りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

アートタワー寄席

9/9(土)、水戸芸術館で行われた「アートタワー寄席」に行ってきた。

・寿伴「子ほめ」
・ぴっかり☆「動物園」
・宮治「七段目」
~仲入り~
・真紅「桂昌院
小雪 大神楽
・さん助「景清」


寿伴さん「子ほめ」
大きめな会場で私は二階席だったんだけど声も響くし堂々としていてびっくり。
この間寄席で見たときはイマイチと思ったんだけど…わからないもんだなー。
特別ギャグを入れたりしてないのに、ちゃんと面白い。
しっかり客席を温めていた。


ぴっかり☆さん「動物園」
かわいいし華があるからいいよね。
テッパンのまくらにテッパンのネタ。


宮治さん「七段目」
宮治さんは苦手なんだけど二階席だからちょっと薄まってよかった。ってひどい感想だな、おい。
芝居がかりのところはこれ以上ないくらいクサくやって弾けまくって分かりやすくうけていた。


真紅さん「桂昌院
水戸出身の講談師は一人だけ。過去にはいなかったのかと調べたらなんと幕末に一人。
自分はそれだけ稀有な存在なのだが、これがなかなかきびしい状況、と真紅さん。
女流講談師、昔は元女優が多かったことから、美人でなければいけない、とされている。
しかしこの水戸は日本三大ブスの産地。なぜそんなことを言われるようになったかというとこれも講談に残っている。
関ヶ原の合戦で西軍側についた水戸城主の佐竹義宣。負けてしまったため、国替えとなり秋田に飛ばされることに。それがよっぽど悔しかったらしく、佐竹は水戸にいた美人を全部連れて秋田へ行った。だから残ったのはブスばかり。

…ぶわははは。ほんとかなー。
そんなまくらから「桂昌院」。この話は前に一度聞いたことがあってすごく好きな話。
真紅さんは以前一度だけ見たことがあってその時はあんまり…と思っていたんだけど、面白かった!すごくうまくなってる。


さん助師匠「景清」
地元の会ということで、仲入りの時に中学校の時の同級生が楽屋を訪ねて来てくれました。
本当に何十年ぶり、ですよ。
彼が私を前にして最初に言ったのが「ああ、益子…あ、わたし本名は益子っていうんです。益子…お前中学の時から全然変わってないな」

…いや!劇的に変わってるから!

そして今日はこの大きな会場に満員のお客様。これもひとえにこちらの水戸芸術館のスタッフの方々の営業努力のおかげです。
1ヵ月ほど前に日立のほうでお仕事があったとき、そこの会場にもこのアートタワー寄席のチラシが置いてあってこんな所にまでチラシを置きに来てくださったのか、と感動。
だけどそのチラシ、某師匠の落語会のチラシの後ろに置かれていて、ちょっと隠れてしまっている。これじゃあかん!と思ってまわりを気にしながらこっそりアートタワー寄席のチラシを前に置いてから気が付いた。斜め上にカメラがあってしっかりうつってた!

あと前半から今まで…ずっとちゃんと聞いていたわけじゃないですけど…みなさんほんとによく口が回るというか達者ですね。
話のプロだから当たり前と思うかもしれませんけど決してそういうことはありませんから。私なんかどちらかというと口下手で…特に人前で喋るのは苦手で。
この間こちらで宣伝用の動画を撮った時にも真紅さんは10秒の中で上手にまとめて宣伝して、ここの会のスタッフから「さすがプロ!」と一発OKでしたけど、私なんか何度もやり直しになって…しかも噛み方が笑えるようなレベルじゃなくて…最終的に「まあいいでしょう」と言われて。お前ほんとにプロなのかよ!っていう…。

…ぶわはははは。おかしい~。
茨城の素朴で素直なお客さま方がさん助師匠が「人前で喋るのが苦手」と言った時に、ざわざわっとしたのがおかしかった~。


生まれつき目の悪い人と後から目が悪くなった人の杖の持ち方のまくらに入ったので、おお?もしや…?と思ったら、この間のドッポで聞いたばかりの「景清」だった。
これがこの間聞いた時よりぐっと進化していてもうびっくり。
あの時はちょっとわちゃわちゃした感じもあって、このブログにも「定次郎のキャラクターがもう少し魅力的になれば」というようなことを書いていたんだけど、これがものすごく魅力的になっていて、この2週間弱の間にこんなに変わるのか!とびっくりした。


噺の方も結構変えてあって。
定次郎が目が見えなくなったいきさつをあの時は地で語っていたけど、今回はそれはなし。
旦那と話をしている時に定次郎が自分で「あっしは遊びが過ぎて目が見えなくなりました」。
旦那の家に上がる前の犬のところから定次郎が意固地な男であることは伝わってくるんだけど、旦那と話をしているうちに彫り物の仕事をやりたいと語るところでは、ダメなやつだけど憎めないキャラクターがじんわりとにじみでていて、だからこそ満願の日に観音様のところに来た時の期待と失望にぐっとくる。

そうそう。満願の日に観音様に向かう定次郎が階段を上がりながら歌を歌うんだけど、これもドッポの時にはなかったよな。宗教的な感じのする歌でそれが大きなホールに響いて素敵だった。
あとこの日は鳴り物入りだったのだ。これもまたとても素敵だった。定次郎が「今日は鳴り物入りっすか」というのもおかしかった!


毒づく定次郎を旦那がようやくなだめて二人で帰っていると雷が落ちて定次郎を直撃。「ああ、これも(定次郎の)悪行のせいだ」と旦那は一人で逃げてしまい、目覚めた定次郎。「あーあ、目も開かないし、雷には打たれるし、旦那は逃げちゃうし」というのもこの間はなかった台詞。
もう生きててもしょうがない、それにしても憎いのは観音のやろう…と愚痴を言ってると、ぎぃーーっと観音堂の扉が開いて…と言ったあとで、さん助師匠「御開帳です。みなさん、普段は見られない観音様を見られるのはこの落語の中だけですから。この場を借りて拝んでおいてください」。これもこの間はなかった台詞。

この観音様がすごく漫画っぽくておかしい。
「え?だれ?旦那?違うの?じゃ誰?」と定次郎が聞くと「我は観音菩薩なり~」。
それを聞いて「え?観音?…ありがてぇ!直談判直談判!」そう言って「観音様よー俺の目は治るのかい?治らないのかい?」と聞くと「悪行が過ぎるのでそなたの目は治らん!」。
「あーーー治らないってお墨付きもらっちゃったよ」
「ではあるのだが…」

なんて落語っぽい展開なんだろう。
しかも言いたいことだけ言って観音様が扉をしめて去っていくと「え?今観音様、自分で扉締めていかなかった?」。

「あーびっくりした」と定次郎が空を見上げて「きれいな月だなぁ」とつぶやくと、客席からほっとしたようなため息が聞こえてきてうれしくなる。なんていいお客さんなんだ!
そしてこのサゲ。すごくばかばかしくて落語っぽくて好きだなぁ。

この大きなホールのトリでこの噺というのが…さん助師匠らしいというかひねくれてるというか。
もしかすると「これが落語?」と驚く人やちょっと不謹慎に感じた人もいたかもしれないけど、さん助師匠がとても楽しそうに伸び伸びやっていたのが印象的だった。
すごくよかった~。
帰りのバスで飲んだビールのうまいこと(笑)。