。もっとコンパクトになったら面白いと思う(またしても上から目線。すびばせん)


さん助師匠「いかけや」
「いかけや」と言えば喜多八師匠で、小辰さんも最近よくやられているけど、私この噺あんまり好きじゃなくて今まで一度も面白いと思ったことがない。
小辰さんが子どもがわーーっとやってくるところをすごく大きな声でやるの、好きじゃなくて、なんでわざとあんなに大きな声を出すんだろう、と思ってしまって…。

でもさん助師匠が子どもがわーーーっと大きな声を出すところはすごくおかしくて、これはもうほんとに好みの問題なんだと思うけど、大きな声を出しただけでおかしいって最強!と思った。

子どもたちが来ることに気づいたいかけやが「うわー来たよ。迷惑株式会社(だったっけ?)が。来なくていい来なくて」とぶつくさ言うところから、子どもが大人びた口調でなんだかんだ言うところ、そのやりとりはおもしろかったんだけど、その後の失速がすごかった(笑)。
鰻屋のところに入ってからは前半の楽しさがなくなってなんとなくぐずぐずに…。

多分私がこの噺を好きじゃないのは、あまりにもいかけやと鰻屋がかわいそうになっちゃうからだと思うんだな。
この人たちが子どもとのやりとりを面白がってる感じがあればもっと楽しめる気がする。
鰻屋が「おまえ…うまいこと言うな」とちょっとにかっとした時は見ていて少し面白い!と思ったから。