りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

池袋演芸場10月下席昼の部 古今亭志ん五真打昇進襲名披露興行

10/21(土)、池袋演芸場10月下席昼の部 古今亭志ん五真打昇進襲名披露興行に行ってきた。

・小駒「元犬」
・わん丈「寄合酒」
・馬治「真田小僧
・アサダ二世 マジック
・燕路「出来心(前半)」
・吉窓「山号寺号」&踊り
・ホームラン 漫才
・志ん橋「熊の皮」
・金馬「長短」
~仲入り~
・真打昇進襲名披露口上(吉窓、金馬、志ん五、志ん橋、馬風
・仙三郎社中 太神楽
・馬生「安兵衛狐」
馬風 いつもの
・小菊 粋曲
志ん五「黄金の大黒」


小駒さん「元犬」
前に見た時はとても素直な落語でこの方はうまくなりそうと思っていたんだけど、なにかこう変な溜めみたいのが入ってちょっと聞きづらくなっていた。色を出そうとしている時期なのか。うーん。

わん丈さん「寄合酒」
3分落語で優勝した時の話でお客さんをぐっとつかみ、自分のペースに持って行く。二ツ目になってそんなに時間がたったわけでもないのに、ベテランの余裕すら感じられる。すごいな。
「寄合酒」ももう完全に自分のペースで途中新作っぽいクスグリが入るからそこでも爆笑が起こり、自信を持ってますます高座に余裕が。
はぁ、すごいなわん丈さん。面白かった。たしかに。私はあんまり好きなタイプじゃないけど。


馬治師匠「真田小僧
私のような者でも時々は親孝行したいなぁと思うことがあります、と馬治師匠。
この間、自分の母親と二人で蟹の食べ放題に行った。今はそんなに高いお金を出さなくても蟹を思う存分食べられるようなお店があるからありがたい。
二人でたらふく食べて会計をしている時に、母親がびっくりするようなことを言いだした。
それは「あら、入れ歯がない」。

どこをどうしたら入れ歯がなくなったりするんだ?と思ったのだが、どうも食べ終わった時に入れ歯をはずしてそのまま忘れてしまったらしい。
慌てて部屋に戻ったがもう片付けられた後。
店の人に話すと、ああいうところっていうのはすごいですね。燃えるごみ、燃えないごみの分別だけじゃなく、蟹の殻も別に分別してある。
蟹の殻と一緒にしてしまったと母親が言っていたので、そこを探したのだが…。蟹の殻と入れ歯はとても似ている。保護色。入れ歯にしたら格好の隠れ家を見つけたようなもの。
そこをかき分けかき分け探していたらようやく入れ歯を発見!
よっしゃと思ってきれいに洗って母親の元へ持って行くと、「あーら、よかったわ」と手に取った母親が「あら。でもこの入れ歯、あたしのじゃないわ」。
なんと別の入れ歯を見つけてしまっていた!

…ぶわはははは。もう最高。馬治師匠。
そんなまくらから「真田小僧」。小遣いをせびる金坊が父親にきっぱり拒絶されて「じゃあいいよ。ママにもらうから」。
え?と思っていると「お前なんだママって。落語なんだからおっかさんと言え!」には大笑い。
馬治師匠って時々こういうドキッとするようなギャグを入れてきて面白い。


燕路師匠「出来心(前半)」
泥棒が留守だと思った家にあがりこんでそこの家の煙草を吸う場面で、「落ち着かなきゃいけねぇな」と言って吸いだしたあとに「手拭い忘れてきちゃったからびっくりしちゃった。師匠にも言われるんだ。落ち着けって。でもまぁ今日は披露目だからまあいいよな、なんでも」。

…ぶわはははは!燕路師匠がそんなこと言うなんて!おかしかった~。


志ん橋師匠「熊の皮」
おかみさんに逆らわない、すぐに「そうか。それじゃしょうがねぇな」と納得しちゃう甚べえさんがかわいい。
なんて素直なの。


金馬師匠「長短」
長さんの方が上方の人という形の「長短」。
わざとらしいくらいゆっくりやったりしてないのに、長さんの気の長さが伝わってくる。
この噺って、出てくる二人がチャーミングじゃないと、面白くもなんともないんだよなぁ。
その点金馬師匠のはもう二人ともとてもチャーミングで見ていてニコニコ笑ってしまう。
楽しかった。ほんとに金馬師匠は寄席でいろんな噺を聞かせてくれてどれもとっても楽しくて最高だ。

 

真打昇進襲名披露口上(司会:吉窓師匠、金馬師匠、志ん五師匠、志ん橋師匠、馬風師匠)

金馬師匠。ご祝儀をやったり着物を作ってやったりすることももちろん応援だけど、なによりも寄席に足を運んで良ければ大いに笑って拍手して褒めてやること、それが一番、という言葉にじーんとする。いいなぁ。
馬風師匠の口上でいつもの全員が倒れ込むのをやったあと「命がけだな」と金馬師匠が言ったのがすごくおかしかった。


馬生師匠「安兵衛狐」
いつも見るのと違う形だった。
安兵衛のところのおかみさんは狐じゃないかと長屋の連中が訪ねていくと「いいえ、人間です」とおかみさん。人間なら踊れるはずですぜと言われて踊ったり、字が書けるはずですぜと言われて短歌を墨で書いたり。その短歌がサゲにつながっていく、というのは他の人で見たことがないなぁ。

志ん五師匠「黄金の大黒」
趣味が釣りで、釣り仲間なのがさきほど出たアサダ二世先生、という志ん五師匠。わかりますか?アサダ先生?と言ってした物まね(「いらしゃ~い」「今日はね、ちゃんとやりますよ」)がそっくり
「ちゃんとやりますよ」と言って、ちゃんとやったのを見たことがない、には初めてアサダ先生を見て戸惑い気味だったお客さんたちが大爆笑。
そして「釣りの時は浮も自分で作ってきて…さすが手品師だけあって手先は器用。釣りの時は…ちゃんとやってます」にさらに大笑い。最高だ。
そして、とっておきの噺を、といって「黄金の大黒」。

ニツ目時代はほとんど古典を見たことがなかったんだけど、真打が決まってから古典を見る機会が出来て、志ん五師匠の古典ってとってもいいんだな。口調がよくてテンポがよくて軽くて明るくてとってもかっこいい。私は見たことはないけど先代の志ん五師匠ってそういう落語をされていたのかな、というのが透けて見える。

羽織がわからないのに「持ってる」といきがる江戸っ子たち。
久しぶりのおまんまに涙ぐむきんちゃん(笑)。
最初から最後まで楽しくて(このサゲが大好き!)最高だった。