りつこの読書と落語メモ

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さん助ドッポ

10/30(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

・さん助「庚申待ち」
~仲入り~
・さん助「安兵衛狐」
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十三回「熱海にて」


さん助師匠「庚申待ち」
11月号のかわら版の最後のページの長井さんのコラムで取り上げてもらったさん助師匠。
池袋演芸場に長井さんがいらしていたことも知らなかったさん助師匠のもとにその晩遅くに登録してない番号から電話があり「話を伺いたい」。
誰?なに?こわい!と思ったさん助師匠。
次の日メールが来ていて、それで初めて電話の主が長井さんだとわかったらしい。

池袋でやった「三助の遊び」についての取材を受け、その時にこのさん助ドッポのことも聞かれたんだけど、西海屋騒動を続きでやっていると話したら「そんなんで客が入るの?」と言われ、「来ます。…いつか必ず。」と答えたらしい。
「どんな人たちが来ているのか見てみたい」とまで言われた、というのには笑った。

いつもは「西海屋騒動」を先にやって、仲入り後に軽めの噺をやるのだけれど(どよ~んとなってお客さんが帰るのはかわいそうということで)、今回は構成を変えます、と。
とういのは今日やる「庚申待ち」、普通やられているのは志ん生師匠のかたちなんだけど、自分は速記本をもとにしていまして、これが長い上にあんまりおもしろくない…。
もともとニツ目の時に速記本から掘り起こしたんですけど、ニツ目でやるのはよくないかなと思って真打になったらやろうと思ってた。
ですので…どういうことになりますか。

そんなまくらから「庚申待ち」。
この噺、前に雲助師匠で一度聞いたことがあるけど、そのときも「最近はあまりされてない噺」と聞いた覚えが。

庚申の日に三尸 (さんし) の虫に悪口を言われないように寝ずに番をするという風習があった。
馬喰町にある大きな宿屋。主人が大変信心深い人で、庚申の日には客を泊めず、村の人たちを集めて一晩中話をして寝ずの番。
呼ばれてやってきたくまさん。
友だちの泥棒の源兵衛と向こう見ずのはっつぁんも連れてきた、と言う。
部屋に入ってみると、大勢人が集まっていて、剣術の先生が取り仕切っている。

毎年、好き勝手に喋っているけど、今年は百物語をしましょう、と先生。
一人ずつとっておきの自分が体験した怖い話をする。そうすると例年のように途中で勝手に寝たりしなくなるだろう、と。

それじゃ手始めに先生からお願いしますというと、私が剣術の修行に出ていた時、真っ暗な山道を歩いていると人の声がする。何かと思って隠れて見てみると、座頭(盲人)とそのお付きの太鼓持ちの二人が、盗賊につかまっている。
金を出せと言われて座頭がそれを拒むと盗賊は座頭を踏みつぶしてしまう。
太鼓持ちが「主の仇!」とつかみかかろうとするとまたそいつも踏みつぶしてしまう。
そして、太鼓もちをはぎ取っては座頭につけては投げ、(太鼓)もちを取っては砂糖(座頭)につけては投げ…。

…ぶわはははは。最初がおどろおどろしく始まって、結局ただの落とし噺。
話してる途中で源兵衛(なのかな?)がまぬけなツッコミを入れるのがいちいちおかしい。
このさん助師匠の後ろから茶々を入れる人ってすごくおかしい!ああ、これ「子別れ」の時のろくちゃんだ!

そんな話が続いた後に、くまさんが「こんな落とし噺じゃなくてほんとにあった怖い話を」と言って、自分が博打で一文無しになった時、癪で苦しむ老人を助けようとしたところで懐に百両あることに気が付いて、手拭いで絞殺した、という話をし始める。
お金を持って寂れた宿に泊まるのだが、手水に行った時、外の灯りがついたり消えたり…。
と話していると、またまた源兵衛が「それ、電灯を変えた方がいいんじゃない?」と言ってくるのが、たまらなくおかしい。

この後は宿屋の仇討ちの形になるんだけど、面白かった~。

さん助師匠「安兵衛狐」
この間、ぎやまん寄席で初めて聞いた「安兵衛狐」、あの時は後半部分がちょっともっさりしているなぁと思ったんだけど、かなりそこをカットしてすっきりしていた。
そして源兵衛の部分もあの時とがらっと変えていて、ばかばかしさが増してすごく面白くなっていた。

長屋の4人が源兵衛を萩を見に行かないかと誘うと「萩なんか見てどうするんだ」とひねくれる源兵衛。
おれは墓見に行くんだ、一緒に行くか?と言って、4人が「いやよしておくよ」と言って帰っていくと、「あーー。おれはどうしてもこんななんだ。萩…。行きたかった!」とおでこを抑えるのが、たまらなくおかしい。
墓場に着くと「どうせ飲むなら女の墓がいいな。ここにしよう」と言って墓の前に座ると、「じゃ、ここで失礼しますよ。」と墓に話しかけ、「一緒に飲みましょう」と懐からお猪口を二つ。
「生前はいい女だったんじゃないですか」なんて言いながら「あ、でもすごいばばあだったらどうしよう!」に大笑い。
卒塔婆を直してやってから、「俺も偏屈なんて言われてかみさんが来ないんですよ。誰かいませんかね」って墓に話しかけたりして…バカだねー(←ほめてます)。
そして墓を後にするときに、源兵衛が信じられない行動に!これは賛否わかれそうだけど面白い。あとは幽霊が訪ねてくるところとの違和感がなければ…。

女がもともと知ってる女で…というところもばっさりカット。
ああいうどうでもいいような(失礼!)細部にさん助師匠ってこだわりがあるのかな、と思っていたので、それにも少しびっくり。

一方の安兵衛、狐を助けた後に、まー恩着せがましいこと(笑)。
「俺が助けてやったんだからな。なけなしの銭で。おれの顔覚えておけよ」って。

狐の嫁さんが山に帰ってしまうところもなく、なんか面白かったなー。
ぎやまん寄席で見たおかげでこうやって噺を作り上げていくのか、という過程がわかったのが、とても面白かった!


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十三回「熱海にて」
そのまま気を取り直して「西海屋」へ入ろうとしてから、「あ。私、今回順番を変えたるもので…だめですね。段取りが」ともごもご。

実は毎回この「西海屋」の高座は録音してるんです。どれぐらい時間がかかったんだろうとか、いろいろ勉強のために。
ですが今回はこういう順番にしたので録音ボタンを押すタイミングが…。
すみませんが、ちょっとここで…。

と、後ろにおいていたICレコーダーのボタンを押すさん助師匠。
そういうハイテクな道具を使いこなしてるんだ?!って、そっちにびっくりだよ!
そして、毎回こういうトンデモない噺を自分で構成してネタ卸ししてるだけでもすごいのに、それをちゃんと録音して再構築しようとしているのか!とそれにもびっくり。
なんかやっぱり面白いなぁーさん助師匠って。
向いている方向が他の噺家さんとは違ってて。そこに惹かれるんだな、と思った。

で、西海屋。

嘉助が松太郎を連れていなくなったと聞いた清蔵は、約束通り松太郎を殺したのだと思いこんで喜ぶ。
頃合いを見計らって計画通りお静を妻として向かい入れる。
派手好きのお静は昼間から役者や噺家太鼓持ちを呼んでどんちゃん騒ぎをするが、店の方はますます繁盛し、「西海屋」と言えば知らぬものはいないほどの栄華を誇るようになる。

ある時、清蔵はお静や店の者を連れて熱海へ遊びに行く。
その中には鳶の頭、勝五郎もいたのだが、勝五郎はただ一人清蔵のことを胡散臭く思っている。しかし世話になっているので表面上は言うことを聞いている。
熱海の宿の泊り客に、顔が吹き出物だらけで醜い男がいた。名前を久兵衛といい、みな気持ち悪がって寄り付かなかったのだが、なぜか勝五郎は馬が合い、二人で碁をやったりして仲良くなる。
久兵衛に清蔵のことを尋ねられた勝五郎は、彼がもともとは身投げした男が連れていた子どもだったこと、西海屋の先代の主人に命を助けられ、いろいろあって主人にまでのぼりつめたことを語る。
そして近くに来たら寄ってくれと言って二人は別れる。

勝五郎がいなくなったあと、部屋で久兵衛がひとりごと。
それによれば、久兵衛は清蔵の兄で、清蔵を連れて父親が出立した後、母は亡くなってしまい、毎日村の人たちから嫌がられながらも食べ物をお情けで分けてもらい、這いつくばって生きてきた。
両親がやっていた油屋でどうにか食いつなぎつつも博打が好きで身を持ち崩し、やくざの世界に足を踏み入れ厄介になり、遊びが過ぎて顔にできものができたので、熱海に療養にやってきていた。
風呂場で清蔵を見た時に、面差しと背中の痣でもしや生き別れた弟ではないかと思い、勝五郎に近づいて聞いてみればやはり…。
ものすごい出世をしたのに兄の自分を訪ねもせず自分だけいい目にあっているこの不人情。自分たちを捨てた父親と同じ。
これから日を改めて店を訪ね兄だと名乗り、金づるにして遊び暮らそう。

その言葉通り、ある日西海屋を訪ねた久兵衛
金を払えと言う俥屋に「金ならこの店の主が払う」と嘘ぶき、店の者にも「主人を出せ。兄貴が来たとそう言え」と怒鳴る。
取次ぎをした小僧に声をかけた久兵衛、小僧が「義松」と名乗ると、「かわいいやつだ。お前のことは覚えておこう」と。
部屋に入れてもらった久兵衛は、清蔵を脅しにかかるが、清蔵も負けてはなく、悪党二人が罵りあう修羅場に…。


…また悪いやつ出てきたー。
久兵衛と清蔵の対面の場面は、西海屋騒動が始まったころの花五郎の章を思い出させる。任侠っぽい感じ(そもそも任侠がよくわからないんだけど)。
兄弟そろってこうなんだから、親父も相当悪かったのかもしれないなぁ。
そしていきなり取次の小僧で出てきたのが義松。
キミは主役じゃなかったんだね。でもまた出てきたね。また一役買うのかね。小悪党として。でも小悪党なんてもんじゃないよね、いろんな人殺してるんだから。

いやでもいよいよ終盤に差し掛かってきたみたいだ、西海屋騒動。
これが終わったらこの会も終わってしまったらどうしよう。いやだからねー。続けてねー。頼むよー。