りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場8月中席 納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼 特選集

8/14(月)鈴本演芸場8月中席 納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼 特選集に行って来た。
開演17時20分だったので前座さんが上がってさん助師匠は17時30分ぐらいかな、なんて思っていたんだけど、当日鈴本のサイトを見て前座さんが上がらないことに気付く。あぶねー。

・さん助「十徳」
・仙三郎社中 太神楽
・三三「元犬」
・一之輔「代書屋」
・市馬「花筏
・夢葉 マジック
喬太郎「義眼」
・新治「兵庫船」
~仲入り~
・ぺぺ桜井 ギター漫談
・権太楼「花見の仇討」
・正楽 紙切り
・さん喬「中村仲蔵
 
さん助師匠「十徳」
会場に入った時に女性とすれ違い、さん助師匠の顔を見て「はっ」としたので、「あら、面が割れた?」と思ったら、その女性ぱっと目をそらして行ってしまったらしい。
できれば気が付いた時は目をそらしたりしないで「こんにちは」と言ってください…。
 
…ぶわははは!
そういえばこの間も国立演芸場でも同じようなことを言っていたことを思い出した。
 
駅から国立演芸場に向かう途中にあるコンビニに入ったら、すれ違った女性がさん助師匠を見て「はっ」としたので、あれ?気づかれた?帽子をかぶると自分の身体的特徴が80%ぐらいなくなってしまうから気付かれることなんてないのに?と思っていたら、開演してみるとその女性が客席の最前列に座っていた。
もしかして私を目当てに?よーし!がんばっちゃおうかなと思って出て行ったら、その女性、さん助師匠が話し始めたとたんに爆睡。
起こさないようにそっとやりました…。
ぷぷぷっ。
 
そんなまくらから、八つぁんがご隠居の所へ訪ねてきたところ。
浅い出番だから「雑俳」かな?なんて思っていたら、八つぁんが「さっきご隠居が変な服着て歩いてたでしょ?それを若い連中で集まっていて見たんですよ。あれ?なに着てるんだろう?あれは帷子のねんねこかな、とあたしが言ったらみんなにえらい笑われちゃいまして」。
お?なんか聞いたがあるようなないような…なんだっけ、これ?
 
そう言われて隠居が「そりゃ悪いことをしたな。あたしのせいで恥をかかせちゃったね」って言うの、なんかいいな。
仲いいんだね、隠居と八つぁん。
 
「これは十徳と言ってね」
「どういう字ですか?」
「数字の10に徳と書いて十徳」
「どういうわけで?」
「いや別にわけはないんだよ。」
「いやでも何か意味があってそういう名前になったんでしょう。どういうわけで?」
「いやないよ」
「でも何も意味がないなんてことはないでしょう」
「ないよ」
「意味がねぇなんてことないでしょ。そんなこと天が許してもあたしが許さない!」
 
…ぶわはははは。なんだ、この会話。おかしい!
 
それで仕方なくご隠居が「この帷子はこうして立っていると着物のごとく。こうして座ると羽織のごとく。ごとくとごとくで十徳だ」
それからご隠居が両国橋と一石橋の名前の謂れも教えてくれて、「よーし!じゃやってきます。その橋の名前の話をまずはまくらに」と八つぁんが出て行こうとすると「ほかでやるのかい?やめておきな。うまくいかないから。あたしがうけあうから」と隠居。
 
それから若い連中が集まってるところに八つぁんが勇んでいってやってみるんだけど、ご隠居が心配したとおり、ごちゃごちゃになってうまくいかない。
ごくバカバカしい噺だけど楽しかった~。
こういうマニアなお客さんが多いときにこういう珍しい噺をするのはいいよね!
 
一之輔師匠「代書屋」
ひざ隠しが出てきたのでびっくりしたら、なんでも膝を痛めて正座ができないらしい。
病院に行ってみてもらったら、一之輔師匠は膝のお皿が小さくて痛めやすいらしいのだが、おじいさんのお医者さんが言い間違えて「あなたは器が小さいから」。ぷぷぷっ。
金馬師匠の真似してるわけじゃありませんと言いながら「代書屋」。机を前にすると「代書屋」やりやすいのかな。
 
一之輔師匠らしい工夫がいっぱい。
代書屋に来た男の名前が「中村吉右衛門」だったり、「履歴書」も「れーきしょ」とか、座るとふんどしからはみ出しているのが「右」なんだけど直したら両方からはみ出しちゃったり、下駄の「減り止め」売ったら2時間で40個売れたと聞いて代書屋が「才能があるからもっとがんばって!」と言ったり。
 
それでもやっぱり噺自体があんまり面白くないからこの程度かー。なんていったら失礼か。
 
市馬師匠「花筏
まくらで相撲の呼び出しをやったんだけど本当にうまくて声が惚れ惚れするくらい良くてうっとり。
拍手が起きると「最近ね、こっち(呼び出し)の方が拍手が大きくて…ちょっと気にしてるんです」。
わははは。
この位置で「花筏」をさらっとやっちゃう市馬師匠が好き。
トリでたっぷり聞くとそんなに面白くもない噺だなと思ったりするけど、こんなふうにあっさりとされると面白い。
濃い目の落語が続いたのでちょっと一息つけた感じ。
 
新治師匠「兵庫船」
この芝居は、仲入りの新治師匠が楽しみ!
伸びやかで明るくてきれいですごく素敵。きれいだけどきれいすぎないところも好き。
私この師匠が東京にいたら絶対追っかけてるなー。
 
「兵庫船」は初めて聞く噺。
金毘羅詣りを終えた喜六と清八が船に乗り込む。
船に乗り込んだ人たちがどこから来たのか尋ねられて答えたり、謎かけをしたり…。
この謎かけがすごく面白い。
特に早合点してすぐに「やるやる!」と手を挙げて答える喜六のポンコツな答えが面白くて笑ってしまう
 
そのうち船が動いてないことに誰かが気付くと、船頭が「気づいたか。実は鮫が船の下にいてかじりついてるから動かない。だれかにいけにえになってもらわないといけない」と言う。
川に自分の持ち物を落としてそれが流れていけばよし、沈んでいったらその人が生贄になるしかない、ということに。
 
ここまで聞いて、おお?これは「鮫講釈」か?!と思ったのだが、講釈師は出てこない。
大仰な噺じゃなくて軽くてバカバカしい噺だったのも楽しかったなー。
よかった!

権太楼師匠「花見の仇討」
権太楼師匠はクスグリで「森友学園」をよく使っていて、一部すごく喜ぶお客さんがいるけど私は何が面白いのか全然わからない。おっさんは政治ネタが面白いのかなぁ…。
と冷ややかに聞き始めていたんだけど、やっぱり面白い、本気出したときの権太楼師匠。
芝居の稽古の場面もおかしかったし、耳の通いおじさんに六部の恰好をしていた六さんが掴まって一生懸命言い訳するのに何も聞こえなくて「ああ、だめだ。おじさんつんぼだから」と言うと「誰がつんぼだって?」とそこだけ聞こえるのがすごくおかしい。
でも私が一番笑ったのが、巡礼兄弟役が浪人役に仇討をする場面。
物見高い江戸っ子たちが集まっているところにさっき会った侍が「助太刀をいたす」と現れた時に、浪人役の熊さんが「…誰?」って言ったのがもう死ぬほどおかしかった。間といい声の大きさといい表情といい…完璧だったなぁ。
今でもあの「誰?」を思い出すと笑ってしまう。最高だった。

さん喬師匠「中村仲蔵
私は人情噺より滑稽噺の方が好きなんだけど、この噺は大好き。
さん喬師匠の「中村仲蔵」は前にも聞いたことがあったんだけど、その時とまた違っていた。
細かいところは覚えてないんだけど、後半部分が芝居がかりになって三味線が入ってたりしたの…前に見た時はなかったような記憶が(もやもや)。
とても丁寧な「中村仲蔵」。
改名する前の仲蔵が台詞を忘れて團十郎のもとへ駆け寄り小声で「台詞を忘れました」と言ったのを逆に團十郎に褒められたエピソードは初めて聞いた。
そして定九郎に役が決まってがっかりした仲蔵だったが、毎日稽古をしながらお稲荷様をお参りする場面も…前を歩く村人が稽古と思わず本当に盗賊が出てきたのかと思って腰を抜かしたりして楽しい。
一心に役作りのことを考えていた仲蔵が、蕎麦屋で会った浪人の姿に「これだ!」とひらめいて浪人に食らいつくようにして細かいところを確認しようとするところ、舞台では見事に演じきっているのに客の反応が薄いことを気にして「ああ、しくじった…」と気にするところ、せめて楽屋仲間からは何か言ってもらえるかと思ったのに何も声をかけてもらえずがっかりして家に帰るところ。芸人としての強さと人間的なところ、両方が垣間見れていい。
二人の師匠に呼ばれて「お前を弟子にして本当によかった」と褒められるところは、見ている側も思わず涙。

とても満足度の高い会。前売り買わないといけないけど、来年も忘れずに買えますように。