りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ぎやまん寄席 馬治・さん助ふたり会

10/12(木)、湯島天神参集殿で行われた「湯島de落語 ぎやまん寄席 金原亭馬治・柳家さん助ふたり会」に行ってきた。


・たま平「高砂や」
・馬治「茶の湯
・さん助「安兵衛狐」
~仲入り~
・さん助「浮世根問」
・馬治「文七元結


馬治師匠「茶の湯
前方に上がったたま平さんのことを「ご存じだとは思いますが、たま平さんは正蔵師匠の息子さんでお弟子さん。三週間後に二ツ目に上がることが決まっています」。

落語家になってなにが嬉しかって言ったら二ツ目に上がる時。前座の時はとにかく毎日休みがなくあれこれ制限も多い。それが二ツ目になると自由な時間もできるしいろんな噺もできるようになるし、自分はこれからどんな噺をやっていこうか、どんな噺家になろうか、と希望に胸を膨らませる。
…というのは建前で、何が嬉しいって師匠の家にいかなくてよくなるのが一番うれしい。
でもたま平さんの場合は…師匠の家が自分の家ですから…どうなんですかね。そういうのない?
でも本人に伺ったらやはり一人暮らしがしたいそうですよ。そしてなにより「台東区」とは反対の方に住みたいそうです。反対って何かって言うと、何もかも反対なところ。例えば下北沢とか渋谷とかそういう…ワカモノが集うようなところ。
まぁそうでしょうね。まだ若いですから彼も。20代の時にはわからないでしょう、台東区の良さは。あそこが好きになってくるのは40代、50代になってから…。

そんなまくらから「茶の湯」。
ご近所を偵察に行っていた定吉が「若い男の人がなんかお経みたいのをしゃべってました」「ああ、あそこは落語家さんのお宅だ。たま平さんだろう」には大笑い。
噺がウケなくて汗だくになっていたたま平さんへのねぎらい?まくらもそうだったし噺も「根岸の里」つながりで、馬治師匠の優しさを感じるなぁ。

最後にやってくる客が投げる庭もサゲもなんとたま平つながり。
馬治師匠って時々こういう破天荒なことをするのよね。笑った笑った。

さん助師匠「安兵衛狐」
最近自分の記憶力が本当に怪しくなってきまして、とさん助師匠。
自分が普段使っているお箸が3日前ぐらいから見当たらない。太い箸でなくなるようなものじゃないのになぜ?と思っていてふと気が付いた。3日前に焼き鳥を食べたんだけど、その時に串を捨ててもしや…?とゴミ箱を見ると、確かに串と一緒に箸も捨ててあった。
ほんとになんでこんななのか。よくこれで落語が覚えられるな、と言いながら噺に入ろうとして、さすがにちょっと無理がある流れでお客さんから笑いが起きると自分でも、ぷぷぷっと笑ってしまっていて…こんなさん助師匠初めて見た。
「さっきの(茶の湯の)サゲが衝撃的すぎて」と言っていたけど、おかしい~。

狐狸のまくらから噺に入って、さん助師匠が「安兵狐」?!とびっくり。
前半のひねくれ者の源兵衛さんのところはさん助師匠にぴったりでおかしい。女の墓の前で実にうまそうに酒を飲み、女の骨に酒をかけてやるところなんか、なんか見ていて楽しくなってくる。、
でも安兵衛さんが骨を探しに行くあたりからなんとなくぐずぐずになってきて…。
狐が女に化けて話しかけるところでは女が「お里の乳飲み子」と名乗って、安兵衛の家に行ってからいきさつを語るんだけど、その時は普通に話していたのに次の日から語尾に「コーン」が付くという矛盾(笑)。…じゃ「乳飲み子」の部分いらなくね?だから他の噺家さんは入れてないんじゃね?でもそういうところにいちいちこだわるのがさん助師匠らしいといえばらしい気も…。

といろいろ矛盾を感じつつも、でも前半が面白かったから、この後面白くなるかも。
なにせ初めて見て「うーん」と思った噺が何回目かでものすごく面白くなっていることがままあるからなーさん助師匠の場合。次回に期待。


さん助師匠「浮世根問」
この間池袋で見て大笑いした「浮世根問」。

「わしに知らないことはない」と知ったかぶりをする隠居に、八つぁんが「どういう意味?どういう意味?」って食らいつく、っていうだけの噺だけど、これがめちゃくちゃ面白い。
耳に「なんで?」を流し込むばかばかしさよ…。
笑ったわー。


馬治師匠「文七元結
おお、文七!馬治師匠ってさん助師匠と違って正統派のしっかりした噺を結構やられるよなぁ。
真っ当だけど笑いどころが多い軽めの「文七」で、そういうところが好きだなー。くさくないの。
親方が女物の着物を着ていてずっと脇を気にしているのが、なんかこう…普段はきっと剛毅な人なんだろうにと思う。
娘の申し出を受けざるをえないほど逼迫しているのに博打がやめられないのは、もう博打で勝つ以外に手はないっていうことなんだろうなぁ。
そんなだいじな金を見知らぬ若者に名前を名乗らず渡してしまう親方…。そこがどうにも腑に落ちないんだけど、馬治師匠の親方は渡したくなくて一度は去りかけたり「やるなら俺が角を曲がってからにしてくれ」などと言ったり。蝠丸師匠の親方もねぎってたもんな(笑)。

後で親方の家を訪ねてきた大旦那が「お金より命の方が大事ということを私はわすれていました」という言葉をいうんだけど、なるほど…。
なんとなくいつも腑に落ちなかったこの噺、少しだけわかったような気がした。

カラーが違うけどとても噺家さんらしい二人のこの会。どちらがトリでもいつも満足。
楽しかった。